Googleが作ったAndroidスマートフォン『Pixel 7 / 7 Pro』が、2022年10月13日に発売された。Android OSの生みの親であるGoogleが作ったスマホということで、Pixelシリーズは常に高い注目を集めている。もちろん、今回も例外ではない。

(参考:【写真】『Pixel 7 Pro』の超広角(0.5倍)、広角(メインカメラ)、望遠カメラ(5倍)、デジタルズーム(30倍)

 前モデルである『Pixel 6』シリーズからの主なアップデートは、チップセットとカメラだ。チップセットは「Google Tensor G2」チップへと進化し、カメラについてはレンズ性能だけでなくコンピューティングフォトによる様々な補正機能も追加されている。

 今回は、よりカメラ性能が高い『Pixel 7 Pro』を中心にレビューしていく。結論からいうと、『Pixel 7 Pro』は写真撮影を大いに楽しくしてくれるスマホだった。コンデジを1台持っているようなものであり、サブカメラとしての有用性が極めて高いと感じた。

・ラグジュアリーな質感だが、やや持ちにくい?

 まずは外観から見ていこう。Pixel 7 Proの画面サイズは6.7インチと、かなり大きめ。手に取ると大ぶりに感じるが、ゲームや動画などのエンタメは余すところなく楽しめる。

 こちらは『Pixel 7』を持った様子。画面サイズは6.3インチとなっている。ちなみにAppleの『iPhone 14 Pro』の画面サイズは6.1インチなので、スタンダードモデルながら大きめともいえる。

 サイズ感以上に、筆者が気になったのは本体の手触りだ。『Pixel 7』シリーズには純正のスマホケースが用意されているが、これがかなりスベスベしていて落としそうになる。素材には再生プラスチックと、再生プラスチックを75%使用したポリカーボネートを使っており、いわゆるTPE(熱可塑性エラストマー)に該当する。

 純正ケースはレンズ周辺の出っ張りを保護してくれるため、可能なら着用したいが、持ちやすさでいうと個人的にはケースを着けない裸のほうが良いと感じた。『Pixel 7』シリーズの背面はガラス仕上げで、乾いた手で触れてもしっかりとグリップしてくれる。一方で、ケースを着けることで、例えば外で写真撮影をする際、そのスベスベ感で何度か落下の不安を感じることもあった。

スペックはほどほど。ゲームプレイには不向き

 実は今回新たに搭載されたGoogle Tensor G2チップは、以前のGoogle Tensorチップからそれほど大きく飛躍はしていない。一部コアが変更されたことで電力効率が改善したり、GPUが強化されていたりといった具合。Google的には処理性能よりもAI処理の高速化に重点を置いているのだろう。本体内でのリアルタイム文字翻訳やコンピューティングフォトなどにそのきらいが見られる。

 というわけで、筆者がプレイしているスマホゲーム『原神』で、どれくらい負荷がかかっているかを比較してみた。比較するのは『Pixel 7 Pro』と、筆者所有の『Phone 12 Pro』。発売時期に2年のひらきがあるが、果たして。

 こちらが『iPhone 12 Pro』の画面。画質設定「中」では、ほとんど負荷がかかっていないが……。

 同じ画質設定「中」でも、『Pixel 7 Pro』への負荷は非常に高いと示されている。「中」でこの負荷なら、最高品質にしたらばさぞカクカク動作になるだろう。

 次は、実際のグラフィックも比較してみよう。画質設定「中」で、同じ場所でスクリーンショット撮影してみた

 こちらはiPhone 12 Pro。

 こちらは『Pixel 7 Pro』。どちらも遠景のグラフィックや手前の花などはしっかり描写されているが、画面右の元素爆発のアイコン周囲のエフェクトが、『Pixel 7 Pro』のほうが簡略化されている。エフェクトが重かったのか?

 実際に様々な画質設定でプレイしてみても、『Pixel 7 Pro』でのプレイはスムーズとはいかなかった。このことから、『Pixel 7 Pro』はハイグラフィクスなゲームには向いていないといえるだろう。Tensorチップのさらなる活躍は、来年以降になりそうだ。

・カメラ機能をチェック ~基礎編~

 処理性能の面ではネガティブな評価となってしまったが、Pixelにもっとも求めているのはやはりカメラ機能だろう。ここからは実際に撮影した写真を見ながら画質などを評価していこう。カメラ性能はかなり優秀であったため、期待してもらいたい。

 まず『Pixel 7 Pro』のアウトカメラは、広角カメラ、超広角カメラ、望遠カメラのトリプルレンズ構成となっている。一方でPixel 7は、広角と超広角のデュアルカメラ構成だ。さらに超広角の画角もわずかに異なっており、『Pixel 7 Pro』は0.5倍(画角125.8度)、Pixel 7は0.7倍(画角114度)となっている。

 実際に見てもらった方が早いだろう。以下の4枚は順に、『Pixel 7 Pro』で撮影した超広角(0.5倍)、広角(メインカメラ)、望遠カメラ(5倍)、デジタルズームによる30倍の写真だ。

 なんといっても30倍のデジタルズームが圧巻すぎる。画質もそれほど落ちていないようには見える。5倍→30倍の違いを見てもらえばわかるが、遠い被写体を引き付けられるのは望遠撮影の楽しみだろう。

 続いては、『Pixel 7』で撮影したものを紹介する。順に、超広角(0.7倍)、広角(メインカメラ)で撮影したものだ。

 超広角の0.5倍と0.7倍の違いが、写真右側の建物の見切れ具合からわかるだろう。『Pixel 7 Pro』を1台持っているだけで、圧倒的な超広角から望遠まで、幅広い撮影が可能だといえる。

・カメラ機能をチェック ~料理編~

 次は料理の写真を比較していこう。こちらは『Pixel 7 Pro』で撮影したものだ。右の窓からは曇天が、天井からは暖色のペンダントライトが吊るされた、色温度が交じる環境で撮影した。お皿の奥がボケているのがわかる。

 こちらは『Pixel 7』で撮影したもの。ホワイトバランスが異なって見えるが、ボケ感などは同じように見える。

 比較として、『iPhone 12 Pro』でも撮影した。ボケ感がなく、奥のグラスまでピント面に収まっている。画質に関してはややのっぺりしているか?

 続いては暖色の蛍光灯下で撮影した、『Pixel 7 Pro』の写真。なお撮影時に露出などは一切調整せず、いずれの写真もカメラを構えて自然に撮影している。ハイライト表現が見事で、かなり美味しそうに映っている。

 『Pixel 7』でも同様に撮影。色温度も揃ったのか、ほぼ同じ画質に思える。

 最後に『iPhone 12 Pro』でも撮影。オムライスの黄色やお皿の白、全体の被写界深度など、かなりの差が出ている。わかりやすい写真ではあるが、自然かと聞かれれば……うーむ。

 また、『Pixel 7 Pro』にはマイクロフォーカス撮影が追加されている。メインカメラ状態で被写体に近づけば、自動的にマクロモードに切り替わる。ケチャップの質感がいい感じだ。

・カメラ機能をチェック ~実践編~

 『Pixel 7 Pro』1台あればどんな写真が撮れるのか、最後は作例と共に見ていこう。『Pixel 7 Pro』を持って江ノ島へ観光に行ってきた。

 屋根の上にトビが留まっているのが見えた。メインカメラではこの距離だが……。

 デジタルズームを活用すればここまで寄れる。やや画質は荒れてしまうが、トビのくちばしや目までしっかり捉えることができた。この撮影がスマホ1台でできてしまうのは、なかなかに興奮できるのでは?

 水族館で泳ぐダイバーさんを撮影。水族館は薄暗い場所が多く、画質やピントが難しい環境だ。ラフに構えて撮影したが、明るさも悪くない。

 動画も撮影してみた。2倍ほどズームしているが、手ブレ補正のおかげでかなり綺麗に撮影ができている。

 雲の切れ間から覗く夕焼けを撮影。これは見た目よりもかなり赤く補正されており、コントラストも柔らかくされている。

 一緒に持っていたミラーレスカメラではこのように撮影できていた。こちらの方が見た目には近い。

 モーションモードにある「長時間露光」を使い、行き交う車を撮影。まだ明るい時間だったためかコントラストが弱いが、『Pixel 6』の時と同様にこちらも活用できそうだ。もちろん手持ちで撮影している。

 また、『Pixel 7』には「ボケ補正」という新機能がある。手ブレしてしまった写真やピンぼけ写真をキリっとした写真に補正できる夢のような機能とのことだが、こちらも試してみた。Pixelで撮影した写真以外も補正できるので、ミラーレスで撮影した写真を使用している。

 左にあるボケ補正を選択すると、スライダーが出現。0~100のあいだで補正をコントロールできる。0と100を見比べると鳥の頭部のシャープネスに変化が見られるが、使える写真になるかどうかは被写体次第といったところか。このほかの写真でも試してみたが、劇的にピンぼけから復活した写真はなかった。

・旅行やお出かけの思い出を、あらゆる角度から切り取れる

 近年はマクロから望遠まで幅広い撮影を可能とするスマホは珍しくないが、『Pixel 7』の写真は「見たままを写す」という意味で頭一つ抜けていると感じた。補正の度合いがかなり自然で、作為性を感じにくい。夜景に関してはさすがに誇張を感じるが、美味しそうな料理や旅先のスポットなどを撮影する分には、もはやコンデジいらずだろう。

 こうなると、カメラ趣味者であれば「デジカメ+Pixel 7 Pro」という組み合わせで、抑えられるシーンが大幅に増えるだろう。例えば広角と望遠はPixel 7 Proに任せて、カメラは50mm単焦点のみにする。これなら荷物も減らせるし、50mmでは物足りないシーンであっても『Pixel 7 Pro』の画質ならおさえで撮るにも悪くないだろう。トビの望遠写真が良い例だ。

 『Pixel 7』の真価は、カメラにアリ。コンピューティングフォトの真髄を体験したければ、Googleデバイスを手にとってみてはいかがだろうか。

Source
https://store.google.com/jp/category/phones?hl=ja

(文=ヤマダユウス型)

『Pixel 7 / 7 Pro』