いつの時代も、「お金持ちの男性と結婚したい」と、“セレブ婚”に憧れを持っている女性が一定数います。しかし、現在の日本において“セレブ婚”は本当に可能なのでしょうか。先行き不透明な時代に“セレブ婚”を望んでも、夢と現実にはかなりのギャップがありそうです。また、高年収の男性でも、お金に対する考え方は人それぞれで、財布のひもが固く、割り勘デートをしている人たちもいます。

 今回は、「高年収」といわれている男性たちとお見合いをした女性たちの話を見ていきましょう。

結婚して、実家暮らしのレベルを落としたくない

 田代れいかさん(31歳、仮名)は週に4日ほど音楽関係の講師をしている、年収120万円の女性です。この年収では、とても1人暮らしはできません。大学を卒業してからずっと実家暮らしで、稼いだお金は家に入れることもなく、自分のお小遣いとして自由に使ってきました。

 そんなれいかさんが婚活を始めるとき、男性に一番に望んでいたことが、「私に好きな音楽の仕事をさせてくれる人」でした。そのためには、ある程度の収入が男性にないといけません。

 婚活を始めて、最初に交際に入ったのは、メーカーに勤める年収650万円の近藤ゆうやさん(34歳、同)でした。デートを重ねていたれいかさんでしたが、2度目のデートを終えたところで「交際終了」を出してきました。その理由が、こうでした。

お見合いから交際にはなったものの、いろいろと考えてしまって。デート代は全てお支払いしてくださる人だったのですが、もし結婚するとなったら、収入的にちょっと不安です。彼と結婚したら、今、実家で生活しているレベルを落とさないといけないですよね」

 れいかさんは一人っ子です。ご両親に愛情を注がれ、中学から大学までエスカレーター式の私立付属校に通い、お金もふんだんにかけて教育されてきたのでしょう。父親は上場企業の社員で、経済的にも豊かなご家庭のようでした。

 結局、初デートを終えた後、ゆうやさんに「交際終了」を出しました。

 次にお見合いし、交際となったのは、IT関係のコンサルティングをする佐山けんじさん(37歳、同)。けんじさんの年収は1300万円。れいかさんのお父さまと同じくらいの年収がある男性でした。

 しかし、初めてのデートを終えて、憤慨した口調で「交際終了」を出してきました。れいかさんは言いました。

「信じられません! デートが割り勘だったんですよ。しかも、自分が食べたものは自分で支払うという、女友達と食事したときみたいな別会計の割り勘でした」

 会計時は、こんな様子だったようです。

 けんじさんは、食事を終えると、伝票を持ってレジに向かいました。その後ろについていったれいかさん。するとけんじさんが、レジで言いました。

「別々で会計できますか?」

「大丈夫ですよ」という店員の言葉に、けんじさんは、自分が食べたものと飲んだものの品名を言って、その合計金額を支払いました。そして、何事もなかったかのように店の外に出ていき、れいかさんが支払いを終えるのを待っていたというのです。

 れいかさんは、私に言いました。

「もうびっくりしました。私、その日はたまたまお財布に3000円しか入っていなかったので、慌ててファミリーカードで支払いましたよ。デートで割り勘なんて、生まれて初めてです」

 そうはいっても、最近の20代のカップルは、デート代を割り勘にする人たちが増えています。また、30代のカップルでも、男性が多めに出す“女子割会計”をしているカップルが珍しくありません。

 この調子では、れいかさんの婚活は、これからも苦戦しそうです。

人にごちそうになるのは好きでも、自分のときは出し渋る

 佐藤ふみかさん(34歳、仮名)がお見合い後に交際に入ったのは、年収1100万円の会社員、伊東たかしさん(37歳、同)です。

 ふみかさんは地方出身で、大学が関東圏だったので、そこからずっと1人暮らしをしています。新卒でメーカーに就職し、年収は470万円。やりくり上手の自立した女性でした。

 男性とのデート費用についても、こんなことを言っていたのです。

「男性が食事をごちそうしてくださったら、次のお茶代は私が出す。お茶に行かなかったときには、次のデートの食事代は私が出す。デート代を男性にばかり負担させないようにしたいです」

 それを聞いたときに、とてもいい心掛けだと私は思っていました。ところが、交際が3カ月を過ぎた頃、こんなことを言ってきたのです。

「デートで、食事代をたかしさんが払ったら、次のデートでは私が払うというような、交互に支払うやり方が自然と定着していきました。だけど、ちょっと解せないのが、たかしさんが払うときは、チェーン店の居酒屋とか安いお店なんですけど、私が払うときはイタリアンとかおすしとか、それなりの金額のお店なんです。私が払うデートのときになると、『ここに行こうよ』と、最近はたかしさんが提案してきます」

 私は、「そこがモヤモヤするなら、はっきりと伝えた方がいいんじゃない?」とアドバイスしました。しかし、ふみかさんには遠慮があってそれを伝えることができず、「私の考え過ぎかもしれないので、しばらく様子を見てみます」とのことでした。

 しかし、状況は変わらなかったようです。しばらくして、また、ふみかさんから連絡がありました。

たかしさんのお金の使い方って、よくいえば堅実なんですけど、平たくいうとケチなんです。あと、会話の中で『これは安い』『これは高い』と値段をいちいち言うんですよ」

 そして、たかしさんのこんな発言に、気持ちがスーッと冷めてしまったようです。

「この間、同僚の送別会があって。会費が4000円だったんだけど、そんなに仲もよくなかったし、贈る花束のお金300円は出したけど、送別会は『その日は外せない用事があるから』って言って行かなかったんだ。まあ、タダなら参加してもよかったけど」

 人がごちそうしてくれるなら行くけれど、自分で払うなら行かない。そこに、たかしさんの人間性が垣間見えたというのです。

「だから、私が払うデートのときはおいしいものを食べる。だけど、自分が払うときには安く済ませる。彼は無意識にそういう気持ちが働いているんじゃないでしょうか。交際終了でお願いします」

 こうして、3カ月の交際は終了しました。

年収1000万円のはずが、実は400万円

 松山ちかこさん(35歳、仮名)は、私の結婚相談所での活動をしながらも、無料の婚活アプリにも登録をしていました。

 そして、婚活アプリで太田としおさん(35歳、同)と出会い、交際をすることにしたのです。としおさんは東京の隣県の自営業者で、アプリのプロフィルには「年収1000万円」と記載されていました。

 ちかこさんは地方出身で、高校卒業後、技術系の専門学校に入学。そのときから1人暮らしをしています。卒業後、今の職場に就職し、現在の年収は450万円です。就職してから堅実に貯金をしてきたのと、地方の両親の援助金もあり、それを頭金にして、30歳のときに2LDKのマンションを購入しました。

 そんな2人が、アプリの出会いをきっかけにして付き合うようになりました。交際に入って3回目のデートで、としおさんがちかこさんのマンションを訪れて、男女の関係にもなったようでした。

 そして、ちかこさんから私に連絡が入りました。

「今月いっぱいで、相談所は退会させてください。私、としおさんと結婚しようと思います」

 ところが、そこから1週間後に、「ちょっとご相談があります」という連絡がちかこさんから来ました。面談にやってきたちかこさんが言いました。

「アプリに『年収1000万円』と書かれていたのですが、それは、『その年収を稼いでいた年もあった』という金額だそうで、今の年収は400万円程度だそうです。コロナで売り上げがすっかり落ち込んでしまったというんですね。彼の家に行ったことがあるんですが、家賃が4万5000円の賃貸アパートでした」

 婚活アプリの場合は、収入証明書の提出が義務付けられていませんから、年収は自己申告です。コロナ前に1000万円の年収があった人が、家賃4万5000円のアパートに住むかということにも疑問が残りますが、そこはとしおさんの言葉を信じるしかありません。

 また、としおさんは、「ちかこさんが今住んでいる分譲マンションを新居にしよう」と提案しているようでした。

「私のマンションから自分の仕事場に通うと言うんですね。まあ、自営業だから、売り上げの浮き沈みはあると思うんです。コロナも落ち着いてきたから、売り上げが上がっていけばいいですけど」

 こう言いながらも、ちかこさんは浮かない顔をしています。そして続けました。

「ほれた弱みといいますか、性格は優しくて私を大事にしてくれているので、結婚しようとは思います。ただ、年収1000万円を稼いでいる彼が、実は400万円程度だったという現実を知って、ちょっと色あせて見えてきているのも正直な気持ちです」

 そうかといって、彼と別れる勇気はないようです。

 高所得者だから、結婚したらセレブな生活ができる――。今は、そんな時代ではありません。

 国税庁が発表した2020年の民間給与実態統計調査によれば、日本人の給与所得の平均は433万円。所得が1000万円を超えていたら、平均の2倍以上の金額を稼いでいるわけですが、所得が高くなれば所得税、住民税、社会保険料、雇用保険料なども高くなっていきます。

 また、高所得者は住居や車など、持ち物に散財しがちです。そうなると、どこを切り詰めるかといったら、日々の食費や雑費などの生活費でしょう。

 これまでの例でいうと、「年収1000万円超の男性とのデートが割り勘だった」「“女子割”だった」というのは、女性たちからよく聞く話です。そして女性たちにしてみたら、年収433万円の男性に割り勘にされるのは許せても、年収1000万円超の男性に割り勘にされると、「何てせこい人」と思ってしまうのです。

 また、3例目に出てきた自営業のとしおさんは、本当に年収が1000万円あったかどうか定かではないのですが、自営業者がコロナのような感染症や、震災や洪水のような自然災害で、売り上げが大打撃を受けることは想定すべきです。

 一夜にしてシンデレラになれる“セレブ婚”に憧れるのは、先行き不透明な時代には、賢い選択ではありません。

 結婚は、2人で力を合わせて築いていくものです。地に足のついた婚活をしていくことを、仲人としてはお勧めします。

仲人・ライター 鎌田れい

高年収の男性たちとのデートは…