足を怪我したときに沼、川、湖や海などに入ることが、命の危険にもつながることをご存じだろうか。目にも見えない恐ろしい「人食いバクテリア」がその理由だが、改めてそれが正しいとわかる最新の事例を『Detroit News』『Fox9 News』などが報じた。


■突然の体調不良

先月下旬から10月1日にかけてアメリカを襲ったハリケーンイアン。台風のレベルでは2番目に強い「カテゴリー4」であり、フロリダ州西部の広い範囲が水害に見舞われた。

そんななか、ミシガン州オタワ郡のジェームズ・ヒューイットさんという56歳の男性が、自宅に戻ってから体調を著しく崩し、10月11日に死亡した。ジェームズさんは、被災した同州ネープルズの友人宅とその近辺の支援にあたっており、死因は誰もがおそれる人食いバクテリアへの感染だった。


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■運河で足に傷を負う

検査を経て、ジェームズさんが感染したバクテリアは、グラム陰性小桿菌の「ビブリオ・バルニフィカス」と特定された。これは比較的珍しい種類だという。

ジェームズさんはその2週間前、水害に見舞われた友人宅の周辺の片づけを手伝うなか、運河からボートを引き上げる作業で足に擦過傷を追っていた。だが、特に気にも留めず作業を続けていたという。

■基礎疾患で悪化する率が高まる

抗生物質による懸命な治療にもかかわらず、ジェームズさんは急激に血圧が低下し、全身の臓器や組織に十分な血液が行きわたらなくなり、多臓器不全により死亡した。医師は、足の傷口からビブリオ・バルニフィカスが入り込んだ可能性が高いことを説明した。

なお、米・疾米国疾病管理予防センター(CDC)は、この細菌に感染した人の2割が死亡するとしている。ガン、糖尿病、慢性心疾患、慢性呼吸器疾患のような基礎疾患がある人では、急激な悪化が起こりやすいと説明した。


■傷口にとって安全なのは水道水だけ

婚約者のヴェンレット・デラノさんは、メディアの取材に「困っている人がいたら、飛んで行って必ず助ける人でした」と話している。しかし彼女の周辺では誰もそんな病気があることを知らず、「知識さえあればもっと早く対処できたのに」と思うと、悔しくてならないという。

ジェームズさんの症例を明らかにすることで、単なる擦過傷でも傷口を水道以外の水に浸すのは危険だということを、できるだけ多くの人に知ってほしいという。


■日本でもたびたび話題に

感染者の3割が亡くなる恐ろしい人食いバクテリアは、日本でも感染者数が増加している。汚染された海水に外傷がさらされて起きる壊死性創傷感染のほかに、生あるいは熱処理が不十分な貝を食べることによる経口感染では、胃腸炎、中耳炎、ときに敗血症の原因になるという。

2017年6月には、埼玉西武ライオンズ森慎二投手コーチがきわめて毒性の強い溶血性レンサ球菌(溶連菌)に感染。発症からわずか数日で多臓器不全により死亡したことが大きく報じられた。

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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ

足の傷から人食いバクテリアに感染した男性が死亡 2週間前に水害被災地の支援