夏の風物詩のひとつといえば、やはり怪談やホラーだろう。だが、ホラー映画の劇場上映はよく見かける一方、地上波テレビでのホラー映画放送は、ほとんど目にしなくなってしまった。そもそも、映画放送の枠自体が少なくなっていることもあるが、ここまでホラー映画をやらなくなったのは、なぜなのだろうか。関係者に聞いてみた。

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 まず、過去にどのようなホラー映画がテレビ放送されていたかというと、日曜洋画劇場テレビ朝日系列)で『13日の金曜日』、金曜ロードショー日本テレビ系列)で『バタリアン』、ゴールデン洋画劇場フジテレビ系列)で『エルム街の悪夢』、木曜洋画劇場テレビ東京系列)で『サスペリア』『ゾンビ』など軒並みテレビ放送されたのを筆頭に、『チャイルド・プレイ』『遊星からの物体X』『死霊のはらわた』『サンゲリア』など、怖すぎるホラーが並ぶ。今でこそ、よく地上波放送できたものだと思うが、80年代90年代ホラー映画のテレビ放送が自然だった。

 「テレビ局側での(自主)規制に拠るところが大きいと思います」と映画関係者は話す。「社会的事件が起こるたびに、ホラー表現が犯罪者心理に及ぼす影響が深く語られることなく、ホラー映画はやり玉に挙げられてきました。その結果、ひとくくりに“悪”とみなされたホラー作品は、テレビから姿を消してしまった。また、テレビ局やスポンサーは、いくら視聴率が取れたとしても、クレームや抗議というものに過剰に反応します。そうなると、敢えてホラー映画をテレビでやる意義が感じられないのかもしれない」。

 さらに、ホラー映画では、セクシーなシーンが定番のひとつだが、「以前に比べ、テレビ局は裸体のシーンなどにも自主規制をかけている」と関係者が話すように、このセクシーシーンがゴールデンプライムタイムの時間帯はもとより、深夜帯でのホラー映画の放送が減っている一因となっている。

 そして、80年代90年代と圧倒的に違うのが、テレビ局が映画製作に積極的に乗り出したという点だ。いわゆる、テレビ局映画の増加。2013年度の邦画興収トップ10を見てみても、テレビ局が製作員会に入っていない作品は1つもない。それほど、テレビ局映画は増えているのだ。

 「テレビ局が映画の製作や出資に絡んでいるということは、もちろん、テレビでのオンエアも、テレビ局の映画が優先されることになります。だからこそ、ドラマのスペシャル版のようなものから、スピンオフもの、オリジナルのものまで、テレビ局の映画は多岐に渡っても、その多くの場合がテレビでのオンエアを前提とし、万人に受け入れられるであろう、マスを意識した作品になることが多い。結果、振り切った作品は敬遠され、“ホラー”というジャンルがテレビ局主導で積極的に作られないという状況も、テレビでホラー映画を観る機会が減った要因のひとつ」。

 最後に、関係者はこう口にする。

 「一般社会に受け入れられるにはちょっと分が悪いホラー映画ですが、ホラー映画とひとくくりにされてしまうことで日の目を見ない作品も増えており、市場縮小・文化縮小にも繋がりかねません。暑い夏に、皆でこわーい思いをするホラー映画がオンエアされることも楽しみの1つとして許容できるくらいの社会が健全なような気がします」。

 さぁ、テレビ局さん、深夜からでもホラー映画を増やしてみます?

地上波でお目にかかれなくなったホラーキャラたちも…(『13日の金曜日PART8/ジェイソンN.Y.へ』場面写真) (C) AFLO