「4月から1、2年の間、全ての仕事を休ませてもらいます」

 当時、5本のレギュラー番組を抱える売れっ子タレントだった野沢直子が「笑っていいとも!」(フジテレビ系)で突然、休業を宣言。91年2月27日のことだった。

 番組終了後、記者会見に臨んだ野沢は、休業の理由を、

「もっと面白くなりたいからです。このまま自分の番組を持たされるようになったら、プレッシャーに負けちゃう。地力が足りませんから…勉強しなきゃ」

 と語ったのだが、1年半ほど前、ザ・ブルーハーツの甲本ヒロトとのディズニーランドデートがスクープされた。その後も2人の熱愛が囁かれていたこともあり、すわ結婚か、と報道陣からの質問も、その点に集中。ところが、

「それなら、正々堂々と言いますよ。ただし、妊娠はしてます。ウソですょ~。ええっ、本気にしないで下さいったら、も~う」

 しかし、引き下がらない報道陣から「では今回の休業は、甲本さんが原因ではない?」との質問が飛ぶと、

「『結婚へ!』と書かれてから、電話もしてません」

 甲本以外に恋人ができたのかと食い下がる報道陣には再度、

「違いますったら。でも恋愛関係も好きなんで、休みの間はそっちにもかなり走ると思いますけどね」

 笑いをとって、会見は終了したのだった。

 所属先である吉本興業の木村政雄制作部長に話を聞くと「休業の理由は、会見で本人が申し上げた通り」としながらも「うちとの契約はそのまま。吉本では初めてのケースですが、休業中の給料も出します」とのことで、金銭面では厳しいことで知られる吉本が「就業保障」を出すことに、彼女の未知なる将来性を感じたものだ。

 そんな野沢の最後の出演となったのが、4月1日夜10時から放送の、関西のローカルラジオ番組「MBSヤングタウン」だった。

 これが最後の仕事ということもあって、局側は記者会見を設定。しかし野沢の意向で、直前になり、キャンセルされることになった。吉本興業の担当者曰く、

「最後の番組なので本人もナーバスになっているため、話ができるような状態ではないと。東京からも多くのマスコミの皆さんにお越しいただいたのですが、すみません。勘弁して下さい」

 ただ直近に、かつて恋人と言われた甲本の、新たな恋人とのショットが写真誌に掲載されたこともあり、このタイミングでその件に触れられるのを避けたかった、とも考えられる。

 番組終了後、スタッフから渡された花束を手に、一礼して車に乗り込む彼女の後ろ姿に、何とも言えない寂しさを感じたのだった。

(山川敦司)

1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。

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