SpaceX本社がある米国カリフォルニア州ホーソーンにイーロン・マスクが設置したハイパーループ・チューブがなくなっていることが明らかになった。

(参考:【写真】ハイパーループ・チューブのなかを進む様子

 SpaceXの社屋近くにあったチューブは、ホーソーン市に撤去要請がなされたという。空いたスペースは今後、SpaceX社員の駐車場として利用される予定だ。

 ハイパーループとは真空のトンネルに鉄道を走らせる未来の技術だ。ロサンゼルスサンフランシスコ間の約650kmを時速600マイル(時速965km)・35分で結ぶ構想とともにマスク氏が2013年に発表した。

 ロサンゼルスサンフランシスコはともにアメリカ西海岸にあり、近いような印象があるが東京・青森間とほぼ同じ距離だ。現在は飛行機で約1時間、新幹線で3時間かかる距離を30分程度で移動できるようになったら、私たちの生活は一変するだろう。

 高速鉄道の技術には、磁気浮上式で時速500km~600kmのスピードが出るリニアモーターカーが日本ではおなじみだろう。しかしハイパーループは真空状態で空気抵抗を極限まで減らせるため、その2倍の速度が出せるのだ。

 旅客機と遜色ない速度でトンネルの中を走るため、実用化されれば交通システムへの影響は計り知れない。

 2015年に設計され2016年に建造されたこのテスト用チューブは、全長1マイル(約1.6km)。2019年まで毎年のように学生のコンテストが行なわれ、オープンな研究開発に積極的だった。

 イーロン・マスクは、トンネル建設などを手掛けるインフラ企業The Boring Companyを2016年に設立し、SpaceXと共同でハイパーループ事業を進めてきたが、米国内では計画棚上げの可能性も取り沙汰されており、事業が今後どうなるのか気になるところだ。

 ここまで大風呂敷を広げておいて、まさかイーロン・マスクが完全撤退することは考えにくく、今後の動向に注目が集まる。

(文=@Nagatackle

Unsplushより