映画『THE FIRST SLAM DUNK』が12月3日に公開される。10月に公開されたポスターキャラクター配置や11月4日に解禁された予告映像を見る限り、本作は湘北高校2年の宮城リョータを中心に描かれるのではないかと予想する声が多い。濃すぎるキャラクターたちの陰に隠れがちだが、宮城リョータは湘北バスケ部の戦術を支える超重要キャラであり、実は謎多き人物でもある。今回はそんな宮城のキャラクターを、原作漫画『SLAM DUNK』の描写を中心に掘り下げていく。

【写真】井上監督が「リョータのイメージそのまま」と太鼓判 『THE FIRST SLAM DUNK』宮城リョータの声を演じる仲村宗悟

電光石火の切り込み隊長で次期キャプテン

 宮城のポジションはPG(ポイントガード)。身長168cm、体重59kgとバスケットプレイヤーとしては小柄だが、「電光石火」と称されるスピードを生かした突破力と広い視野を武器に、湘北のゲームメイクを担当する次期キャプテンだ。

 『SLAM DANK』において、PGは最も強力なライバルがひしめくポジションと言えるかもしれない。湘北と対戦したチームのPGは、神奈川ナンバー1プレイヤー・海南大付属の牧紳一、牧とナンバー1の座を争う翔陽の藤真健司をはじめ、1試合平均25得点の大阪・豊玉高校の板倉大二朗、全国王者・山王工業のキャプテン深津一成など、一流の選手たちが名を連ねている。さらに、場合によっては湘北のライバル・陵南の仙道彰マッチアップすることもある難ポジションだ。

 そんな名だたるプレイヤーたちを相手に、しかも身長差という大きなハンデがある状況で、宮城はチームの勝利に貢献してきた。これだけでも、宮城のスペックの高さがうかがい知れるというもの。陵南戦では堅実なプレイスタミナ定評のあるPG植草智之を完全に抑え込んでおり、チームの苦境に活路を見出す“切り込み隊長”として安西監督にも頼られている。

 このほか、主人公桜木花道をうまく動かしたり、試合でチームが崩れかけると「流れは自分たちでもってくるもんだろがよ!!」と檄を飛ばして空気を変えるなど、チームの司令塔らしい活躍をしばしば見せる。派手な得点シーンこそ少ないものの、湘北バスケ部の戦術面を支える人物であり、彼もまた全国レベルプレイヤーであることは間違いない。

■主要キャラだが、実はバスケ部以外での謎が多い

 宮城は原作の第50話から登場。いきなり他校の女子にフラれるところから始まり、第1話の冒頭でフラれた桜木のシーンコマ割りも描き文字(ズッコーン)も同じという演出で読者に強烈な印象を与える。

 このほか、告白の連続失敗、喧嘩っ早いところなど、バスケット以外の宮城の人物像は桜木と共通するところが多い。バスケ部のマネージャー・彩子への気持ちを桜木に打ち明けてからは、お互い「花道」「リョータ君リョーちん)」と呼びあうほど意気投合している。

 なお、原作第200話の扉ページ(全国大会参加申込書)で、宮城の名前の正式表記が片仮名の「リョータ」であることが分かる。当時は平仮名・漢字以外の名前が珍しかったが、原作者・井上雄彦によると、「花道が人の名前をあだ名で呼ばない時は、必ずカタカナで呼ぶ」設定があったため、「リョータ君」と呼ばせたことで漢字の名前があり得なくなったという。

 そんな宮城だが、原作ではほかの湘北メンバーと比べて入学以前の描写が極端に少なく、入部の経緯についての独白と、陵南の田岡茂一監督のスカウトシーンぐらいしか描かれていない。プライベート描写もほとんどないので、普段の宮城がどんな生活を送っているのかなど、不明な点が多いのも特徴。映画では、これまで明かされていなかった宮城の姿を見ることができるかもしれない。

井上雄彦の読み切り漫画『ピアス』がカギを握る?

 最新の予告映像では、宮城がチームを引っ張るような描写以外にも気になるシーンがある。それは、冒頭でバスケットをする2人の少年と海辺の少女。1分強の映像の中で30秒以上の尺を割いているにもかかわらず、原作で一致するシーンが思い当たらない。むしろ、井上による読み切り作品『ピアス』を想起させるとして話題になっている。

 海辺の秘密基地からいつも海を見ている兄を亡くした少年・りょうたと、あやこの出会いを描いた『ピアス』。公式に『SLAM DUNK』のスピンオフだと発表されているわけではないようだが、“りょうた”“あやこ”は『SLAM DUNK』の“リョータ”“彩子”と同じ読み。りょうたがバスケットマイケル・ジョーダン)好きだと分かる描写や、左耳にピアスを空ける描写など、符号する点が多いことから同一人物だと解釈しても不自然ではない。

 ただし『SLAM DUNK』第54話で宮城は、高校で初めて彩子を見て一目惚れしたと言っている。『ピアス』が掲載されたのは、『SLAM DUNK』の連載終了後。つまり、“リョータと彩子が高校まで出会っていない”という設定が既にある状況で描かれている。

 可能性があるとすれば、宮城が昔のことを忘れている(簡単には忘れられない体験にも思えるが)、もしくは“あやこ”と“彩子”は名前が同じでも別の人物である、の2点だろうか。映画と繋げるには強引かもしれないが、それでも予告映像の海辺のシーンは『ピアス』を意識せざるを得ない。

 もし映画に『ピアス』の要素が絡んでくるのであれば、『THE FIRST SLUM DUNK』新予告の冒頭でバスケをしていた2人の少年は、りょうたと亡くなった兄かもしれない。もしかすると、彩子は“リョータ”が“りょうた”だと気付いていたのかもしれない(りょうと呼んでいたので可能性は低そうだが…)。

 原作『SLAM DUNK』では、彩子に一目ぼれした宮城の恋は成就しないまま最終回を迎えているが、進展を願うファンは多いだろう。『THE FIRST SLUM DUNK』が、もし宮城リョータフォーカスした内容になるならば、謎の多い過去のエピソード、そして恋の行方を含めたアフターストーリーを見ることができる可能性があるのかもしれない。そうなる場合、どの試合が描かれることになるのか。ますます妄想は膨らむのである。(文・二タ子一)

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』は12月3日より公開。

新作映画で宮城リョータの過去が描かれる?(※画像はイメージ)