実行犯の逮捕から10日余り、「餃子の王将」社長射殺事件は、これまでの捜査の遅れを取り戻そうと連日懸命の証拠収集に全力を挙げている。そうした中、「事件のキーマン」とされる重要参考人の行方を捜査本部が追っているというのだ。果たして、事件の第2幕は上がるのか。

 社会部記者が語る。

10月28日に、殺人と銃刀法違反容疑で逮捕された工藤会系幹部の田中幸雄受刑者(56)は、10月29日に送検された際には、通常なら検察へ移送されるのですが、わざわざ検察官が勾留されている京都府警山科署にまで出向いて聴取をするほどの厳戒態勢です。状況証拠はかなり固まっていますが、肝心の生き証人である田中受刑者に身の危険が及ぶ可能性があるとして、24時間体制で完全ガード。万が一のことがあってはならないと、留置場に持ち込まれる3度の食事ですらかなり厳しいチェックがあるほど。現場の緊張感はただならぬものがある」

 13年12月19日早朝、何者かによって至近距離から4発の銃弾を撃たれ死亡した「餃子の王将」の大東隆行社長(72)=当時=。事件を巡っては、犯行から1年後に田中受刑者の名前が浮上していたが、それから逮捕まで実に約8年の時間を要したのは、捜査本部による犯行動機の解明が遅々として進まなかったからに他ならない。捜査関係者が明かす。

「田中受刑者については、現場近くに落ちていたタバコの吸い殻から採取されたDNAや、犯行現場や大東社長の自宅付近での監視カメラによく似た人物が映っていたことも把握。さらには、現場から数キロ離れた場所で発見された盗難バイクからも、田中受刑者のDNAが採取されているだけに、状況証拠的には公判が維持できると踏んでいる。しかし、大東社長と田中受刑者の間の接点は皆無。いざ公判の維持ともなれば、犯行を指示、依頼した人物の特定も欠かせない。氏名不詳で公判維持も可能ですが、やはり動機面での立証に迫ることが必要となってくる。そこで、捜査本部は、実行犯である田中受刑者が所属する工藤会の関係各所を一斉にガサ入れしただけでなく、創業者一族の関係者にも任意で事情聴取を進めているのも、こうした動機面の解明につなげたいという捜査員の執念がうかがえます」

 中でも、大東社長が00年に社長に就任して以来、悲願としてきたのが、初代社長から続く京都を拠点とするA社との関係解消だった。初代以来、商取引やトラブルの仲介などで密接な関係を築いてきたものの、バブル期以降の融資など不透明な取引がおよそ260億円に及び、そのうち170億円が焦げ付いていたことが発覚。その報告書を大東社長は陣頭指揮を執って作成。そのわずか1カ月後に射殺事件が発生したのだ。社会部記者が続ける。

「射殺事件直後から第一容疑者候補として浮上したのが、A社の社長だったB氏だった。結果的に任意での聴取や家宅捜索をしたものの犯行につながる発見はまったくないほか、事件当日も福岡にいたことでアリバイもある。捜査本部では、あまりにもB氏に固執しすぎたことで、かえって捜査が長期化したと判断。再度、ゼロベースで、王将フードサービスの社内外のトラブルについて洗い出しを進めています」

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