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2027年までに3万台を目標

執筆:Ohto Yasuhiro(大音安弘)

EV充電サービスなどを手掛けるENECHANGE(エネチェンジ)は、2022年11月11日、マンション向け充電サービスへ新規参入することを発表した。

【画像】「のん」さんと、エネチェンジの充電器「チャージ3」 全42枚

エネチェンジが手掛けるEV充電サービス「EV充電エネチェンジ」は、駐車場を備える商業および公共施設、事業所などに従量課金制普通充電サービスを提供するものだ。

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EV充電エネチェンジは、提供する全ての普通充電器を6kW出力に限定。充電インフラの高出力化を推進する。    ENECHANGE

提供される充電器は、200V普通充電となるが、日本の公共充電器で標準的な3kW出力のものではなく、倍速充電となる6kW出力とすることで、提供する充電サービスの利便性を高めているのが特徴だ。

現時点では、充電スタンドでの6kW出力の充電器の設置割合は、わずか0.3%に過ぎないという。

EV充電エネチェンジでは、EVのバッテリーの大容量化と航続距離の拡大から、より日常的に利用する充電インフラの高出力化がマストと考え、提供する全ての普通充電器を6kW出力に限定しており、今後も6kW以上のものをスタンダードにしていく方針だ。

現在、充電器の受注台数は、2021年1月の参入以来、2022年第3四半期までに1467台を記録。2023年の第2四半期までに、3000台の受注を目指す。さらにエネチェンジ単独で、2027年までに3万台の設置を目標としている。

マンション向けEV充電 現状は?

これまではEV利用者が利用する宿泊施設や商業施設などの駐車中に利用する目的地充電の提供を手掛けてきたが、新たに日常的な充電を行うマンションなどの集合住宅向けの充電サービスの提供を乗り出す。

代表取締役CEOの城口洋平氏は、「EVで日常的に必要な普通充電器もマンションの設置は遅れており、国内新築マンションでは1%未満が現状だ。その背景には、マンションの充電設備の導入には、充電器が不要の居住者からの合意が得られにくいことを初め、設置場所の選定や設置や維持のコスト負担など、様々な課題があることにある。今回、スムーズな充電インフラの導入が可能となるマンション向けプランを用意した」と話す。

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マンション向け「チャージ3」の特徴は、コンパクト設計、デマンド制御、シェア機能の対応。    ENECHANGE

その目玉となるプランが、業界初となる「マンションゼロプラン」だ。

これは、マンション管理組合が導入し易いように、一定の条件をクリアすれば、設置費用、月額費用もゼロ。さらに運用に必要な電気代は、従量電気代から実費分を還元することでゼロとするもの。

このオールゼロプランは、業界初の試みだという。

ゼロプランの導入条件については、40台以上の駐車場を備えるマンション、来訪者を含めたマンション関係者が利用可能な共有駐車場への設置、マンション1施設あたり2台とするなど、現実的な内容となっている。

提供される充電器「チャージ3」は、コンパクトで設置場所を選ばない壁掛けタイプのもの。親しみやすい卵のようなシェル型デザインとなっており、本体にケーブルを巻き付けることが可能。稼

働状況を一目で確認できるパネル正面にLED照明を内蔵し、正常な充電状況や異常発生を一目で確認することができる。

様々な車種の充電口の位置に対応すべく、ケーブルは5mの長さを確保。もちろん、出力は6kWとなる。

充電後、車両の出庫を促すアイデア

利用者でのスムーズな共有を可能とするために、シャア機能付きのスマホ公式アプリを提供。

公式アプリでは、充電の開始と課金を行うだけでなく、充電完了後、充電スペースから一定の時間内に車両を出庫させる通知機能を備える。

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マンションセロプラン、マンションスタンダードプランという2つの料金プランが用意される。    大音安弘

もし通知されたユーザーが、一定時間内に車両の移動を行わない場合に、「ペナルティ課金」を設定することも可能だ。このような管理を行うことで、マンション内での設置台数が少なくとも、利用者が1台の充電器を有効にシェアできる仕組みとなっている。

また導入先のマンション管理組合へのヒアリングで90%が気にするのが、EV充電器設置時のピーク電力使用量だ。

高電圧電力契約の場合、デマンド値が電気の基本料金に影響を与えるため、導入によるデマンド値を上昇させない配慮が必要となる。

エネチェンジは、一般社団法人電力データ管理協会に所属する唯一のEV充電事業者であるため、スマートメーターから直接データを取得し、デマンド制御できることも特徴となる。このため、2023年夏から順次開始される電力データの自由化に合わせ、デマンド制御システムも開発中だという。

料金体系は? CMは「のん」さん

気になるのは、充電時の利用料金だが、マンションゼロプランの場合、利用者が充電時に支払うのは、利用時間の従量課金となるが、EV・PHEVによっては、通常の3kW出力にしか対応していない場合もある。

その際は、同じ電気を充電するには、理論上6kWの2倍の時間が必要となる。その不公平を無くすべく、3kW対応のEV・PHEVについては、料金を半額にするなど、出力に合わせた価格調整も行うというのも嬉しいところだ。

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マンション向け充電サービス新規参入発表会に登壇した「のん」さん。CMにも起用される。    ENECHANGE

マンション向けプランの設定で、更なるニーズ拡大が期待できる「EV充電エネチェンジ」のPRのために、初のTV・タクシー向けCMを作成。

出演者には、女優やアーティストとして活躍する「のん」が起用された。CMソングには、英国の童謡「ロンドン橋」の替え歌にした歌を使用するが、この歌手を「のん」さんが担当している。

発表イベントに登壇した「のん」さんは、「“ロンドン橋 落ちる”のフレーズが“EV充電エネチェンジ”に置き換えられていますが、メロディに合っていて、つい口ずさんじゃいますね」と楽しそうに語り、エネチェンジに関するクイズにも挑戦し、エネチェンジのPRを行った。

なお、同CMは、今年11月21日より東京23区エリアからのタクシーCMをスタート。今後、全国12都市へとエリア拡大される。TVCMは12月1日より関東、中京、静岡での放映が予定されている。それ以外にも、SNS広告や動画広告なども行っていくというので、それ以外の地域でも目にする機会はあるだろう。因みに、ロンドン橋の歌が採用されたのは、エネチェンジイギリス・ケンブリッジ大学発祥の企業であることも理由だそうだ。

2022年はEV元年

2022年は、日産サクラなどの軽EVなどの身近なEVも登場したことで、PHVとEVの新車販売台数が飛躍的に向上したことも話題となり、EV元年とも呼ばれる。

政府も2025年までに新車販売を100%電動車とすることを目標として掲げており、2023年度は充電インフラ補助金の拡大が見込まれている。現時点では、新車販売全体の3.8%に過ぎないEVおよびPHVだが、充電インフラ事業者の積極的な動きも見られるようになっているのも確かだ。

エネチェンジは、これまでも住居の充電インフラ整備の課題として語られることが多かったマンションに対応するプランを用意したことで、EV乗り換えが現実的になるユーザーも増えることだろう。

有田COOは、「正直、マンション充電事業は儲からないが、EV普及にはマストとなる課題なので、取り組んでいる。また日常的に利用してもらうことで、出先の充電に当社のサービスを利用してもらうのも狙い」とする。

今後の拡大が期待されるエネチェンジの充電サービス。利用価格やアプリなどの利便性を含め、今後の展開にも注目だ。


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