10月に行われた『キングオブコント2022』で準優勝に輝き、その名を全国に轟かせたお笑いコンビ・コットン。今年、来年と確実にスターへの階段を駆け上がっていくのは間違いないコンビだが、そのボケ担当・きょんの個人アカウントが今注目を浴びているのをご存知だろうか。その名も「コットンきょんの人間観察ちゃんねる」。YouTubeチャンネルは7万人、TikTokは28万人、Instagramのアカウントは29万人と着実にファンを増やし続けている。その演技力は『古畑任三郎』『13人の鎌倉殿』などでおなじみの脚本家・三谷幸喜からも「きょんさんのインスタ面白いんですよ。女性の方の演技も上手ですし」と絶賛されている。

(参考:【動画】きょんの“キモい”演技が光るキャラ・けんぴす

 主に「一人コント」を投稿し続けており、「クラブにいる常連客」「クラスの面白くない男子」「見た目キモいけど声が田中圭の男」「絶対に優勝させてくれるダンスの先生」など、老若男女すべての人間を演じるまさに阿修羅のような変幻自在ぶりを見せている。

 なかでも、クラスで一番明るい女子高生になりきった「JKサチコ」はその真骨頂。困ったクラスメイトを放っておけない面倒見の良さと、ユーモアのセンス、時折見せる乙女の表情に174センチという体格の大きさにも関わらず本物の「女子高生」に見える瞬間が何度もあった。2021年にチャンネル登録者数300万人超えを誇る人気YouTuber・平成フラミンゴとコラボした動画は140万回再生を超えるほどの人気を誇っており、「きょん」という芸人の凄さが再確認できるだろう。

 サチコ以外の動画を観てもそのディティールの細かさは尋常ではなく、きょんの演じているキャラクターを見るたび、どこまで人間観察をすればここまでの別人格を自分の中に降ろすことができるのかと驚愕する。特に「色んなアパレルショップに差し入れを持って来てくれる男・けんぴす」は「面白さ」と「可愛さ」と「恐怖」のバランスが恐ろしいほど絶妙な最高のキャラクターに仕上がっている。

 笑った後に一瞬で真顔になる表情の切り替え、絶対に店員と合わせることのない挙動不審な目線、聞き取れるか聞き取れないかのちょうど中間に位置するスピードの早口、ちょいちょい挟んでくる彼氏ヅラ、その一挙手一投足が接客業をしている人間なら一度は体験したことがあるであろう「どこからどう見ても怪しいが意外と優しくて害はない不審者未満の客」を完璧に体現していた。けんぴすがどう思われているのか、会話を終えた店員・みきぴすの放った「ふぅ……」のため息が全てを表しており、痛々しさで胸がはちきれそうになった。

 続く「アパレル店員に差し入れを渡すだけの男と新人アパレル店員の初々しいやりとり」では、相手が新人店員だからなのか1ミリも合わせなかった目がバッチリ合っており「俺が色々教えてあげなきゃ」という雰囲気がビンビンに伝わってくる。相手によって接し方を変えているのが恐ろしいほどにリアル。もはや「コント」の域を超えたザ・ノンフィクションと言っても過言ではない。

 しかし、最新の動画ではけんぴすの良い意味での純粋さにみきぴすの心が動いたのか、ただけんぴすの話をあしらうだけの対応が、ちゃんとした人と人とのキャッチボールになっており、二人の心が通じ合う姿に謎の感動を覚えてしまい、2人に幸せになってほしいとすら思った。

 サチコ然り、けんぴす然り、きょんが持つ「愛嬌」はもはや天性。ほかの人間が演じると「気持ち悪さ」が勝ってしまいそうな危険なキャラクターも、きょんが演じることで「愛おしい」に変わる。この世にはきょんの演技を見ることでしか味わうことのできない感情がある。コントのみならず、ドラマや映画など活躍の幅を広げそうな彼の活躍にこれからも目が離せない。

(文=かんそう)

YouTubeより