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 これまで地球ではビッグファイブと呼ばれる5回の大量絶滅を経験している。その3回目にあたるデボン紀後期の大量絶滅が起きた原因に関する新たな研究結果が発表された。

 約3億7220万年前、デボン紀の海で起きた大量絶滅では、全海洋生物種のうち約80%が絶滅し、海洋生態系が回復するには3600万年を要したとされている。

 数年前、その原因は、太陽系の近くの超新星爆発の影響とする説が発表されたが、今回発表された説では、「木の根の進化」が引き金だったという。

 ちょうどこの時期、木の根が進化したことで、海が過剰な栄養分であふれかえり、藻類が大量に繁殖した。藻類は海に溶けていた酸素をあっという間に吸いつくし、海の生物を破滅的な大量絶滅に追い込んだというのだ。

【画像】 海洋生物の80%以上が滅んだデボン紀の大量絶滅

 4億1600万~3億5920万年前の「デボン紀」は、さまざまな魚類が進化したことから「魚の時代」と呼ばれている。

 その一方、陸上では「アルカエオプテリス」というシダのような葉を茂らせる原裸子植物が誕生し、地球最古の森林が形成された時期でもある。

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デボン紀後期に誕生したアルカエオプテリス / image credit:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Archaeopteris_reconstruction.jpg

・合わせて読みたい→デボン紀後期に起きた大量絶滅は超新星爆発の影響によるものとする研究結果が報告される

 しかし3億7400万年前のデボン紀後期になると様子が一変する。この「F-F境界」と呼ばれる時期には、海洋生物の80%以上が絶滅したと推定されている。いわゆる大量絶滅が起きたのだ。

What If You Lived in the Devonian Period?

木の登場により、根から海に栄養が大量にもたらされる

 一体なぜ、デボン紀の生物は滅んでしまったのか? 『GSA Bulletin』(2022年11月9日付)に掲載された研究では、その原因は海の「富栄養化」であると説明している。

 植物プランクトン(藻類)が水面付近で光合成し繁殖するために必要な栄養分が急増したということだ。

 それは現在、五大湖やメキシコ湾などで起きている。肥料などによって過剰な栄養が水域に流れ込むと、藻類が爆発的に繁殖する。

 すると、そこに溶けていた酸素が使い果たされてしまい、生物が生存できないいわゆる「デッドゾーン」が出現する。

 だがデボン紀において、富栄養化を起こしたのは「木の根」だ。

・合わせて読みたい→大量絶滅には2750万年の周期があるという理論。 その原因は宇宙にある

 根は、成長するために土から栄養分を吸い上げ、枯れるときにそれを水中へと放出する。それが海から酸素が奪われる結末にいたったのだ。

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グリーンランド東部のイメール島。今回分析されたサンプルが採取された地の1つ / Credit: John Marshall, University of Southampton.

「リン濃度の周期」や「風化の痕跡」が手がかり

 この仮説の根拠は、既存の証拠と新たに見つかった証拠だ。

 米インディアナ大学などの研究チームは、グリーンランドスコットランド北東沖など、世界の湖底に残された古代の堆積物を分析し、「リンの濃度に周期」があることを発見した。リンは地球上のあらゆる生物に含まれる元素だ。

 また、根の成長によって生じる「風化」の痕跡から、「湿潤と乾燥の周期」も特定された。

 「風化が大きく進んでいれば、根がたくさん生えており、湿潤なサイクル」にあった、その反対に「風化が少ないほど、根が少なく、乾燥したサイクル」にあったと推測できる。

 そして、もっとも重要なのは、リンの濃度が高い時期が、乾燥サイクルと重なっていたことだ。研究チームによれば、この時期に根が枯れて、栄養分が海に放出されていた証拠であるという。

 つまり史上最古の木であるアルカエオプテリスが登場したのと同時に、リンの循環が生まれた。

 だとするなら、デボン紀の大量絶命の主要な原因は、木の根が進化し、それが腐敗したためであろうというのが、研究チームの結論だ。

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今日の海にもデボン紀と同じ脅威が迫っている

 なお、現在地上に生い茂っている樹木は、腐敗した木の影響を相殺するような仕組みを進化させている。

 さらに、薄っぺらく土が被さっていただけのデボン紀と違い、現代の土はもっとたくさんの栄養分を蓄えておける。

 そのため、今日では植物の根が枯れたとしても、デボン紀のような壊滅的な破壊は起きないという。

 しかし今回の研究で明らかになったプロセスは、海の生物が直面する新たな脅威を浮き彫りにしている。

 すなわち、肥料や糞尿といった有機廃棄物の汚染によって、海から酸素が奪い去られる恐れがあるということだ

 研究チームのガブリエル・フィリペッリ氏は、「古代世界で起きた破壊的な自然現象についての新たな洞察は、今日の人間活動によっても同様なことが起きるという警告かもしれません」と語っている。

References:The evolution of tree roots may have driven mass extinctions / written by hiroching / edited by / parumo

追記(2022/11/14)本文の誤字を訂正して再送します。

 
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デボン紀の大量絶滅は木の根の進化が原因かもしれない説