サバゲ―用装備に身を固め、実銃使用の最前線に移動中のロシア軍兵士(Twitterより)
サバゲ―用装備に身を固め、実銃使用の最前線に移動中のロシア軍兵士(Twitterより)

去る10月19日東スポWEBに『断末魔ロシア兵士がサバゲー用ベストで戦地へ 仲間内で盗みも横行』という記事が掲載された。その記事内にはロシア軍兵士の、「すごい防弾チョッキをもらいました。サバイバルゲーム用のペイントボールべストと、中国製アルミのヘルメットですよ」「武器はエアソフトガンだ」などの発言があった。

ならば、ということで、ウクライナ最前線のロシア軍と、千葉県北部で繰り広げられているサバゲーのプレイヤーたちとの装備を徹底比較してみよう。

【画像】千葉北部、サバゲー最前線の装備

東京・赤羽にある、ヘッドギアからフットウエアーまですべて揃う『プロギアショップ トルーパーズ』の山中克祥代表取締役に、この写真のロシア兵の装備を分析してもらった。

「どこの国で作られた製品かは分かりませんが、ウチが中古で買い取るならばベストが3000円、戦闘服が上下で2000円、帽子は500円です」

11月5日配信のAFPBB Newsでは、ロシア軍は「装備は自腹(後略)」とロシア市民に通達していることを報じている。兵士は自ら、もろもろ買い揃えるのだ。

「実際の戦闘に備えるための防弾装備は、ウチでは扱っていません。ロシア国内に無ければ、その他の装備は個人輸入でAmazonから買うとかになりますかね」(山中氏)

ロシア国内ではAmazonから直接買い物はできない。しかし、ロシア国外の友人に頼んで転送サービスを使えば、ロシアに商品を届けられるかもしれない。ただ、軍の装備に関しては圧倒的に米国製のものが高品質だが、さすがにロシアに直接、米国から輸出することは不可能だ。

では一方で、千葉北部、サバゲー最前線の戦況はどうだろうか? エアーガンショップ「U.T.J」の鳥海也寸志店長はこう言う。

「先日、千葉でサバゲーをしている日本在住のとあるロシア人に、『装備類は自ら整えてから来い』との指令とともに、ウクライナへの招集令状が届いたそうです。その準備費用として、その方が愛用していた中古エアガンをウチが3万円で引き取りました。

最前線に出撃するということで、泣きながら『本物のヘルメットはどこで手に入りますか?』と聞かれたのですが、ネットで調べて、としか答えられませんでしたね...」(鳥海氏)

ガチな話になってきてしまった。そのロシア人はおそらく、サバゲー用の被服装備と、ゲームでの戦闘経験だけを頼りに最前線に出撃するのだろう。せめて、被服装備だけでも揃えられないものなのだろうか...。

被服装備を整える
被服装備を整える

「狙い目は中国製です。かつて、中国製パチモン(複製・違法コピー品)は程度が悪かったですが、ここの所、凄まじい勢いでそのレベルが上がっています。

サバゲーの最前線でも、以前は米国の純正品にこだわりがありましたが、今は値段とその品質で中国製パチモンが人気です。戦闘服の上下で15000円、戦闘ベスト10000円が相場です。ヘルメットはサバゲーには必要ないですからね」(山中氏)

玩具銃を使用、千葉県北部サバゲ―戦線に出撃するCAT11 比嘉セリーナ。背負っているのはコンパーチブルMトランポットポートバッグ 10800円
玩具銃を使用、千葉県北部サバゲ―戦線に出撃するCAT11 比嘉セリーナ。背負っているのはコンパーチブルMトランポットポートバッグ 10800円

その中国製の"パチモン"は、米国製の純正品に比べてどの程度安いのだろうか?

「戦闘ベストだと、米国製ならば12万円ですが、中国製パチモンだと10000円です。ベルトの左腰に付けるロールアップダンプポーチは、米国製で推定12000円で、中国製パチモンが2400円です。背負っているコンパーチブルMトランポットポートバッグは、米国純正品だと推定50000円、中国製パチモン10800円です。手袋は米国製で4600円ですがパキスタンで作られています」(山中氏)

戦闘ベストはモジュラープレナーベストウルフブラウン、10800円。左腕のゲームマーカーは赤と黄色がある日本製1100円。マルチカム戦闘服上着とズボンで27800円。爆弾が頭上から降り注ぐ模様の帽子 ロープロファイルキャップシリーズ 『MAKE IT RAIN』 2400円
戦闘ベストはモジュラープレナーベストウルフブラウン10800円。左腕のゲームマーカーは赤と黄色がある日本製1100円。マルチカム戦闘服上着とズボンで27800円。爆弾が頭上から降り注ぐ模様の帽子 ロープロファイルキャップシリーズ 『MAKE IT RAIN』 2400円

玩具銃は東京マルイ ガスブローバックMK18 MOD1 68860円。ホロサイトタイプドットサイト 6060円。DILBAL-A2タイプLEDライト 20450円
玩具銃は東京マルイ ガスブローバックMK18 MOD1 68860円。ホロサイトタイプドットサイト 6060円。DILBAL-A2タイプLEDライト 20450円

ならばロシア市民は、アメリカが中国に委託して作っている、工場から横流しされる"米国製のパチモン"を購入すれば、それも相当安い。筆者はサバゲー用に最近、4000円の戦闘ブーツを購入したが、もちろんパチモンである。

「その値段ならば10回サバゲーで使用して壊れても元は取れます。ただ、動員されたロシア市民の方々におかれましては、足元の戦闘ブーツだけはブーツ専門メーカーのものをケチらないで買って下さい。当店ではオリジナルSWATのエアーナインタクティカル(23800円)がお勧めです」(山中氏)

プロの傭兵たちは必ず、ブーツにこだわる。歩けなくなれば、歩兵は終わりだからだ。

ロシア市民の狙い目は、米国が中国工場で作らせている装備の横流しですね。グレードは米国製並みと変わりません」(山中氏)

最後に、防弾装備はどうすればよい?

「ウチで防弾装備を扱っていないのは、そもそも需要が無いのと、その筋の方々が10万円の防弾チョッキをやたらと買いに来るようになったからです。どうしてもお買い求めになりたければ、『トカレフ対応』と責任を持って社名を表示している日本製の製品でしたらアフターサービスがありますよ」(山中氏)

"アフターサービス"でウクライナの最前線まで、日本の会社が来てくれるかは不明だが...。

サバゲ―戦闘中のCAT11 比嘉セリーナ。6mmBB弾はプラスチック製なので鉄製ヘルメットはいらない
サバゲ―戦闘中のCAT11 比嘉セリーナ。6mmBB弾はプラスチック製なので鉄製ヘルメットはいらない

なお、写真のCAT11の比嘉セリーナが持っているのは、東京マルイ新製品のガス作動の玩具。6mmBB弾しか出ない→即戦死するので、ロシア市民は買わない方がいい。

とにもかくにも、いち早く戦争が終結する事を強く願う。

サバゲ―ではBB弾が人体に命中すると、『ヒットー!!』とコールして両手を挙げて死体置き場に行く。なので、軍用弾用の防弾装備は必要としないのだ
サバゲ―ではBB弾が人体に命中すると、『ヒットー!!』とコールして両手を挙げて死体置き場に行く。なので、軍用弾用の防弾装備は必要としないのだ

(撮影協力・玩具銃提供/ホビーショップフロンティア | (frontier1.shop) 装備提供/プロギアショップ トルーパーズ (troopers1.com))

取材・文/小峯隆生 撮影/池田旬也 モデル/比嘉セリーナ(CAT11)

サバゲ―用装備に身を固め、実銃使用の最前線に移動中のロシア軍兵士(Twitterより)