フィギュアリペイントとは、アニメや漫画、ゲームなどのキャラクターを立体化させたフィギュアに色を塗り足して、世界にひとつだけのオリジナルフィギュアに仕上げること。フィギュアは今や専門店で購入するだけでなく、ゲームセンターガチャガチャ一番くじなどでも手に入る身近な存在になった。これに伴い、ただフィギュアを飾るだけではなく、ひと手間加えることでオリジナルのフィギュアを作る「リペイント」という新たな楽しみ方が注目を集めている。

【写真】YouTubeでは、制作風景も公開。数々の人気キャラクターのリペイントに挑戦している

そこで、フィギュア業界の注目人物のひとりであるMAマンさんに、リペイントの始め方を取材した。彼女は、自身が「3D二次元彩色」と呼ぶ、360度どこから見ても漫画やイラストのように見えるフィギュア塗装のテクニックで話題のペインター。チャンネル登録者数26万人(2022年11月時点)を超える人気YouTuberとしても活躍している。新しい趣味を探している人、アニメや漫画が好きだけど絵心に自信のない人、創作活動に憧れている人、自分だけのかっこいいフィギュアを作ってみたい人にはぜひとも挑戦してほしい。

■まずは筆と塗料さえあればOK!

――フィギュアのリペイントを始めるにあたって、何から準備をすればいいのでしょうか?

まずは、フィギュアリペイントに必要な道具から説明します。塗り方によって必要な道具は違いますが、私は主に「筆塗り」という手法を採用しています。筆を使ってフィギュアを塗っていくのです。この場合、最低限必要なものは筆と塗料。筆にはいろいろな種類がありますが、フィギュアを塗りやすい筆は面相筆です。私が初期からずっと愛用しているのはタミヤ モデリングブラシの面相筆・小。この1本だけである程度細かい作業もできますし、広い面積を塗ることもできる、汎用性の高いブラシです。どの筆がいいのか迷ったときは、面相筆の中でもなるべく小さいサイズをおすすめします。

次に塗料ですが、フィギュアを塗るのに向いているのは、いわゆる模型用の塗料です。ラッカー塗料、水溶性アクリル塗料などがあります。ラッカー塗料の場合は、水で薄めることができないので、専用のうすめ液の準備もお忘れなく。水溶性アクリル塗料の場合は水で薄められるので塗料の準備だけで大丈夫です。塗料は、ホビー専門店などで必要な色を選んで購入しましょう。塗料は塗料皿(パレット)に出して、ちょうどいい粘度に希釈してから塗っていきます。

■塗りやすいフィギュアの条件とは?

――どんなフィギュアでもリペイントできますか?

もちろんです。自分の好きな作品やキャラ、手元にあるものなど、塗りたいフィギュアを塗っていきましょう!参考までにお伝えすると、塗りやすいフィギュアのポイントは3つ。サイズと、形状と、色数です。

サイズは、片手で持てる程度のもので、全高20センチくらいのものが塗りやすいです。フィギュアが小さいと塗る作業が細かくなるので、筆塗りに慣れてから挑戦してみてください。形状は、重なりの少ないものがおすすめ。手足が重なっていたり、ステージ衣装のように小物がたくさん付いていたりすると、重なっている箇所が多いので塗りにくくなります。色数は、少ないと単純に塗料の数も少なくなります。服にたくさんの色が使われている、タトゥーが入っている、服や小物の模様が複雑なものは、色数が多くなるので、難易度が上がります。

ハイライトを入れるだけで二次元らしくなる

――初挑戦の人におすすめの塗り方を教えてください。

「3D二次元彩色」を目指すなら、まずはハイライトを入れるところから挑戦してはいかがでしょう?ハイライトは、フィギュアに光を当てたときに明るくなる場所に入れます。塗料は、もともとのフィギュアの色に白を混ぜたような、同系色の明るい色を選びましょう。太陽をイメージし、実際のフィギュアに光を当てて、明るくなった場所を塗っていきます。ハイライトを入れるだけでフィギュア全体の印象がパキッと引き締まり、二次元らしさが強調されます。

■色を変えるとオリジナル感が出る

――部分的にハイライトを入れるだけでも雰囲気がかなり変わりましたが、もっとパッと見てオリジナルであることがわかるようにしてみたいです。

それなら、色を変えてみてはどうでしょうか?洋服や髪など面積の広い部分の色を変えると、印象がまったく違って見えますよ。広い面積をムラなく塗るためにはちょっとしたコツが必要です。それは、面積を分割して塗ること。塗りつぶす面積の輪郭線を描いてから、中を塗っていきましょう。筆は一定方向に動かしたほうが、きれいに仕上がります。ボタンやポケットなどの細かい造形は、広い面積を塗り終わってから上塗りすると、はみだしなどの細かいミスを減らせるでしょう。

■輪郭線を入れるとイラストのように見える

――初心者でも、MAマンさんの作品のような絵が動いて見えるフィギュアにすることはできますか?

二次元らしく見せるための比較的簡単なテクニックを紹介しましょう。フィギュアに輪郭線を入れてみてください。輪郭線はイラスト特有の表現方法なので、フィギュアでもパッと見るとイラストのように錯覚させることができます。塗るフィギュアのイラストや漫画、アニメなどの資料を集めてチェックし、輪郭線を入れる場所を決めましょう。服やボタンなどを縁取りしたり、あご下に影を入れてフェイスラインを強調したり、鼻筋や口元に線を入れたり、完成イメージに合わせてどこに線を入れるのか決めていきます。塗料は黒を使うことが多いですが、グレーや濃い茶色などを使うのもアリ。黒よりも柔らかい印象に仕上がります。

■自宅でできる、クリエイティブな趣味

――最後に、リペイントのコツを教えてください。

最後まで塗りきって、完成させることですね。失敗したらどうしよう?と躊躇してしまう気持ちもあると思いますが、どんな作品でも完成させてみて初めて学べることがあります。それを、次の作品に生かしてください。自分の大好きなキャラクターを、自分だけのオリジナル作品に仕上げる興奮と喜びを、1人でも多くの方に感じていただきたいと願っています。

ペイントについての具体的な話を聞いてみると、意外と誰でも手軽に始められそうだ。始めるハードルは低いが、極めればMAマンさんのような作品を作れるため、趣味としての奥行きも十分。リペイントのステップアップを目指したい人は、MAマンさんの筆塗りテクニックをまとめた『筆一本からはじめる アニメ塗りフィギュアの教科書』や、YouTubeの動画を参考にしてみてはいかがだろうか。

取材・文=大川真由美

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元のフィギュアとリペイント後のビフォーアフター。色を変えたり、影やハイライトを入れたりすることで、オリジナルのフィギュアに仕上げる/(C)supercell/CFM