ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒット映画を原作に、ウーピー自身のプロデュースと巨匠アラン・メンケンの作曲によりロンドンで舞台化され、ブロードウェイにて改訂上演後の2014年に日本初演された『シスターアクト』。その後たびたび再演され、もはや日本ミュージカルの定番となりつつある同作が、11月13日より東急シアターオーブで上演されている。日頃のストレスを勢いよく吹き飛ばし、気持ちを無条件でアップリフトしてくれる作品だけに、コロナ禍に入ってから初の上演はまさに「待ってました!」というところだ。

殺人事件を目撃してしまったクラブ歌手のデロリスが、犯人に見つからないために身を寄せた修道院で聖歌隊の指導を任され、音痴のシスターたちを特訓するうちに友情が育まれていく――。本作のストーリー上の最大の魅力は、人種や宗教を越えて生まれるその友情にある。だがその尊さに何のてらいもなく素直に涙できるのはやはり、それまでの過程で私たちの心を解く“歌”の力があってこそ。デロリスに導かれて歌うことの愉しさを知っていくシスターたちの姿が、歌を浴びるというミュージカル鑑賞の快楽に目覚めていく私たち自身と重なり、音楽に、舞台に身を任せるための素地を整えてくれるのだ。

2019年以来2度目のデロリス役となる朝夏まなと(初演から務める森公美子とのWキャスト)は、その名の通り真夏の太陽のような明るさと軽妙な演技で2022年カンパニーを牽引。ドキッとするような下品な台詞も、彼女の手にかかれば面白さしかない。

ロリスのあけすけな語り口が映えるのはまた、常に厳格な修道院長と見事な対比をなしているからでもある。初演から修道院長役を務める鳳蘭の、厳格さの中におかしみがあふれる演技は、もはや芸術の域。デロリスを守るため奮闘する警察官、“汗かきエディ”役をやはり初演から演じ続けている石井一孝ともども、変わらぬ当たり役ぶりを見せつけた。

一方、デロリスを追い詰めるカーティス役の吉野圭吾(大澄賢也とWキャスト)、デロリスに憧れる見習い修道女シスター・メアリー・ロバート役の真彩希帆、オハラ神父役の太川陽介ら、新キャストもそれぞれに好演。デロリスにいち早く興味を示すシスターメアリーパトリックを初めて演じた谷口ゆうなの、これまでの同役の印象を覆すような若々しく好奇心いっぱいな役作りも印象に残る。カーティスの手下の3人組も、続投の泉見洋平とKENTAROに木内健人が加わったことで、また異なる味わいとハーモニーとなった。今後も新キャストによる新風を随時吹き込みながら、長く再演され続けてほしい作品だ。

取材・文:町田麻子 写真提供/東宝演劇部

ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』