唐突だが、皆さんは、好きな動物と言うと、いったい何を思い浮かべるだろうか。猫、犬、ウサギ、馬、キツネタヌキなどなど、動物の種類は多種多様であるがゆえに、当然、意見もさまざまに分かれることだろう。しかし、ゲーマーたるもの、決して忘れてはならない愛すべき動物がいるのである。それは、言わずもがな……“ヤギ”だ。というわけで今回は、そんなヤギが大活躍するカオスな作品「Goat Simulator 3」の先行プレイレビューをお届けする。

なお、本作は※PS5版Xbox版、Epic Games版が発売されているが、今回はEpic Games版でレビューを行った。あらかじめご留意いただきたい。

PS5パッケージ版は発売日は未定。

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ジャンプ、頭突き、自動車運転!? ヤギならではのカオスなアクションを楽しもう!


Goat Simulator 3」は、2014年に発売され、世界中のゲーマーをトリコにした人気作「Goat Simulator」の続編である。

“Goat”、すなわちヤギをシミュレーションできるゲーム、それが「Goat Simulator」なのだが、その続編がなぜ「2」を抜かしていきなり「3」になっているのかと言うと……そういうノリのゲームだから、としか言いようがない。大事なことなのでもう一度言っておこう。ずばり、本作は“そういうノリ”のゲームなのだ。というわけで本記事も、本作からあふれだす“そういうノリ”に近づけるような書き方をしていきたいと思っているので、その点はあらかじめご承知いただきたい。



本作でプレイヤーは、全ゲーマー憧れの動物である“ヤギ”を操作することとなる。「シミュレーター」という名を冠するだけあって、ヤギの見た目はかなりリアルだ。野性味あふれる毛並み、りりしいツノ、眠たそうな目、そしてダラリと口からはみ出した長い舌。どこからどう見ても、我々がよく知る最もオーソドックスなヤギの容姿である。異論は認めない



ちなみに、ヤギの容姿はカスタマイズが可能となっている。イカした帽子をかぶってみたり、イカしたブーツを履いてみたり、背中に何かを背負ってみたりと、変更可能な個所は複数あるため、自由度の高いカスタマイズが楽しめる。ヤギ自体のスキンも変更することができ、黄色でまだら模様の首が長いキリンのようなヤギや、ピンク色でふっくらとした体型が特徴的なブタのようなヤギになることだって可能だ。念のため言っておくが、これらはこう見えてあくまでも“ヤギ”なのであしからず。ヤギの世界は、我々人間が想像しているよりもはるかに多様なのである。



本作「Goat Simulator 3」では、そんなヤギを操作して、巨大な島「サン・アンゴラ島」を駆け回ることとなる。ヤギの容姿のみならず、ヤギが繰り出す各種アクションも、シミュレーターというだけあって非常にリアルな作りとなっている。

まずは「ジャンプ」だ。これは言わずもがな、ヤギならではの健脚を使ってピョンと跳躍するアクション。着地寸前からタイミングよくジャンプボタンを押すと、連続ジャンプがキメられる「トリプルジャンプ」や、ジャンプ中にクルッと空中回転できる「トリック」といった華麗なジャンプアクションも、リアルなヤギの挙動をきわめて忠実に再現していると言えるだろう。



続いて「なめる」。これは、ボタンを押すことで舌を伸ばし、目の前にあるものをなめるというアクションだ。なめられた対象は、舌にピッタリとくっついてしまう。言うなればこれは、舌で「なめる」というよりも舌で「つかむ」といったアクションである。物体であっても人間であっても、一度舌につかまれてしまうと、ヤギが舌を離すまで、なす術なくヤギにブンブンと振り回されることとなる。プレイヤーはこの「なめる」アクションを用いて、物を運んだり、水に溺れた人間を救出したりといったさまざまな行動が可能。人間の手をはるかに超える万能さを持った舌のアクションに、モニターの前のプレイヤーのみならず、全人類が震え上がることとなるだろう。



我々がよく見かけるヤギの一般的な行動として忘れてならないのは……そう、「頭突き」である。本作では、ボタンひとつ押すだけで、ヤギは前方のオブジェクトに対して強力な頭突きを放つことができる。ヤギが繰り出すパワフルな頭突きを受けたら最後、物であろうが人であろうが、問答無用でふっとばされる。世界を破壊し、混沌の渦に巻き込むためには「頭突き」はなくてはならないアクションとなっている。とにかく、なんでもかんでも手当たり次第になめて、頭突きをしてみるというのが「Goat Simulator 3」の世界で生きていくうえでの常識なのである。



そのほかにも、壁面を駆け上ることができる「ウォールランニング」や、送電線や金属フェンスの上をスケボーのように滑走できる「グラインド」、そのあたりに転がる車に乗り込んで(または、人間が運転する車を奪い取って)自由に走り回れる「運転」など、本作には“ヤギらしさあふれるアクション”がてんこ盛りだ。

特に、電線の上をシャーッと勢いよく滑走する「グラインド」は必見。電柱によじ登り、電線の上をさっそうとヤギが滑っていく様子は、まあこの地球上で暮らしている人間ならば誰しも一度は見かけたことがあるごくごく日常的な光景だと思うが、それにしても改めてゲームで見るとすさまじいインパクトである。



これらのアクションは、広大なオープンワールドをストレスなく冒険するために必要不可欠なアクションとなっているが、自動車を運転しているときばかりは、「今、なんのゲームをやってるんだっけ……?」と不安になってしまうかもしれないので、プレイヤーはどうか自分を見失わないようにご注意いただきたい。これは、誰がなんと言おうとも、ヤギをシミュレーションするゲームなのである。



イベントやミッションが盛りだくさんの巨大なオープンワールドを自由自在に駆け回れ!


本作の舞台となるのは、巨大な箱庭的オープンワールドの「サン・アンゴラ島」だ。プレイヤーはこの広大なフィールドで、何をするのも自由である。道行く人間たちにとにかく頭突きをかましまくるもよし、奪った車で気ままにドライブを楽しむもよし。さながら野生のヤギのごとく、とにかくなんでも思うままに好き勝手に生きていく、というのが本作の基本となるゲームシステムなのだ。



とは言え、いざ広大なオープンワールドに放り出されて「なんでも好きなようにどうぞ」と言われると、何をしたらいいかわからなくなってしまうという人も多いだろう。本作ではそんなプレイヤーに向けて、わかりやすい目的や、イベントクエスト、ミッションなどが多数用意されている。

その代表的なものが「ゴートタワー」だ。これは、サン・アンゴラ島の各所に存在する、塔状の建造物である。プレイヤーであるヤギは、このゴートタワーを発見してシンクロを行うことで、マップ上に新たな情報を開示していくことができる。マップで見える範囲が広がると冒険が格段にスムーズになるので、サン・アンゴラ島に降り立ったら、まずはこのゴートタワーの全解放を目指すのがオススメだ。ちなみに、「シンクロ」というのはいったいなんなのか、そしてなぜヤギにそんなことができるのかは……不明である。ヤギは、我々人間が思っている以上に超常的な存在だということだろう(たぶん)。



ゴートタワーから入ることができるヤギたちの秘密結社、イルミナティの巣である「ゴートキャッスル」は、プレイヤーの活動拠点となる場所である。イベントをクリアしたり、ゴートタワーとシンクロすることで入手できるイルミナティポイントを集めて、イルミナティランクを上げると、ゴートタワーで報酬を獲得できる仕組みになっている。イルミナティランクが上がると、ゴートタワーの奥にたたずむ物々しい扉の封印が少しずつ解かれていくのだが、はたしてその先には何があるのか……。この“扉”の存在は、本作をプレイするうえでの大きなモチベーションとなるだろう。



「イベント」は、世界を探索していると発見できるクエストのことだ。
イベントをクリアすることで、カスタマイズアイテムの解放などに利用できる「カルマ」というポイントや、先述のイルミナティポイント、ヤギ装備などを獲得できるので、見つけたら積極的にこなしていきたいところ。

しかし、イベントクエストはほとんどの場合、ヒントの解読も含めてやや頭を使うようなものが多く、そう簡単にはクリアできない作りとなっている。
たとえば「料理教室」というクエストでは、「味覚が導くままに」というヒントになっていたり、「モグラたたき」というクエストのヒントは「読んだままです」と書かれていたりといった具合。イベントが発生した周辺をくまなく探索しつつ、ヒントと照らし合わせながら目的を探し、「これだ!」と思うアクションを起こすというこの独特のクエストシステムは、間違いなく本作の醍醐味のひとつと言えるだろう。



上述のイベントクエストのほかに、「衝動的ミッション」と呼ばれるものもある。これは、「トリプルジャンプをキメよう」「トランポリンの上で10回跳ねよう」などのような、特定のアクションを行うことでクリアするタイプのミッションだ。イベントクエストとは異なり、どの場所でこなしてもいいというのが特徴で、ヤギのアクションを覚えるのにも最適となっている。なかには「誰かを1分間なめつづけよう」「水で体についた火を消そう」といった奇妙でぶっとんだミッションもあるので、本作のカオスな世界観を楽しみながら着実に達成していこう。



残念ながら今回の先行プレイでは体験することができなかったが、本作にはマルチプレイが備わっている。オフラインおよびオンラインにて、最大4人……もとい、最大4匹のヤギで協力プレイを楽しむことが可能だ。皆で群れをなして島を隅々まで冒険したり、頭突きやなめ回しで世界を破壊して回ったりと、ソロプレイ時より何倍もクレイジーでハチャメチャなプレイを楽しめることだろう。さらに、マルチプレイ時にしか楽しめないミニゲームも各地に存在しているので、ぜひ気の合う友人と一緒にプレイしたいところだ。


ココがスゴい!「Goat Simulator 3」の筆者的推しポイントを紹介


さて、ここからは、本作における「筆者的推しポイント」を紹介していこう。


1.作り込まれた圧倒的なおバカ要素の数々

ここまでの紹介を読んだ方ならもうとっくにおわかりのことだとは思うが、本作は非常に「おバカ」なゲームである。


舌で人間をつかんだり、電線を滑走したりといったヤギの各種アクションはもちろん、背中にお寿司を背負ったり、足にトイレットペーパーを履いたり……といったカスタマイズスキンや、暴れまわるヤギに怯える人々が吐くセリフの数々、ヘルプ内の文章の若干投げやり気味でテキトーなノリもなにもかも、とにかくゲーム中に存在するありとあらゆる要素におバカっぷりが仕込まれているのだ。

そもそもゲームのタイトルだって、2を飛ばしていきなり3である。古今東西、ゲーム界に “バカゲー”と呼ばれる作品は数あれど、本作ほどゲーム全体に渡って全力で「おバカ」をやっているゲームはないのではないだろうかと筆者は感じる。



ゲームらしくイベントクエストやミッションをこなしていくもよし、目的なく世界を走り回って衝動のままに破壊のかぎりを尽くすもよしの本作だが、丹念に作り込まれたおバカ要素の数々を、まったりとお酒でも飲みながら堪能して、クスッと笑って明るい気持ちになる……なんて遊び方こそ、本作の理想的なプレイスタイルなのかもしれない。また、ちょっとイヤなことがあった日や、仕事疲れ、大作ゲームのプレイに疲れてしまったときの気分転換にも、いい意味で頭を使わない、おバカでお気楽な本作のムードは最適だろう。そういう意味では、ゲーマーなら一家に1本常備しておいて損のないタイトルだと言えるかもしれない。



2、ガッツリ遊べる充実のやり込み要素

とにかく底抜けにおバカで破天荒な本作だが、自由すぎるがゆえにゲームとしての面白さを失っているのかと言うとそうではなく、クエストやミッションに代表されるような“ゲームらしさ”もしっかり抜かりなく用意されている点は注目したいポイントだ。特に本作は、やり込み要素が非常に充実している。

そのひとつが、「小像」だ。これはマップのあちこちに散らばっている小さな像で、思いもよらない場所や一見たどり着けないように見える場所に隠されていることもある。すべてを集めるためには、頭脳とアクションテクニックを駆使する必要があり、ゆるいゲーム性が一気に“オープンワールドアクションアドベンチャーゲーム”へと変化することとなる。「ダラダラ遊びたい派もガッツリ遊びたい派も、この1本でまとめて面倒を見る」というこの懐の深さも、本作の大きな魅力なのだ。



やり込み要素のひとつであるバラエティ豊かなカスタマイズアイテムも魅力的だ。背中に優雅なティーセットを背負わせるスキンや、足に真っ赤なハイヒールを履かせるスキン、体を牛柄やシマウマ柄にしてしまうスキンなど、ひたすらバカバカしく奇妙なものがてんこ盛りとなっており、本作のクレイジーな世界観により没入するために、ついついたくさんのスキンが欲しくなってしまうこと必至なのだ。カルマポイントで購入できるものだけではなく、ワールド内で発見することでしか獲得できないスキンもあるため、探索もはかどるというものだ。

さらに、光り輝く「天界の翼」なら空中を飛べるようになったり、背中に装着する「花火ランチャー」なら通行人たちに花火を発射できたりなど、特殊な「装備アビリティ」が備わったカスタマイズアイテムも多数存在すると聞いたら、是が非でもすべて集めたくなるだろう。とにもかくにも本作は、やり込み始めると深すぎる沼にハマってしまう、危険な魅力に満ちたゲームなのである。



カオスと完成度の奇跡の融合、それが「Goat Simulator 3」だ!


というわけで、「Goat Simulator 3」の先行プレイレビューをお届けした。


本作はとにかくひたすらに、おバカでカオスなユーモアたっぷりのゲームである。しかし、だからといってゲームとして成立していないわけではなく、むしろ遊びごたえたっぷりの充実した作品に仕上がっている。「自由でカオス」と「高い完成度」が両立する奇跡のような本作、気になった方はぜひ実際にプレイして、ヤギとなって世界で大暴れしてみてほしい。

筆者:百壁ネロ
ゲーム買いすぎちゃう系フリーライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「ゆびさき怪談 一四〇字の怖い話」(PHP研究所)、「ごあけん アンレイテッド・エディション」(講談社)など。
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カオスすぎる“ヤギゲー”待望の続編、ついに降臨!「Goat Simulator 3」先行プレイレビュー