2022年もあと1ヵ月半を切りました。サラリーマンの方はそろそろ職場で年末調整の用紙が配られます。年末調整は払いすぎた税金が返ってくる手続ですので、申告漏れがないようにしたいものです。そこで本記事では、年末調整で勘違いや思い込みでつい申告漏れをしがちな「所得控除」についてお伝えします。

年末調整とは

年末調整とは、「源泉徴収された税金の1年間の合計額」と「本来の税金の額」とを一致させる精算の手続です。

対象となるのは、給与所得者で年間の給与収入額が2,000万円以内の人です。以下の書類を勤務先に提出する必要があります。

・扶養控除等申告書

・基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

・保険料控除申告書

・住宅借入金等特別控除申告書

これらのうち「住宅借入金等特別控除申告書」以外の用紙は勤務先で配布されます。

年末調整においては、多くの場合、払いすぎた税金が返ってきます。しかし、申告しないと返ってきません。税金を払う場合も、払いすぎた税金を取り戻す場合も、いずれも「申告漏れ」は避けたいものです。

勘違いで「申告漏れ」しがちな5つの所得控除とは

所得控除は全部で以下の15種類です。

・雑損控除

・医療費控除(セルフメディケーション税制を含む)

社会保険料控除

・小規模企業共済等掛金控除

生命保険料控除

・地震保険料控除

・寄附金控除

・障害者控除

・ひとり親控除・寡婦控除

・勤労学生控除

・配偶者控除・配偶者特別控除

・扶養控除

・基礎控除

これらのうち、誤解や思い込み等によって特に申告漏れが起きやすいとみられるものを選んで解説します。

◆医療費控除(通常)

医療費控除は、通常の医療費控除と「セルフメディケーション税制」の2種類があります。

通常の医療費控除は、その年度の医療費が10万円を超えた場合にその超過額について所得控除を受けられるものです。対象となるのは、以下の費用です。

・医師等による診療・治療のために支払った費用

・治療や療養に必要な医薬品の購入費用

要注意なのが、日常用語の「医療費」とは異なり、治療のために必要なものは広く含まれるということです。

特に申告漏れになりやすいのが、以下の2種類です。

・医療機関へ行く際の交通費

・コロナ禍関係の医療費等の支出

まず、医療機関へ行く際にかかった交通費は、「医師等による診療・治療のため支払った費用」といえるので、医療費控除の対象となります。通院のついでに買い物等に行った場合も除外される理由はありません。

次に、コロナ禍関係の医療費としては、以下のものが考えられます。

PCR検査の費用

・オンライン診療を受けた場合の費用

PCR検査の費用は、医師等の指示によって受けた場合は「医師等による診療・治療のため支払った費用」にあたり、医療費控除の対象となります。

ただし、自己判断でPCR検査を受けた場合でも、それによって陽性であることが判明して医師の治療を受けたのであれば医療費控除の対象となります。なぜなら、実質的に「医師等による診療・治療のため支払った費用」と同視できるからです。

また、オンライン診療を受けた場合は、対面で治療を受けるよりも余計にかかる以下の費用が医療費控除の対象となります。

・オンライン診療料

・オンラインシステム利用料

・処方された医薬品の購入費用

ただし、処方された医薬品を配送してもらうのにかかる配送料は対象外です。なぜなら、「医師等による診療・治療のため支払った費用」とはいえないからです。

◆セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制は医療費控除の一種で、厚生労働省が指定する一定の条件をみたす市販の医薬品について、年間の購入金額が12,000円を超えた場合に、その超過額の所得控除が認められるものです。

セルフメディケーション税制の対象となるかどうかは、その医薬品のパッケージに記載されている共通のロゴ、または購入時のレシートの印を見ればわかります。湿布や栄養ドリンク等でも、対象となるものがあります。

なお、セルフメディケーション税制を利用する場合には、通常の医療費控除は利用できません。

生命保険料控除

生命保険料控除は、生命保険や医療系の保険等の保険料を支払ったら、その一部について所得控除を受けられるものです。以下の3種類があります。

・一般生命保険料控除:生命保険(死亡保険)一般が対象

・介護医療保険料控除:医療保険、がん保険、働けなくなったときの保険等が対象

・個人年金保険料控除:個人年金保険が対象

保険会社から送られてくる「控除証明書」を「保険料控除申告書」に添付すればよいのですが、ありがちなのが以下のようなケースです。

生命保険についている入院・手術等の特約について申告を忘れるケース

・控除証明書を紛失してしまい、めんどうになって申告しないケース

まず、生命保険に入院・手術の特約が付いている場合、その特約が生命保険の主契約とは別に「介護医療保険料控除」の対象となります。忘れずに申告してください。

次に、控除証明書を紛失してしまったケースについては、保険会社にその旨を伝えれば再発行してくれますので、めんどうくさがらずにぜひ再発行を受けてください。

◆地震保険料控除

地震保険料控除は、その年度中に地震保険の保険料を支払ったら、保険料の全額または一部について所得控除を受けられるものです。

地震保険は単体では加入できず、火災保険に「地震危険補償特約」を付けるという形でしか加入できません。したがって、火災保険に新規加入または更新した場合、地震保険に入っていることを自覚せず申告漏れになってしまうケースがあります。

思い当たる場合は、火災保険の契約内容を確認してみることをおすすめします。

◆ひとり親控除・寡婦控除

ひとり親控除とは、「ひとり親」が35万円の所得控除を受けられる制度です。「ひとり親」でありさえすれば、婚姻歴の有無にかかわらず受けられるので、特に、婚姻歴のないシングルマザー・シングルファザーは、忘れずに申告してください。

少し前までは「寡婦控除」「寡夫控除」として、婚姻歴のあるシングルマザー・シングルファザーしか控除を受けられませんでした。しかし、それではおかしいということで、2020年から「ひとり親控除」に統合され、婚姻歴の有無は関係なくなりました。

なお、「寡婦控除」は、婚姻歴のある女性が子ども以外の親族を扶養するケースを想定した制度として存続することになりました。

「ひとり親控除」は、以下の要件をみたせば35万円を受け取ることができます。

・婚姻をしていない、あるいは配偶者の生死が不明

・生計を同じくする子がいる

・子の所得の合計額が48万円以下

・自身の合計所得金額が500万円以下

・事実婚状態にない

過去の申告漏れも5年前まで遡って還付を受けられる

ここまでご覧になって、過去の申告漏れに気付いた方がいらっしゃるかもしれません。その場合でも、「更正の請求書」作成して税務署に提出すれば、過去5年前まで遡って還付を受けることができます。

「更正の請求書」は、国税庁HPで簡単に作成できます。ただし、証明のための資料は必要です。紛失してしまった場合には再発行を受けるなどして揃えることになります。

あとは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)で電子申告するか、プリントアウトして税務署に郵送するだけです。

(※画像はイメージです/PIXTA)