論理的に考えるクセが身につき、論理的な結論に基づいた行動ができれば、あらゆる問題は最短距離で解決していきます。そんな問題解決力を誰でもやさしく身につけられるように「ペヤングソースやきそば」を題材にして学んでいきます。IT&キャリアコンサルタントの谷藤賢一氏が著書『ペヤングソースやきそばで学ぶ問題解決力』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

論理的思考ってなんだろう?

■小難しい話はひとまず横に

論理的思考って何でしょうか?

ちょっと調べると××法やら、△△モデルやら、ナニやら難しい説明がたくさん出てきます。小難しい話はひとまず横に置きますね。

超簡単に言えば、論理的思考とは「きちんと筋道が通っている考え方」のことです。

論理的思考はあらゆるところで使えます。

ビジネスの進め方に、システムの設計に、遊びのプランに、料理に、車の修理に、毎日の通勤に、人間関係に、人生のすべてに。

■なぜ論理的思考を学ぶ必要があるのか?

あなたの周りは論理的ですか? つまり「きちんと筋道が通って」いますか? 会社はどうですか? プライベートはどうですか?

日本は戦後の復興期からバブルの頃まで、数十年にわたり、根性論や精神論が幅を利かせていました。それでうまくいったのです。

でも、それではうまくいかなくなって久しいですね。筋道がきちんと通っていないとうまくいかないことが多くなりました。

にもかかわらず、相変わらず子どもは無理やりお受験させられ、会社ではストレスの原因が蔓延し、街中では理不尽にキレる大人が事件を起こしています。

論理的思考を学ぶということは、これら非論理的な行動と決別し、幸せに生きることなのです。

でも難しいことをお勉強したいほど、あなたは暇ではないですよね。

私も面倒なことはキライです。

幸せに生きるために、シンプルにわかりやすく、いっしょに学んでいきましょう。

■「そもそも論」から始まる論理的思考

会議室で延々続く枝葉末節なダラダラ議論。

シビレを切らして「あの~、そもそもなんですけど……」と切り出すと、「話を蒸し返すな!」と一喝されたことはありませんか?

数学の授業。

「先生、そもそもなんでx とyなんですか? QとかJとかじゃダメですか?」と先生に質問なんかしたら、「余計なことは考えなくていい。公式どおり覚えなさい!」と注意されるかもしれません。

論理的な人は、物事を突き詰めて考えるより強引に押し通しがちです。そうした非論理的な力に対処するのに有効なのが、問題の論点を「そもそも」と考えることです。「そもそも」は彼らの押し通す力に真っ向勝負を仕掛ける最強のテクニックです。

押し通す力に勝った先には、筋道が開けます。そこにはステキな論理的な世界が広がっているのです。

だから実行することが簡単な「そもそも論」から論理的思考を学んでいきましょう。△△法などの難しい論理思考メソッドを覚えるよりもそのほうが早いのです。

さて、そもそも何をテーマに、どうやって論理的思考を学んでいったらいいのでしょうか?

それが「ペヤングソースやきそば」です。ペヤング論理的思考をわかりやすく説明してくれます。

さあ、3人の登場人物がペヤングを巡ってワクワクする論理的思考を繰り広げますよ。

お昼にカップやきそばが食べたい!

ランチタイムになりました 現在時刻 12:00:00

露地くん「午前の仕事終わり! あ~、腹へった。なんかソース味ガッツリでウマそうなの、むさぼるように食べたいな~。」

井ノ辺さん「ソース味って、聞いただけでお腹すいた! ソース味のおいしいのがいい♪」

出来内くん「そうですね。自分もソース味のおいしいのが食べたくなりました。カップやきそば買い置きがありますよ。」

露地くん「お~、それだ! そもそもそれってどこのヤツ?」

出来内くん「『ほくほくやきそば』って書いてあります。プライベートブランドですね。自分、昨日食べました。」

露地くん「どう、おいしかった?」

出来内くん「ん~、いまいちですね。やっぱり有名ブランドには勝てませんよ。」

露地くん「やっぱここはペヤングでしょ! なぜなら歴史と安定感が違うからね~。」

井ノ辺さん「揚げ玉ファイヤーやきそばUSOも捨てがたいわよ。」

露地くん「いいねそれ! ってことはマヨレーザーの三平ちゃんもありか。マヨネーズとソースが合うって発見だよね~。それと製麺方法がさぁ、……」

出来内くん「だからほくほくやきそばがあるでしょ? あるんだから我慢しましょうよ。常識でしょ。」

露地くん・井ノ辺さん「も~、しらけるな~」

■すでに論理的思考は発動された

3人がランチタイムでのカップやきそばの話をしていますね。すでに論理的思考が発動されたことにお気づきでしょうか?

[ソース味の何かおいしいのが食べたい][おいしくないけどカップやきそばはすでに買い置きがある]

買い置きがあるならそれを食べればいいのでは、という出来内くんの意見はともすると論理的なような気がします。だって、すでに買い置きがあるんですから。しかしこれが論理的とは言い切れないのです。

なぜか?

「おいしいのがいい」という希望を満たしていないからです。全員「おいしいソース味の何か」が食べたいのです。

露地くんは「そもそも、買い置きのカップやきそばはおいしいのか?」を問うことで、「買い置きがすでにあるからいいじゃん」という押し通す力に対抗したのです。

これが論理的思考の入り口です。おいしさも妥協しない最適解を探ろうとしているのです。そうすることで、議論などの落とし所を見つけられるのです。

このように、論理的思考はそもそも論を使って、押し通す力に対抗していくところから始まります。

対照的に出来内くんは、現状だけで解決させようする妥協案を「常識でしょ」と言いながら押し通そうとしています。

ここが露地くんと出来内くんの決定的な違いなのです。

この発想の違いがあるがために、二者ではまったく異なる案が出てくるのです。

露地くん「おいしいソース味の何かが食べたい」の最適解を追求していく姿勢。

出来内くん「すでに買い置きがあるのだから我慢して食べればいい」という妥協する姿勢。

あなただったらどちらですか?

さあ、ここを紐解いていきましょう。

ステージが違えば話はかみ合わない!

■登場人物とステージをイメージする

論理的思考をするためには、登場人物をイメージします。

「さっき登場した3人のことですよね?」

いいえ、それだけではありません。ここでいう登場人物とは「物」も含みます。「ほくほくやきそば」「ペヤング」「USO」「三平ちゃん」がそうです。

これらの登場人物が、ステージに乗っている絵を強くイメージしてください。ステージとは、登場人物を仲間分けする土台のようなものです。

次の図を見てください。

カップやきそばという土台がありますね。そこに登場人物が乗っています。登場人物はすべて「カップやきそば」です。カップラーメンやおにぎりはカップやきそばではないので、カップやきそばの土台に乗ることはありません。乗ることができるのはカップやきそばだけです。

この土台を連載では「ステージ」と呼ぶことにします。それと、ステージにはステージを乗せることもできます。ステージの上にステージが乗るのです。

次のような図です。

わかりますか?

同じカップやきそばでも、「おいしい」ステージと、「おいしくない」ステージがあるわけです。

ちなみに上記の図1-2は露地くん&井ノ辺さんの発想です。では出来内くんの頭の中ではどんな図になっているのでしょう?

それはこうです。

ステージの構成が異なるのです。出来内くんの頭の中は、カップやきそばステージの上に「買い置きあり」ステージと「買い置きなし」ステージが乗っています。

だから双方の主張はまったく異なってしまうのです。ステージの構成が異なる人同士は議論が平行線になります。

コミュニケーションにおいて、ステージはとても大切で、同じステージ構成を描いている人同士はどんどん話が進んでいきます。異なるステージ構成を描いている人同士では話が平行線、もしくは堂々巡りになります。

あなたも会議などで経験ないですか?

「何でこんな簡単なことがわからないんだよ!」「何言ってるのか意味がわからないですよ~」と、お互いに言い合っているケース。お互い理解がないのではなくて、ステージ構成が違うだけなのです。

次回からいくつか例を見てみましょう。

谷藤 賢一 株式会社C60代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)