ナイル川のほとりにある古代都市で長い眠りについていた女性のミイラ2体に、タトゥー見つかった。3000年前から臀部にタトゥーが彫られていたのだ。
最近になって、専門家がミイラの腰に黒いしみのような部分があるのに気がつき、その解読が試みられた。
【画像】 古代エジプトの女性のミイラ2体の臀部にタトゥーを発見●
1体目のミイラのは、およそ1世紀前にデール・エル=メディーナ遺跡から発掘されたものだ。最近になって、専門家が彼女の腰に黒いしみのような部分があるのに気がついた。
臀部のすぐ上に施されたタトゥーには、当時の墓の天井に見られた模様に似た、菱形の帯があった。
デール・エル=メディーナ遺跡から発掘された女性のミイラの遺体の臀部上に見られるタトゥー。黒で示された皮膚にまだ線が見える / image credit:A. Austin
2番目の女性ミイラは同じデール・エル=メディーナ遺跡で2019年に発見された。彼女の腰のタトゥーは赤外線カメラで初めて確認できた。
左右対称の模様は、ほかのミイラとは少し異なり、水らしき模様と、植物のラインが特徴的だ。
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2体目のミイラ。赤外線カメラを利用してタトゥーの模様を復元 / image credit:A. Austin
妊娠中に気分を落ち着かせるためのおまじないだった可能性
専門家によると、これらはナイル川の岸辺を表している可能性があり、女性たちが妊娠中あるいは月経中に、自分を落ち着かせるためのものではないかという。
描かれているシーンは、癒し、幸福、守護を象徴するエジプトの神ホルスを表す目に守られている。
古代エジプトではタトゥーに癒しの力を求めていた
こうしたタトゥーが見つかったのは、この女性たちのミイラが初めてではない。
初めてタトゥーが入ったミイラがエジプトで発見されたのは、1891年のこと。それから数十年の間に、デール・エル=メディーナだけで、この2体を含む7体が見つかっている。
これらのミイラの中には、腰だけでなく、首や臀部にもタトゥーが入ったものもあった。
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20世紀になって見つかったミイラの臀部には、安産の守護神ベースに似た像が彫られていた。
これらミイラのタトゥーは、腰や臀部に入っていることが多く、その意味は生殖に関係している可能性を示している。
腰にタトゥーが入ったミイラとその赤外線写真 / image credit:A. Austin
この時代の女性の体を表現した像でも、胴回りになんらかの装飾が施されている例があるが、それらがタトゥーなのかどうかははっきりしない。
急性の腰痛は、陣痛を伴うことが多く、月経である場合もあるという。
腰のタトゥーはおそらく、女性がさまざまな痛みから身を守る方法として、登場したと推測されている。
ナイル川沿いの湿地は、女性たちが妊娠や月経の間、過ごす癒しの場所だったのかもしれない。
古代エジプトの女性たちは行く先々で、癒しの力をもたらすために、腰という聖域にタトゥーを入れた可能性がある。
だが、こうした解釈ではどこでも通用する偏在性を考えることが重要だという。
なぜ一部の女性ミイラにだけタトゥーがあるのか?
タトゥーが、妊娠や出産を確実に成功させるためのもの、あるいは当の女性の痛みを避けるためのものなら、これらタトゥーはもっとたくさん見つかるはずだという。
しかし、エジプトで見つかったすべての成人女性のミイラに同じようなタトゥーがあるわけではない。
なにも入っていない皮膚がむき出しのミイラもあれば、30以上のタトゥーが重ねられているミイラもある。
研究者は、その理由について仮説をたてることしかできない。
助産婦のように出産に関わる女性だけが、こうしたタトゥーを入れていたのかもしれない。あるいは、女神崇拝のメンバーであることを示すものだったのかもしれない。
いずれにせよ、これらタトゥーは何らかの意味があったと思われる。
この研究は『The Journal of Egyptian Archaeology』誌に発表された。
References:We May Have Decoded a Sacred Motif in Ancient Egyptian Mummy Tattoos : ScienceAlert / written by konohazuku / edited by / parumo
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