「小さな子どもには重い」「価格が高い」と指摘されるランドセルに代わる、通学用バックパック「わんパック」を、アウトドア用品大手のモンベル(大阪市西区)が開発し、12月から販売します(11月1日から予約を受け付け中)。登山用品などのノウハウを生かしつつ、子どもたちのことを考えて作られた製品の開発経緯について、モンベルに聞きました。

軽さと耐久性のバランスに留意

「わんパック」は、高さ35センチ、幅25センチ、奥行き16.5センチで、14インチまでのノートパソコンタブレットも収納可能。重さは930グラムと一般的なランドセルより軽くなっています。色は3色(ブルーグリーン、ブラウン、ワインレッド)あり、価格は1万4850円(税込み)です。

 モンベル広報部の大塚孝頼さんに聞きました。

Q.わんパックの開発経緯を教えてください。

大塚さん「元々は、富山県立山町からの依頼を受けて開発した製品です。当社は2017年10月、立山町と包括連携協定を結んでおり、協定の『7つの取り組み』の一つに、『子どもたちの生き抜いていく力の育成に関わること』があります。

そんな中、立山町から、『ランドセルが年々高額になり、ご家庭の負担になっている。タブレットや教材が増えて、背負う荷物も重くなっている。もっと機能的で軽く、経済的に負担にならないものを、町から子どもたちに贈りたい』との要望がありました。

立山町の公募を受け、試作品を作り、2021年7月、『わんパック』を発表しました」

Q.12月から一般販売を始めるそうですが、その経緯も教えてください。

大塚さん「2021年7月に試作品の発表会を開いたところ、メディアに取り上げられました。それを見た一般のお客さまから『立山町に行かないと買えないのでしょうか?』『ぜひ販売してほしい』といった問い合わせや要望が多数あり、一般販売することになりました」

Q.開発にあたって、留意した点を教えてください。

大塚さん「特に留意したのは、『軽さ』と『耐久性』のバランスです。当社のアウトドア用品の開発コンセプトの一つに『Light&Fast(軽量と迅速)』があります。登山では、背負う装備が軽いことが速さにつながり、危険な局面を早く抜けられ、それによって、安全に帰ってくることができます。ただし、ひたすら軽いだけでは、すぐに破れてしまい、製品として成り立ちません。用途に応じた強度と耐久性は必須です。

そのノウハウを子どもたち用の製品に生かしました。ほぼ毎日使っても壊れない、その上で軽量、さらに子どもたちが使いやすいバックパックです。

素材からこだわりました。採用しているのは、840デニールの軽量で頑丈なナイロンです。『デニール』は、糸の太さの単位で、数字が大きいほど強くて太くなります。素材の張りやコシも必要です。素材自体に張りやコシがないと、机に置いた時に、へたってしまいます。子どもたちが教科書を入れやすいようにデザインしています。

雨の日の通学でも使うものですので、表面にポリウレタンのラミネート加工をしており、水ぬれにも強くなっています」

Q.小学生の通学用に適したポイントも聞かせてください。

大塚さん「小学1年生と5、6年生では、体形が違います。ベルトの付け根部分は、フレキシブルに左右に動くようにしており、体格に合わせてフィットしやすく調整できるようにしています。背負い心地がよいと、荷物を重く感じにくくなります。これは登山用バックパック開発のノウハウを取り入れた機能です。

学校教材の一つとなったノートパソコンタブレットの収納スペースも設けており、背中に一番近い部分に収めるようにしています。『重いものは体に近い所に背負う』というのは、登山のセオリーで、体への負担を少なくしました。

そのほか特徴的なのは、上部のジッパーです。2つのジッパーが連動して、ワンアクションで開くことができます。教科書が簡単に出し入れできるようにしたのは、小学1年生も日常的に使うことを想定しての機能です」

Q.京都にも「ランリック」という通学用リュックサックがあります。わんパックなど、ランドセル以外の通学用かばんは、今後も広がっていくのでしょうか。

大塚さん「私たちは、従来のランドセルを否定しているわけではありません。おじいちゃんおばあちゃんからお孫さんにランドセルを贈る、といったことは、一つの文化になりつつあり、それはそれでよいと思います。

ただ、選択肢の一つとして、ランドセル一択だったのが、『わんパック』のようなものもある、と考えていただけたらと思います」

「わんパック」は11月1日から、モンベルのホームページや店頭で予約を受け付けており、店頭に並ぶのは12月中旬ごろ。予約多数のため、色によっては 遅れることもありそうとのことです。

オトナンサー編集部

通学用バックパック「わんパック」(モンベル提供)