帝国データバンクが国内の女性社長比率について調査を行ったところ、2022年は8.2%だった。統計として遡れる1990年当時は4.5%であったが、2000年には5.6%、2010年には6.8%と年々緩やかながら上昇傾向で推移。2020年には8%台となり、2022年調査では前年から0.1ポイント上昇し、過去最高を記録した。しかしながら、依然として1ケタ台である状況は変わらず、低水準を打破することはできていない。

女性社長比率
  • 帝国データバンクは自社データベースをもとに、全国約119万社の事業会社を対象に女性が社長(代表)を務める企業について分析を行った。同様の調査は2021年5月に続き9回目
  • 集計対象は「株式会社」「有限会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」

年齢構成比、女性社長は「70~74歳」が14.5%で最多 高齢化に歯止めかからず
年齢構成比

 女性社長を年齢構成比でみると、「70~74歳」が14.5%で最も高くなった。2019年から4年連続で最も高い。2021年時点から1.4ポイント減少しているものの、一方で「75~79歳」が9.9%と同0.7ポイント増となり、調査開始以降で最多となっている。60歳以上の女性社長は全体の59.7%を占め、平均年齢は62.9歳となるなど、女性社長の高齢化に歯止めがかからない。なお、男性社長では50~64歳の3区分で14%台となり割合が高い。また、60歳以上の割合は52.0%、平均年齢は60.4歳だった。比較すると、女性社長の方が高齢化している傾向がみられる。

業種別では「不動産」が17.2%でトップ、「建設」は5%未満にとどまる
業種別

 女性社長比率を業種別にみると、「不動産」が17.2%になり、他業種より大きく差をつけ最も高い割合となった。次いで「サービス」(11.1%)や「小売」(10.8%)のような、消費者向けのいわゆる「BtoC」業態が中心となっている業種が続き、全体(8.2%)を上回った。
 一方で、「建設」は4年連続横ばいの4.8%で低水準が続いており、26年連続で最も低い割合となった。また、「製造」も5.5%と低く、24年連続で「建設」に次いで2番目に低い。他の5業種は6~7%台で推移している。



業種細分類別では「保育所」 がトップ、美容関連や社会福祉関連が続く

 より細かい業種細分類別では、「保育所」が41.0%で唯一4割を超え、前年比0.5ポイント減少も引き続きトップだった。次いで「化粧品販売」(35.6%)や「美容業」(34.2%)といった美容関連がともに3割台で、「老人福祉事業」(31.1%)、「身体障害者福祉事業」(29.0%)など社会福祉業界が続いた。
業種細分類別

就任経緯は女性社長の半数以上が「同族承継」、次いで「創業者」が3割で続く
就任経緯別

 就任経緯別でみると、全体的な傾向は前年調査時点と大きくは変わっていない。「同族承継」による就任が50.7%となり、全体の半数以上を占め最も高かった。男性社長の40.0%と比較して10ポイント以上高く、女性社長における中心的な就任経緯となっている。
 次いで「創業者」が35.2%で2番目に続いた。男性社長の40.3%より5.1ポイント低く、前年からもほぼ横ばいとなっている。創業支援に関する施策がさまざまに出始めているなかで、女性の創業に関しても注目される。その他には「内部昇格」(8.4%)や「出向・分社化」(2.6%)、「買収」(1.6%)、「外部招聘」(1.4%)が低い割合ながらも続いた。



資本金区分別では「1000万円未満」が9.1%でトップ、「1億円以上」は2.6%と低水準
資本金別

 資本金別で各レンジにおける女性社長割合みると、「1000万円未満」が9.1%となり最も高かった。また、「1000万円以上5000万円未満」(7.7%)、「5000万円以上1億円未満」(5.5%)、そして「1億円以上」(2.6%)の順となり、資本金の額が小さい企業ほど女性社長比率が高い傾向がみられた。なかでも、「1000万円未満」では1990年時点(5.2%)から3.9ポイント増加している。それに対して「1億円以上」では同時期から1.4ポイントの増加にとどまっている。






都道府県別では「沖縄県」と「徳島県」が11.6%で同率トップ、10%以上は6県に

 都道府県別では、「沖縄県」が11.6%で最も高く、10年連続でトップだった。また、以前から女性の活躍が目立つ「徳島県」が同率で並び、18年ぶりのトップとなった。その他、10%を上回ったのは6地域を数えた。一方で、「岐阜県」は5.8%(1030人/17859人)と13年連続の最下位。女性社長割合が低い製造業が多く集まる中部地方では、全体的に低位な傾向にある。
都道府県別

出身大学は「日本大学」が3年連続でトップ、増加率では関西圏の私立大学が目立つ

 女性社長の出身大学別では、「日本大学」が前年比23人増の269人となり3年連続で最多となった。同大学においても、過去最高の女性社長数となる。次いで「慶應義塾大学」(245人、同4人増)がトップと24人差で続き、「早稲田大学」(231人、同5人増)も含め3つの大学で200人を超えた。主に首都圏私立大学が上位を占め、上位10校の顔ぶれは前回調査から変わっていない。女子大学では、「日本女子大学」(151人、同7人減)がトップとなったものの前年比で減少。「共立女子大学」(117人、同3人減)や「聖心女子大学」(101人、同5人増)も100人超だった。
 前年から最も増加したのは「拓殖大学」で、前年比40.0%増となった(今回調査時で20名以上となった大学が対象)。その他、「龍谷大学」(同36.8%増、26人)や「愛知学院大学」(同33.3%増、20人)が続き、「立命館大学」(同29.2%増、62人)や「奈良女子大学」(同25.0%増、25人)など関西圏の私立大学で増加が目立った。
出身大学別

ダイバーシティの実現へ、まずは女性が活躍できる社会を

 女性社長比率は8.2%で、過去最高を更新したものの1ケタ台にとどまるなど依然として低水準で推移している。業種や地域など一部では比較的割合の高い区分も見られたものの、対照的に過去と比較して上昇がみられない分野もある。とりわけ、建設業と製造業においては低水準が顕著となった。
 女性、シニア、外国人など、近年注目されるダイバーシティ(多様性)は組織の強靭化には欠かせない。過去の研究では、性別多様性が高い方がより高い業績を上げる傾向がみられるなど、女性活躍による企業へのプラスの効果がさまざまに明らかになっている。そればかりではなく、同じ属性の集団ばかりでいると思考が似通うことで、創造的な発想が失われてしまう「Group Think」(集団浅慮)と呼ばれるデメリットも指摘されている。こうした現象を防ぐためにも多様性は重要視されるテーマであり、その一つとしての女性活躍は今後さらに注目される観点となろう。
 そうしたなか、帝国データバンクが2022年7月に実施した「女性登用に関する企業の意識調査(2022年)」においては、女性管理職の平均割合は前年から0.5ポイント増加し9.4%となった。“過去最高ながらも低水準”という傾向に変わりはなく、こうした局面は今後も続くとみられる。将来的に管理職や役員などの意思決定者ポストへ登用できる人材を育成するためにも、従前から叫ばれている子育て支援の充実や家事の負担軽減など、女性が活躍できる環境作りが第一歩となろう。

配信元企業:株式会社帝国データバンク

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