2022年11月18日に、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、『ポケモンS・V』と表記)が発売された。年末に向けて発売されるポケモンの完全新作ということで、ファンの期待はとても大きいものになっていた。

 しかも『ポケモンS・V』は従来の作品と異なり、広大な世界を自由に冒険できるオープンワールドを採用している。オープンワールドの細かい定義は難しいところなのだが、ひとまず「広い世界を思うように冒険できるゲーム」と解釈してもらえばいいだろう。

 しかし、そんな期待の新作の評価はあまり芳しくない。レビュー集積サイトMetacriticのメタスコア(*1)は、記事執筆時点で76点といまいちな評価になっている。

*1 Metacriticが各レビューサイトからレビュースコアを集積し、その平均の値を表したもの。評価は100点満点。

世界的な評価が芳しくないポケモン新作

「76点なら悪くないのではないか?」と思うかもしれないが、これは世界中で人気のIPであるポケモンとしては物足りない数値だ。2022年1月に発売された『Pokémon LEGENDS アルセウス』は83点、2019年11月に発売された『ポケットモンスター ソード・シールド』は80点なのに、それを下回っているのである。

 なお、発売後の致命的なバグが話題になるなど、大きな問題を抱えていた『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』メタスコアは73点で、さすがにそれは越えているが高い評価とは言い難いのが現状だ。

 オープンワールドを採用し、大きく進化する『ポケモンS・V』であればこれらの作品は軽く越えてもおかしくなかったはずだ。おまけに、本作を体験したプレイヤーは「楽しめたとしても気になる部分が非常に多い」と語るケースが多い。はたしてこの作品にどんな問題があったのか、4つの理由で解説する。

理由1:そもそもゲームが安定して動かないパフォーマンスの問題

ポケモンS・V』はパフォーマンスゲームの描画処理など)に問題を抱えており、さまざまなレビューはもちろん多くのユーザーからもそれを指摘されている。

 具体的にはフレームレートの低下が激しい。テレビゲームは1秒の間に30~60程度の静止画を連続で表示して動画を見せており、このフレームレートが高ければ高いほどなめらかな映像が見られるようになっている。

ポケモンS・V』はオープンワールドになって多くのポケモンを描写する必要があるからか、このフレームレートが非常に低下しやすい。雨が降ったり草が多い場所に行くとフレームレートが落ち、プレイヤーゲームそのものが遅くなったかのような印象を受ける。

 伝説のポケモンに乗って高速で移動しているはずなのに、水中にいるかのように思うように動けない。筆者が体験した限りでは、むしろこういう状況にならないときのほうが珍しいような状況で、ストレスになるのも当然である。

 また、描画範囲が非常に狭い。たとえば遠くにいるポケモンの動きを簡略化するなどして処理を軽くするテクニックはほかのゲームでも活用されるのだが、『ポケモンS・V』の場合はこれを明らかにやりすぎな状況だ。

 学校の教室にいる生徒たちは動きが簡略化されすぎてカクカクになっているし、街中では人が急に消えたり現れたりする。フィールドも高速で移動するとポケモンの出現が間に合わず数が極めて少なくなったりと、明らか違和感を生むほど描写を省略しすぎなのである(おまけに、そこまでしているのにフレームレートが低くなりやすいのだ)。

 バグも多く、エラー落ちしてゲームが強制終了するのも珍しくない。おまけに現在は、ポケモンや道具の増殖バグが見つかったのではないかと騒ぎになっている。ポケモンは通信対戦・交換といった要素もあるので、それらを増やせてしまう不具合は大きな問題なのだ。

 もともとオープンワールドゲームは広大な世界を作らなければならない以上、バグや不具合は発生しやすいものである。それ自体に目をつむることは難しくないものの、パフォーマンスの低さは目に余る。オープンワールドゲームは遠くのキレイな景色を眺めるのも楽しみのひとつなのに、『ポケモンS・V』はその景色の描写が極めて大雑把なのだから。

理由2:オープンワールドだけど不自由

 従来のポケモンは基本的に一本道で、攻略する順番は固定されているケースが多かった。『ポケモンS・V』は広いフィールドを自由に冒険できるわけで、いきなり好きなところに行けるのだ。

 しかし、これは半分くらい嘘である。たしかにフィールドのどこにでも行けるのは事実なのだが、どうやって進めるのかはほとんど固定されている。

 フィールド上には強いポケモンが出てくる場所もあるので、そこに行って捕まえればいきなり最強になれる……わけではない。レベルの高いポケモンは言うことを聞かないので、仲間にしたとしても戦力にはならないのだ。

 それを解決するには各地にあるジムを攻略してジムバッジを入手する必要があるのだが、そのジムに出てくる敵のレベルも固定されているので、必然的に簡単なところから挑戦していくようになる。

 結局のところ、オープンワールドになってもほとんど道順が決まっているようなものなのだ。とはいえ、これはデメリットばかりではない。世界中の多くのプレイヤーが遊ぶポケモンのようなゲームは、わかりやすさも非常に重要だ。ただ広大な世界に投げ出されただけでは、何をしていいのかわからずにやめてしまう人が出てくる可能性も高い。ゆえに道筋を描いておく必要がある。

 また、広いフィールドを探索できるのは事実である。提示された目的を無視して、好きなポケモンを探しに行くのも十分ありだ。これは従来のポケモンではできなかったことといえる。

 とはいえ、メリットが少なく感じられるのも否定できない。なぜならオープンワールドゲームは世に出て15年以上も経っているのに、『ポケモンS・V』はその魅力を活かしきれていないからだ。そしてユーザーも、本当に自由な冒険をすでに体験している可能性が高い。

理由3:ユーザーの目が肥えている可能性がある

 2021年12月テレビ朝日で放送された「テレビゲーム総選挙」という番組をご存知だろうか。国民5万人による投票で最も人気のゲームを決めるというもので、1位には『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が選ばれていた。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は2017年に発売されたゲームで、こちらもオープンワールドの作品といえる(公式には「オープンエアー」という呼称)。

 本作は過去シリーズ作と異なり、広大な世界を自由に冒険できるようになったし、目の前に巨大な崖があったとしても強引に登っていくことすらできる。武器の選択肢もさまざまだし、どこをどう冒険するかもプレイヤー次第。謎解きの答えも1種類ではなく、自分なりの答えを見つければよいのだ。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はアクション要素が強く、ゲーム慣れしていない人にはやや難しいゲームといえる。しかしながら、少なくとも「テレビゲーム総選挙」では大きく支持されるようなタイトルになっているわけだ。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のメタスコアは97点で、新しい可能性を打ち出したゲームとして評価も非常に高い。筆者の私見としては、従来のオープンワールドの要素を組み合わせつつ、その体験がより円滑になるような仕組みを多数用意しているところが優れていると考えている。

 つまり、「ゼルダの伝説」はいろいろなゲームを参考に独自の可能性を打ち出したオープンワールドになったのに、ポケモンは未だに進化しきれていないオープンワールドに見えてしまうわけだ。

 もちろん、世の中には「ゲームポケモンくらいしか遊ばない」という人もいるわけで、そういった人たちに『ポケモンS・V』が受け入れられる可能性はあるだろう。ただ、目が肥えているユーザーからは冷たい目で見られることもあるわけだ。

理由4:「ポケモン新作出しすぎ問題」

 ポケモン定期的に新作を出しており、スピンオフリメイクを含めるとほぼ毎年作品が出ているといっても過言ではない。完全新作だけをカウントしても、3年に一度は新作を出すようなペースで開発を続けている。

 しかも2022年は1月に『Pokémon LEGENDS アルセウス』を出したのに、11月に『ポケモンS・V』を出すという状態だ。これは異様なペースであるといえる。

 テレビゲームは昔に比べると規模が大きくなり続けており、それゆえ開発にもより時間がかかるようになっている。オープンワールドのようなゲームともなれば街や広いフィールドを作り込まねばならないため、開発の労力はとてつもないものになるだろう。

 しかし、ポケモンはその真逆を行っているどころか1年に2作品も出しているわけだ。具体的な開発ラインがどうなっているのか部外者としては知るよしもないが、これが容易ではないことはわかるし、実際『ポケモンS・V』ではその無茶が商品の品質に出てしまっていると考えられる。

 昨今のゲーム好きは、作品の発売延期が発表されたとしても「クオリティが高くなるならば納得して待つ」という姿勢を見せる。急いで作品を出したとしても、おもしろくなかったり問題が多かったら意味がないことを理解しているからだ(結局、アップデートゲームが改善されるのを待たなければならないというのもある)。

 とはいえ、天下のポケモンには年末に新作を出さなければならないなどさまざまな事情があるのだろう。それはわかっていたとしても、不具合だらけだった『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』を受け入れるのは難しいし、『ポケモンS・V』もきちんと作り込んでから発売してほしかったというのが偽らざる気持ちである。

期待に応えきれなかったオープンワールドポケモン

 こうして『ポケモンS・V』の評価がいまひとつな理由を述べたが、だからといってこのゲームが完全にクソゲーだというわけではない。

 楽しい部分も確かに存在しており、新たなポケモンたちとの出会いは刺激的だし、今回は終盤のストーリーも大いに盛り上がる。登場するキャラクターもかなり魅力的で、遊べばきっと好きになる人物が見つかるだろう。

 しかしながら魅力もあるがゆえに、「どうしてこうなってしまったのか」と思ってしまうのも事実である。オープンワールドになったポケモンは誰もが待ち望んだ作品だったのに、その期待には応えられない作品だったと言わざるをえないのだ。

(渡邉 卓也)

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のスクリーンショット。残念ながら、実際のゲーム画面はここまで綺麗な印象はない。画像は任天堂公式サイトより