芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第21回】特別編「変わったゴミの話」
前回に引き続き、今回も滝沢さんに質問をぶつける特別編をお届けします。「滝沢さんが回収した中で、いちばん変なゴミは?」という質問に、今回はお答えします!

【画像】ゴミ清掃芸人の滝沢秀一

いきなり質問の答えとは違う話から始まりますが、しばらく読んでみてください。

ゴミ回収の仕事は、夏場はすごく暑くてハードなため、朦朧として幻を見ることがたまにあります。例えば「壁の上に子どもが立ってる!」とか。

僕は霊感が強いわけじゃないから、単純に熱中症一歩手前なんでしょう。ゴミ回収車の運転手の後ろから女の人がハンドルを握ってる姿が見えたりとか。そういうときはギュッと目を閉じると、いなくなります。

ゴミ清掃は、ある部分では命がけの仕事だということがわかってもらえるかと思います。

だからある日、その老婆が現れたときも最初は幻だと思いました。さっきまでそこにいたのに、一瞬でいなくなってしまった。「そんなに素早い老婆はいないだろう、また幻か」と。

しかしゴミ集積場に目をやると、新しいゴミが置かれていました。透明なゴミ袋ではなく、中身が見えない袋に入ったものです。ゴミを置いたときの重たそうな音も耳に残っていたので「もしかしたら不燃ゴミかな? 幻じゃなかったのかな?」などと思いながら、恐る恐る中身を確認したんです。そうしたら......中から大量の大人のおもちゃが出てきました。

あ、幻じゃなかったんだ、と思いましたね。

しかも電池抜いてないし。回収時はゴム手袋をしていますが、大量の大人のおもちゃから一つずつ電池を抜くのはちょっと嫌でしたね。

あと変わったゴミといえば、いつも通り回収作業をしていたら仲間の作業員に「あっ、そのゴミ触ったらダメです」と言われました。「え、なんで?」と聞くと「ここ、よくオシッコが出るんです」と。

要は、牛乳パックみたいなものにオシッコを入れて、ガムテープで封をしてそのまま可燃ゴミで出してると。その仲間はある日、気づかずに回収車に放り込んだら、回転盤に挟まれて中身がピシャーッと飛び散って、口に入っちゃったことがあったようです。これもある意味で命がけの作業です。

おそらく、そこのアパートの誰かの仕業なんです。もし介護だったら、そんな捨て方するかな?と。結局どういうことが一番予想されるかといったら、ゲーマーなんじゃないかという結論になりました。ゲーム画面から離れたくなくて、その場で牛乳パックにしちゃうんじゃないかと。ペットボトルだと、ちょっと入れづらいですしね。

ペットボトルも中身が入った状態で捨てられている場合がありますが、絶対に触らない方がいいです。中身が飲み物じゃない可能性が高いですから。

最後にもう一つ。ゴミ回収を始めたての頃、閑静な高級住宅街90リットルポリバケツが捨ててありました。回収しようと思いましたが、重くて1人では持ち上げられません

なんだこれ」と思って、もう一人の作業員と「せーの」といってふたを開けたら、えのきバターでした。

最初は目を疑いましたが、どう見てもえのきだし、いい香りがしてる。もう一人の作業員も「これはえのきバターですね」と。

90リットルバケツいっぱいのえのきバターってどういうことなんだろう?と2人で議論になりました。

えのきバターパーティーでもやったのかな」。でも「えのきバターパーティーってなんだよ」っていう話になって。「じゃあ、えのきバター専門店か」、「行ったことあるのか」と。

結局のところ真実はわかってないんですけど、それから数年経ちいろんな芸人にその話をしたら「ユーチューバーなんじゃないか」という有力な説が出ました。「大量のえのきバター作ってみた」みたいな。そんな動画の何が面白いのかひとつもわかりませんが、YouTubeを探したら、どこかにそんな動画があるのかもしれません。

大量のスライムを使うような動画は見た事がありますが、これどうやって捨ててるのかな?と不安になったりします。ゴミを増やすことは地球のためによくないので、みなさんも作ったえのきバターは残さず食べるように心がけてください。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

イラスト/北村ヂン

「信じられないゴミ」について滝沢氏が語る!