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image credit:M. Shi and Z. Pan/University of Waterloo

 洋式トイレの立ちションで飛散するおしっこのしぶきが想像以上に広範囲な件は以前お伝えしたとおりだが、近ごろは掃除も臭いもやっかいな尿の汚れにうんざりし、自主的に自宅トイレは座りションにする男性も多いと聞く。

 一方、外では立ちションがデフォの小便器を気兼ねなく利用する男性もいそうだが、こうした飛び散りを根本から防ぐ方法は無いのだろうか。

 今月22日このテーマに取り組んだカナダ物理学者が、アメリカの物理学会で小便器の新デザインを発表した。

 一世紀以上も不変だったとされる小便器改革のヒントになったデザイン。それはなんとオウムガイと犬だったそうだ。

【画像】 流体物理学者が発表。おしっこが飛び散らない小便器

おしっこが飛び散らない小便器を作るヒントは、どこを狙ってもおしっこの流れが浅い角度で当たるようにすることだ。角度が充分に小さければしぶきは発生しない。

 そう語るのはカナダウォータールー大学の機械およびメカトロニクス工学科の助教授であり、流体物理学の研究者でもあるZhao Pan氏だ。

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image credit:M. Shi and Z. Pan/University of Waterloo

 このたびアメリカの物理学会で「尿の飛沫が無い小便器」としてPan氏のチームが発表したのは、狭い開口部と湾曲した内面をもつ背の高い小便器だ。

 その形状のヒントはなんとオウムガイと犬にあったという。

デザインはオウムガイの殻と犬の「臨界角」の組み合わせ

 この研究にあたりPan氏のチームはまず、従来の小便器に尿の代わりに着色した液体を放射する実験を行い、しぶきの飛び散る範囲を観察した。

 すると人の足や足元、および付近の床にかなりしぶきがつくことがわかった。

参考:UVライトで見る立ちションによる尿の飛び散り

・合わせて読みたい→汚れた便器に触る映像を何度も見ることで潔癖症が緩和するという研究結果(英研究)

UV light shows the unseen splashes created by standing urination

 以降その結果をもとに、しぶきを抑えられそうな形状の試作品を作っては同じ実験を行い、しぶきの範囲を調べ続けた。するとある時点でしぶきが1滴も出ない結果が出た。

 その小便器のデザインは、オウムガイの殻などにみられる美しい螺旋の形と、犬の「臨界角」を組み合わせたものだ。

 表面全体になめらかな流れをもたせたその小便器は、従来のものよりおしっこのしぶきの飛散を防ぐという。

新しい小便器(中央)

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image credit:M. Shi and Z. Pan/University of Waterloo

しぶきが防げる「臨界角」は30度。犬の放尿スタイルがヒントに

 Pan氏によると「臨界角」とは、小便器の面に対して流体(おしっこ)を当ててもしぶきが出なくなる角度を指す。

 つまり面に当たる角度を臨界角以下に保てばしぶきが防げるという発想だ。

 ちなみの臨界角のヒントはなんとオスの犬の放尿スタイルだった。チームによると、オスの犬が木などにおしっこをするとき後ろ足を上げるのは、そうすると臨界角に近づくことを本能的に知っているからだという。

 同チームは飛んだしぶきをペーパータオルで拭き、その重さをはかって液体量を比較する調査も行ったが、そのデータと犬の放尿モデルを組み合わせたところ、その臨界角は約30度と判明したそうだ。

尿飛び散りは従来の小便器の50 分の 1 。高い防尿はね効果を発揮

 チームが設計した新しい小便器では、繰り返しの調査でも尿の飛び散りを従来の便器の「50分の1」にまで減らすという結果が得られた。

 また使用者の身長にかかわらず高い防尿はね効果を発揮するそうだ。

 この小便器の特許や製品としてのお値段も今のところ不明だが、生物の特徴や習性をヒントにした衛生的な小便器が今までの小便器に代わる日は案外近いかもしれないね。

 来年のイグノーベル賞あたりに選出されそうな予感もするねー。

 この研究結果は2022年11月22日にアメリカのインディアナポリスで開催されたAPS(アメリカ物理学会)の流体力学部門で発表された。

References:sciencenews /written by D/ edited by parumo

 
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物理学者が試行錯誤を重ね、一番おしっこが飛び散らない小便器の形を導き出す