営業マンや商品企画の「ステージ」を分析しただけで話がスッキリします。ステージと登場人物を考えることがいかに重要かがわかります。IT&キャリアコンサルタントの谷藤賢一氏が著書『ペヤングソースやきそばで学ぶ問題解決力』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。
どのように2人の特性を活かすのか?
▶考えてみよう!「営業タイプ どっちがいいの?」のケース
営業マンによくいるタイプ、あなたもこんな人を目にしたことないでしょうか?
Aさん【個人目標の達成】 だって営業マンですから。売って売って売りまくる、それが我々の仕事なんです。月間目標も達成しなきゃいけないしね。見込みの薄いお客様にかかわってる暇があったらどんどん次のお客様へ仕掛けていくべきなのです。
Bさん【顧客満足の向上】 だって営業マンですから。お客様に満足していただく、それが我々の仕事なんです。お客様の困っていることを解決してあげることで信頼が得られ、売上は後から必ず大きくなって返ってきます。
この2者のタイプ、よくありますね。
もしあなたがこの2人の上司だとしたら、どのようにこの2人を指導しますか?
それではステージを見てみましょう。
営業マンとしての行動基準となるスタンスが大きく異なります。
Aさんは自分の評価が欲しかったのです。
Bさんはお客様を満足させたかったのです。
このステージさえ明らかになれば、何をどうすべきか、光が差すように見えてきます。
逆にステージを意識しないと、行動基準についての議論は延々と平行線になります。激論、ときにはケンカになることもあります。会議がピリピリな空気になったりします。
お互いにわからず屋なのではなく、ステージが異なるだけなのです。上司や経営者はこのステージをハッキリ意識しておくことで作戦が明確になってきます。短期的にはAさんのスタンス、長期的にはBさんのスタンスのほうが結果が出ます。
Aさんは毎月のノルマを意識して行動しますので、短期で結果が出ます。
Bさんはノルマよりお客様や会社の未来を優先しますので、結果が出るまでに時間がかかります。
では、営業組織はAさんタイプで固めればいいのでしょうか?
Aさんは自分の評価が欲しいのです。ですので、月末を待たずにノルマを達成してしまうと急に手を抜き始めます。結果を出し過ぎると翌月のノルマがきつくなるのを知っているからです。
Bさんはノルマよりお客様や自社の未来を考えながらどこまでも行動するので、結果が出るまでに時間がかかりますが、結果が出始めると、その成果には上限がありません。
戦略としてどのように2人の特性を活かすのか、これがこの場合の上司に求められる考え方、ということがわかってきます。
相手のステージか、第3のステージか
▶考えてみよう!「なぜ企画が通らない?」のケース
商品企画。これもステージを分析すると明確に見えてきます。やってみましょう。
A さん【企画案Aを説明したい】 この企画で絶対いけます。なぜなら、これだけの根拠があるからです。
B 先輩【企画案Bに従わせたい】 俺がこっちの企画だと言ってるんだ。俺は10年の経験があるんだぞ。生意気言うな。
これもありそうですね。
経験ありますか? あるとしたらあなたはどちらでしたか?
では、それぞれのステージを見ましょう。
Aさんは「根拠を示したい」のですね。
一方、B先輩は「先輩の経験則を示したい」のです。ステージが全く異なりますので、この2人の議論は平行線になります。
Aさんはこう思うでしょう。「B先輩って本当にわからず屋で困る。だって、これだけわかりやすく根拠を見せているのに理解できないなんて」
B先輩はこう思っているはずです。「Aは理屈ばかり言うだけだ。俺たち先輩が経験してきたことをまったく無視している」
AさんはなんとかB先輩にわかってもらおうと必死に根拠を説明しますが、B先輩は根拠のステージにいないのです。どんなに説明してもムダです。
B先輩はなんとかAさんを従わせようと必死ですが、Aさんは先輩の経験則というステージにはいないのです。どんなに従わせようとしてもムダです。
どちらかがステージを明け渡し、相手のステージに乗るか、まったく異なる第3のステージに移動するしかありません。
■「そもそも」はステージを明らかにする魔法の呪文
営業マンや商品企画のステージを分析しただけでこんなに話がスッキリするのです。ステージと登場人物(人物だけでない)を考えることがいかに重要かわかっていただけましたでしょうか。
話がお互いに通じないのはステージが違うだけなのです。不毛な戦いに使うエネルギーがあったら、お互いのステージの確認に使うほうが建設的です。
ステージを簡単に分析する魔法の呪文、それが「そもそも」です。会議や日常会話で「そもそも」を使えばいいのです。
魔法の呪文「そもそも」がステージを赤裸々にし、不毛な戦いを終わらせ、最適解、最大幸福、全会一致への最初の道を開きます。
「今さら蒸し返すな!」と非難されることを恐れるあまり、自分の意見を飲み込んでしまう人が多いようです。あなたの「そもそも」発言が多くの人を救うかもしれないのです。空気を読んでる場合ではありません。恐れず「そもそもなんですけど……」と言う勇気を持ってください。
出来内くんの「ソースやきそばの買い置きがある」に対して、露地くんは「そもそも、それってどこのヤツ?」と屈託なく呪文を放ちました。
言われた出来内くんは心の奥で「なんかめんどくさい展開になりそうだな……」と思っていることでしょう。
でも、最適解のためには必要なことなのです。
そして……。
ステージが明らかになると、自然と次の展開に進みます。今まで見えてこなかった並列関係にある新たなステージが見えてくるのです。
谷藤 賢一 株式会社C60代表取締役
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