極限状態の中、どんな困難なミッションも完遂する「諜報員」。その成功の秘密は、「成果が出る“型”」を頭の中に入れていることにあります。あらゆる仕事に応用できる、誰もが実践できる諜報員のテクニックを、上田篤盛氏の著書『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル』(ワニブックス)より一部抜粋してお届けします。

とにかく“情報源は批判的に見る”に限る!

ニセ情報を見破る特効薬はないが、私は情報分析官の経験から、次のようなことに留意すべきだと考えている。

大前提として、誰もが情報を発信できる現代、すべての情報は疑って見るべきだ。公開情報はなんらかの意図を持って発信されたものであると考えて、その意図を推察するくらいの注意力は必要である。

情報を批判的に見る方法は、外的批判と内的批判の2つがある。

外的批判とは、情報が「本物か偽物か」を判断し、情報源、情報の成立時点、その情報が独立のものか、それとも他の情報から派生したものかを突きとめること。情報源が本当に「その情報を知る立場にあるか?」「その情報を正しく理解する能力があるのか?」と疑ってかかることが大事だ。情報の批判では、次のような視点が必要である。

  • 情報源の記載されていないものは、状況判断には使用しない

ただし、情報の内的批判(後述)は行なう。

  • 情報源を不用意に信頼しない

著名人や自称専門家と言われる人の情報、過去の出版物などをチェックし、どの筋の専門家なのかを確認する。また思想的背景、交友関係に着目し、意図的な誘導工作の可能性を探る。

  • 取材、手記の類は盛り付け”脚色”意図的な誘導”が常態であると認識する

自伝は自慢話が多く、ノンフィクションと名乗る取材記事では、取材は名ばかりで、自身の恣し意い的な主張を補強するための材料に過ぎない場合がある。

  • 情報源の成立時期を特定する

情報源の成立時期と情報の入手時期とは異なる。新しい情報と思っていても、昔の情報の焼き直しであることはよくある。文書情報であれば、その中で使用されている文体や用語が現代的かどうかに注意する。時期が特定できれば、同時期に起きた事柄との比較によって矛盾を見つけられる。重要な事柄を無視していることを発見すれば、その情報の疑義をただす。

複数の独立した情報の内容が一致すれば、その情報は本物ということになるが、現実には、情報源が同一ということも多々ある。人から得る情報、公開情報など異なるフィールドの情報源にアクセスできればいいが、一般のビジネスパーソンではそうもいかない。

だが、「同じことが言われている」「ここにも書かれている」から「この情報は正しい!」と情報を鵜呑みにしないための批判は最低限必要だ。

「感情と数字」は惑わされる大きな要因

内的批判とは、情報源に関係なく、情報の内容いかんで「その情報に価値があるか否か」を判断することである。情報源が記載されていない情報は疑ってかかるのが原則とは言え、有用なオフレコ記事が「匿名」で流布されることは多々あるので、情報が重要な内容を含んでいれば他の情報との照合を行なっておいて損はない。

情報そのものが「本物か偽物か」の内的批判は、外的批判を駆使するより難しいが、そのため価値が高い。原則は、一般的知識および経験的見地からの「妥当性」、「一貫性」および「具体性(詳細度)」、ならびに関係あるほかの情報、または知識との「関連性」によって、情報の真偽を判断する。

要するに「なんとなく変だ」「そんなことが本当にあるのか」「言っていることが矛盾している」「よくそんなことまで知り得たな」などの気づきがあれば、関連する情報や知識とつき合わせて矛盾点を探ったり、その道の専門家の意見を聞くなどの措置が必要ということである。私は、情報の内的批判では次のようなことに留意している。

  • 感情がゆさぶられる情報には注意する

おもしろい、得する、損する、緊急、恐怖、危険、悲しいなどの感情が起これば、今一度、情報源や伝達者の意図や思想の介在を考える。

つまり、「情報源はこの情報にどのような利益を見いだしているか。それは金銭、名誉、注目のいずれか?」「私にこの情報を信じさせることで情報源が得られる利益は何か?」という視点で情報の内容をチェックする。

  • 数字は疑ってかかる

統計と数値化は全体状況を把握する、他との比較を行なうなど、その重要性には異論はない。しかし、統計はいかようにも操作可能であることを認識しよう。特に100%に近い数字は要注意である。要するに、情報をつくる側(情報源)の立場に立って、情報を批判的に見るということである。

上田 篤盛

株式会社ラック「ナショナルセキュリティ研究所」

シニアコンサルタント

(※写真はイメージです/PIXTA)