◆万博を見据え、大阪市内全域を路上喫煙禁止

 今年3月、大阪市の松井市長は2025年に開催される大阪万博を見据え、市内全域を路上喫煙禁止とする旨を明らかにした。19年7月から施行されている大阪府受動喫煙防止条例では、国の法律である「改正健康増進法」(学校や病院、児童福祉施設などを全面禁煙)に上乗せする形で、22年4月からは従業員がいる飲食店は原則禁煙とし、更には2025年4月からは客席30㎡超の飲食店も原則禁煙とする予定である。

 つまり、大阪市全域を路上喫煙禁止とすることで、たばこを吸えるのは、全国に比して極めて限定的となることが想定されている。建物内を禁煙にすることが世界的な潮流であることに異論はないが、屋外での喫煙には寛容な諸外国と違い、日本では屋外から規制を強めてきている。大阪府と同様に屋内での喫煙が厳しく制限されている東京でも喫煙所の整備が不十分なエリアでは、多数の喫煙ジプシーが発生し、周辺の路地裏コインパーキングなど、人気のない場所での路上喫煙やポイ捨てが問題視されている。

 屋内はもとより屋外も禁煙とする大阪市は、具体的にどれほどの数の喫煙所を2025年までに設置するかについては、現在120箇所で検討しているようであるが、今年9月1日から路上喫煙禁止地区に指定された堂島公園内に、大阪市が予算を捻出した初の公共喫煙所が設置された。利用状況を調査すべく、現地を取材した。

◆公設喫煙所第1号の状況を調査

 平日午後3時梅田駅から大阪を南北に縦断する御堂筋を南下、大江橋の手前右手に位置する堂島公園は、公園というより川沿いの遊歩道という趣で、御堂筋からすぐ見える場所に件の喫煙所があった。

 堂島公園に新しく設置された喫煙所は閉鎖型喫煙所で定員は10名とし、利用時間も8時〜20時と決められ、利用時間外は扉が施錠される。室内には大型の空気清浄機、空調が完備され、取材で訪れた時間帯は、常時5〜6名が利用しているという状況だ。喫煙所から公園奥に向かって10メートルほど進んだ先には、かつて屋外に設置されていたと思われる喫煙所の跡地があり、パーテーションには公園内は喫煙禁止区域であること、新設の喫煙所の案内を示す貼り紙がある。

 さらに公園奥へと足を進めると、公園内の堤防沿いのエリアで喫煙をする人たちが散見される。また、公園に面する道路から、植え込み等で死角となっている場所には、多数の吸い殻が落ちていることも確認された。

1400万円の閉鎖型喫煙所、設置の経緯

 路上喫煙禁止地区での喫煙は褒められたものではない。しかし、河川沿いで大阪環状線高架下に位置する堂島公園は、人通りも少なく、老若男女が集う憩いの場所というより、街の死角といった性格が強い。そもそも周囲に他者がいない場所なら、わざわざ閉鎖型の喫煙所に足を運ぶことなく、屋外でたばこを燻らしたいという喫煙者心理が働きやすい場所とも見受けられる。こうした場所で、約1400万円という設置費用と、空調などランニングコストのかかる閉鎖型喫煙所は本当に必要なのだろうか。大阪の路上喫煙対策を担当する、大阪市事業管理課・まち美化担当の木村舞子課長に話を聞いた。

「もともと大阪市が路上喫煙対策の条例を作ったのが平成19年で、大阪のメインストリートである御堂筋を禁止にするところから始まっています。御堂筋に面している堂島公園は、大阪市の予算で作った第1号の公設喫煙所となります。人の往来が特別多いエリアというわけではないのですが、今後、堂島公園はウォーターフロントとして船着場を作ったり、子供も遊べる広場を作る計画もあります。喫煙所の横に観光トイレが設置されているのをご覧いただけたと思いますが、それと合わせて今後の都市計画の一環として、閉鎖型喫煙所を設置することになりました」

◆利用時間外に喫煙所を訪れたグループが…

 閉鎖型喫煙所が施錠される20時以降に、再度堂島公園を訪れると、喫煙所に入れなかったグループが、そのまま喫煙所横でたばこを吸い始めていた。日中に見かけた公園奥での喫煙行為やポイ捨てが散乱していることと合わせて、 “野良たばこ”が喫煙所周辺で起きていることについてはどうか。

「もともと、開放型の喫煙所があった頃から、公園奥のほうで喫煙されている方がいらっしゃる状況でした。堂島公園の喫煙所は今後の対策のモデルともなりますので、公園を管理する部署とも連携して、利用状況の確認は適宜していき、どんな場所に、どんなタイプの喫煙所を設置していくかを検討していきたいと思います」(前出・木村課長

◆「大阪市に必要な喫煙所は367箇所」大阪市商店会総連盟が調査結果を紹介

 具体的に喫煙所の数はどれほど必要となるのか。産経新聞11月9日付)は、関係者への取材により、大阪市が喫煙所の数を約120箇所と試算していることを報じた。一方、今年11月10日大阪市商店会総連盟は、人口動態や駅の乗員客数等に応じて算出した「大阪市内において必要な喫煙所数は367箇所」との調査結果をHP上で紹介し、大阪市に対して「喫煙所整備計画において参考としてほしい」「地域コミュニティーの声を聞いて欲しい」旨のコメントを発表している。

 2002年、全国に先駆けて路上喫煙を禁止にしてきた東京都千代田区は、民間での運用も含めて、現在74か所の喫煙所がある。千代田区の昼間人口は約85万人であるのに対して、大阪市の昼間人口は約354万人。単純に人口比で考えても、大阪市に必要な公設喫煙所は300箇所とみることもできる。これらを踏まえても、大阪市商店会総連盟が紹介している調査結果は大変興味深く、大阪市としても大いに参考になり得るものではないかと考えている。

◆2年で十分な数の喫煙所は設置できるか?

大阪市内全域を路上喫煙禁止にするのは万博が開催される25年1月施行を目標にしています。およそ2年弱と期間が短いですが、喫煙所設置はもとより、路上喫煙禁止の認知やマナー向上、喫煙所の案内表示も合わせて施策を検討している段階です。また、東京の事例も参考にしています。千代田区ではマップを作って、公共の喫煙所だけでなく、喫煙できる喫茶店や民間で運営されている喫煙所を紹介していますが、大阪もそういった取り組みをして、立地条件のある公共喫煙所だけでなく、喫煙できる場所を増やしていきたいと考えています」(前出・木村課長

 堂島公園のすぐ北側に店頭に灰皿を設置した喫茶店があり、こちらは常時7〜8人の喫煙者がいる状態だった。いうまでもなく、路上喫煙禁止と喫煙所の整備は車の両輪だ。条例が施行されれば路上喫煙がゼロになるわけでもなく、十分な数の喫煙所の設置が前提となってくる。財政も限られるなか、一律に閉鎖型喫煙所が必要かは議論の余地があるところだし、喫煙者と非喫煙者の双方が不快な思いをせずにすむよう、今後の喫煙所の設置状況を注視していきたいと思う。<取材・文・撮影/日刊SPA!取材班>

新設された堂島公園の喫煙所