
働き続けたいと思っている会社を突然辞めることになるなど、普通は考えないかもしれません。けれど、高瀬みやびさん(仮名・女性・28歳)の話を聞くと、そういった事態への備えも大切な気がしてきます。
世界進出の話もチラホラ出ていた
「将来的には規模も拡大し、世界進出するという話もチラホラ出ていました。そのような展望のある会社で、のびのびと好きな仕事ができることが何よりの幸せであり、やりがいだったのです。骨を埋めるつもりだったので、プライベートも犠牲にして貢献しました」取引先との打ち合わせや会食にも昼夜問わず二つ返事で出席し、1日のほとんどを代表Tさんと過ごしていた高瀬さん。気は使いつつも関係は良好で、取引先との会食などでは夫婦に間違われることもしばしばあるほど意気投合していたと言います。
「入社のキッカケは、会社が掲げるポジティブでヤル気あふれる理念でした。そして、代表であるTさんが対応してくれた最終面接で、Tさんの口から仕事に対する熱意や考え方を聞き、共感したからです。Tさんへの信頼やリスペクトは、入社後ますます強くなりました」
取引先の男性から食事に誘われ、交際に

そんな高瀬さんに転機が訪れます。会食時に連絡先を交換した、取引先のMさん(男性・30歳)からの食事のお誘いでした。それまでは、仕事に打ち込み長いあいだ恋愛を封印していたので、嬉しい反面、引き受けてから当日までとても緊張していたそうです。
「ただ、食事がはじまると緊張は自然と解けていました。自然が好きで料理が趣味という共通点もあり、まるで前からの知り合いかのように意気投合。すぐに距離は縮まり、お付き合いに発展しました。
出会って3か月後に同棲。半年後には、お互いの家族に挨拶を済ませました。皆から祝福され、いよいよ会社へも結婚の報告をする段に。仕事を辞める予定もなく、Mさんが取引先の人だということもあり、お付き合いしていることすら誰にも伝えていませんでした」
「独身貴族を貫く人だと思っていたのに」
高瀬さんがいちばん最初に報告したのは、もちろん代表のTさん。けれど結婚を報告した途端、「え、どういうこと?」と、Tさんは明らかに不機嫌そうな様子で返します。よく状況がのみ込めない高瀬さんに、「裏切ったんだ?」と、ものすごい形相のTさん。「すごく混乱しました。どうリアクションをとっていいかわからず固まっていると、『高瀬さんだけは、仕事一筋。僕と同じ独身貴族を貫く人だと思っていたのに』と、とにかく不機嫌極まりない様子でそう言われました」
そして、「申し訳ないけど、1人にしてほしい」と、社長室から追い出されてしまいます。状況が理解できないまま1週間ほど経ち、代表Tさんの知り合いだという女性が入社。これまで高瀬さんが同席していた会食などには、すべてその女性が行くことになったのです。
裏切り者扱いされ、退職することに

「周囲からもいろいろと噂され、だんだんと会社に居づらくなって退職しました。Mさんに相談すると気に病むかもしれないと思うと事情を話すこともできず、泣き寝入りするしかなかったのです。いまでもすごく残念ですし、悔しいと感じています」
まさかそんなことで退職するとは思ってもみなかった高瀬さん、「誰でも、いつ、どのような状況で会社を辞めることになるかわかりません。たとえ正社員として働いていても、資格を取ったり副業をしたりしてリスクを減らしておかないと怖いです」と話してくれました。
高瀬さんのように理不尽なケースは珍しいかもしれませんが、勤めている会社が倒産するということもあり得ます。「もしも」のときに備え、資格を取ったり副業をしたりしてリスクを減らしておくことが、将来の自分を守る重要なキーとなるかもしれません。
-特集・びっくりした退職トンデモ行動-
<TEXT/夏川夏実 イラスト/葉月しあ(@shia_lifestyle)>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター
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