テクノロジーが進歩した結果、知的労働に従事する人が増えた。ただ、「身体を動かしているかどうか」「汗をかいているか」という軸で仕事の頑張りを評価する人は一定数いる。そのため、どれだけ頭を働かせていてもサボリ扱いされてしまい、モヤモヤ感を抱いているビジネスパーソンは珍しくない。

 そこで『エンゲージマネジメント 本当に愛される職場のつくり方』(ぱる出版)の著者で、中小企業診断士の清水康裕氏に「考え中=サボり」と思われないため働き方について話を聞いた。

◆昔からあった現象

 まず、「考え中=サボり」という空気感について、「昔から変わらず多くの企業で、手を動かしていなければサボリとみなすような傾向がありました。ただ、SNSなどで情報収集・発信がしやすくなったため、ここ最近になって顕在化しやすくなったように感じます」と説明。

 次に職場では「考え中=サボり」という風潮が根強い理由を聞いた。

「自由な発想で考えて企画したものが承認された経験が少なく、『あの時たくさん悩んで良かった』と思った経験のあるビジネスパーソンがあまりいないことが挙げられます。その背景には、新たな企画や仕事のやり方は『これまでの自分がやってきたことが否定されてしまう』『変化についていけないとふるい落とされる』という感覚があるため、自由だったり新しかったりするアイデアが一蹴されやすい構造があることが大きいですね」

◆考えて成長したことを忘れている

 そして「考え中=サボり」と捉える人の特徴を聞くと、「自分が仕事を覚えたプロセスをすっかり忘れてしまった人が挙げられます」と解説。

「部下が考えている際には『効率的に働いていない』と解釈し、先回りして答えを提示してしまいがち。自分がわかっていることをいつまでも考えている、つまりは“効率的に働けていない人”と認識され、サボりと思われてしまいます。そういう人がいる職場では、考えるという習慣が根付きません」

 また、「考える=サボり」という風土が根強い企業について、「部下の指導が、業務に必要なスキルを実践しながら伝える『OJT』のみの職場では、自分自身が部下の時にどのように仕事に取り組んでいたのかを上司側が思い出す機会がありません。そのため、先述した先回りして答えを出す人が生まれやすいです」という。

 続けて、「トップダウン型の企業もその傾向があります」と話す。

「『上の意向が絶対』という価値観が蔓延していれば、どれだけ秀逸なアイデアが生まれても承認されにくい。そのため、考えること自体が馬鹿馬鹿しくなり、考えている従業員が少数派になるため、考えるという作業が定着しません。とりわけ、上司を“上の人”と呼ぶ職場では、風通しが悪く『上の意向が絶対』という認識を強いです。それにより、考えることよりも身体を動かして“仕事しているアピール“に励むようになります

◆“仕事している感”を出すために必要なこと

 ではサボりではなく、“キチンと考えている“と周囲に思わせるテクニックはあるのか。清水氏は「仕事内容にもよりますが、まずは考えている姿を見せないために会議室など人目につかない空間で作業する」と提案。

ビジュアル的に“仕事している感”を出すために参考資料を机に積み上げる。手書きメモやラフスケッチを残すといったことも有効です。また、パソコンを使ってウェブ検索をして作業している従業員を、サボりと見なす頭の固い上司もいます。デスクを多少細工することは面倒ですが、サボり扱いされて余計なストレスを負うことは回避できます」

テレワークはサボリ扱いされやすい

 ちなみに、テレワークでは特に「サボっているのではないか?」と疑いをかけられるケースが少なくない。テレワーク中にサボっていないと思わせる方法はあるのか。清水氏は「Quality(品質)、Costコスト)、Delivery(納期)を指す“QCD”を守る以外は無いですね」という。

テレワークでは業務のどこかが崩れると、たちまち『サボっていたからこういうことが起きたのではないか?』と疑いの目が、サボっていない従業員にも否応なしに向けられます。これは時間で拘束されている時よりも厳しい判断基準かもしれません」

◆上司に求められる視点

「考え中=サボり」という風潮を改めるために、経営層はどのような取り組みが有効なのか。

「『手を止めている時間はサボリ』とか『有給休暇は病気になった時に使うもの』という価値観は一歩引いて見ればおかしいと思えますが、そこで働く人たちはそういった“常識”に慣れている場合が多いです。部門間や立場を超えてコミュニケーションする場を設けたり、社外情報に目を向けるための研修を実施したりなど、『現状=最適』という思考停止を改めるためのアクションが良いでしょう」

◆成果に注目することが大切

 最後に“考えること”が業務がメインの職場において、上司は部下をどのような指導が求められるのか聞くと、「時間ではなく、成果に注目することが大切です」と説明。

「『いつまでに、どのようなレベルアウトプットを準備するか』をしっかり話し合い、こまめにフィードバックをもらうようにしましょう。ただ、頻繁に状況報告を求めてしまうと、“考える”という業務を妨害する可能性があるため、ある程度は広い心で構えることも重要です」

 そして、「考えているフリをしてサボる人もいますが、見た目では見分けることが難しいため、コミュニケーションをとった際に状況を聞くと良いです。キチンと考えていれば、会話の内容も深みがあるものになりますので」と締めた。

 考えることによってイノベーションが生まれ、結果的にはそこで働く人のメリットにつながる。腕を組んで考える同僚に寛容になる空気感が生まれることを期待したい。

文/望月悠木

【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter@mochizukiyuuki

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