大阪府の行政書士の男性が「早朝のコンビニ店内でおにぎりを一口食べたら店員に注意された」とブログで疑問を投げかけ、話題となった。

ブログによると、この店はセブン-イレブンイートインスペースはなく、20〜30代の店員は「コロナ下のルール」などと説明したという。これに対し、男性は「他店で言われたことはない」「どんな条件で止めるのか」などとやりとりした様子が書かれている。

今回の事態について、セブン&アイ・ホールディングス広報部は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「イートインスペースの使用・不使用をふくめ、原則、加盟店のご判断に基づき運用いただいております」としており、現場に対応が任されているのが現状のようだ。

一般的に、イートインスペースのない店内で飲食をする客がいた場合の対応について、複数のコンビニオーナーに聞いてみた。

マスク非着用ともなるため問題だとした上で「カスタマーハラスメント(客による嫌がらせ)という言葉が浮かぶ」「毅然と対応したいが、注意するとトラブルになって時間を取られる」と、対応に苦慮する事情もあるようだ。

●店内で食べ始める客「30年の経験でも出会ったことがない」

あるセブンのオーナーAさんは、「コロナであろうとなかろうと、店内で食べ始めるのは行儀が悪いと言うのが一般的なはずだし、そのような人は30年の経験でもない」と語った。ただ、「普通ならトラブルを避けて何も言わない人が大部分だと思います」という。

従業員が1人で対応する深夜・早朝は特にトラブルになった際の危険性もあり「よほどの腕自慢でなければ不可能。今回の店員さんの勇気ある行動に感心します」と賛辞を送った。

●「本部がダメなものはダメ!という態度をとってほしい」

今回、本部の見解は「店任せ」というものだが、本部により一層の対応を求めるのは、別のセブンオーナーのBさんだ。「ダメなものはダメ!という態度をとっていただかないと現場は疲弊していきます。カスハラには毅然とした態度で対応しましょうと言われたが、それだけではなくなりません」と強調する。

最近では任天堂が、客からの脅迫や侮辱、過剰なサービス要求などのカスタマーハラスメントがあった場合、修理に対応しないことを修理サービス規定に明記して話題になった。Bさんも本部の積極的な意思表示や対応を期待している。

●マスク未着用の来店は珍しくないが、トラブルを避けるためスルー

イートインのない店内で突然飲食をする客に出会うことはレアだが、最近増えてきたマスク未着用の客にどう接するのかについては、各店舗で苦慮しているようだ。

Bさんは、マスク未着用の客に対して直接の声かけは指導しておらず、「言わないというより言えない」のが現状だという。トラブルとなって時間が取られてしまうのが予想できるからだという。

飲み屋街にあるローソンオーナーCさんも「未着用での来店は特に珍しいことでもなく、立地上その方の今後の来店も見込めない泥酔客相手なので、いちいち注意はしませんでした。それでトラブルになって時間をとられる方が面倒くさい」としたうえで、「今もうっかり未着用で来店される方は、当人が気を使って話さないようにしてくれていますし、堂々と未着用の方はトラブルになるので、どちらもそのままスルーしています」と語る。

現場の声を聞くと、マスク未着用やルールを守らない客に対して本当は注意したいが、面倒なことに巻き込まれるリスクを考えて、野放図になってしまっているのが実情のようだ。

●「寛容な社会」とはなにか

行政書士の男性は、その後のブログで、「重箱の隅をつつくような、マスク警察のような者が、生きづらい社会をつくっていることと、そうではなく寛容な社会をつくるよう日々努力しているとの主張です」とつづっている。

一方、Bさんは「店舗のルールを事細かく納得されるまで説明する必要はないですし、守れない方は退店頂いて結構です」ときっぱり。「コロナ下でお客様もストレスが溜まっていて寛容でなくなってきているのではないでしょうか」と投げかける。

「寛容な社会」というのは誰かを苦悩させるものではない、ということは押さえておいた方がいいだろう。

コンビニで客が突然おにぎり食べてトラブル…「多くの店では注意できない」オーナー苦悩