新型コロナウイルスの影響もあり、現在では地方に移住して新しい生活をはじめている若者も多く存在します。メディアでは、地域の人たちと共存しながら楽しく生活している姿が良く報じられますが、現実はそこまで甘くないようです

引っ越し 女性
画像はイメージです(以下同じ)
 今回、話を聞いたのは、東北地方にIターンした佐藤聖実さん(仮名・29歳)です。一流私立大学を卒業後、大手広告代理店に入社した佐藤さん。仕事にやりがいを持ちながらも、新型コロナウイルスの影響で働き方に疑問をもち、去年の春からIターン生活を送っています。

準備万端でIターン

「横浜で生まれ育ったので、せっかくならば地方の全く知らない土地に行って新しい仕事にチャレンジしようと思いました。コロナ禍だったこともあり、多くのサイトがIターンに関する仕事の募集をしていて、自分は就農することをを決断しました。休日に現地に出向いて仕事の確認や、自治体が安く提供してくれる家にも試しに泊まってみるなど、着々と準備を進めていきました」

 そんな佐藤さんのIターン計画は、しっかりと準備をしていたこともあり、滞りなく進んでいったそうです。同じように、Iターンをした若者との交流もでき、新しい生活に心躍らせる毎日が訪れたそうです

わたしが移住したのは東北のある県だったのですが、都会から地域おこし協力隊のメンバーとして参加している人たちもいて交流を持ちました。何かあれば、実家にも3時間くらいで帰れる距離ですし、両親もたまに車で遊びに来てくれています」

やりがいに溢れた毎日を過ごしているはずが…

農業

 新たな人生のスタートを切り、充実した毎日を過ごしているという佐藤さん。現在も自治体から紹介された農家を通じて、研修を受けながら日々勉強しているそうです。

自治体からの要請を受けて、IターンやUターンをした人に農業を教えてくれるのはわりと若い農家の方が多く、ざっくばらんに楽しく農業を学べています。新しい農作物などの育成も伝授してくれて、やりがいを感じながら毎日過ごせています

 しかし、佐藤さんはほどなくして田舎の壁にぶち当たることになるのです

親睦会でセクハラまがいの発言を受ける

「農家の方の間で親睦会のようなものがありました。そういった席では、年配の農家の方からいろいろと話をされるのですが、基本的にはみなさん応援してくれていました。ただ、我々のようなIターンの人間が気に入らない人もいるみたいで、酔いが回ってくると暴言を吐かれることも……。『いい年して結婚もしないの?』や、『農家だけじゃ食べていけないよ』などセクハラまがいの発言をする人もいます

 都会出身だということに嫌悪感を示す農家もいたとか。

「そもそも、自治体は就農する若者を増やしたいという思いがあるのですが、他の農家からしたら自分の食い扶持を減らされると感じる人も多いようです。特に私に突っかかってくるのが、Yさんという50代の農家の方で、会うたびに『どうせすぐ辞めて、都会に帰るんだろ』と言ってくるんです。また、夏の暑い日に少しかわいいウェアを着ていたりすると、農家をなめていると説教してくる。研修をしてくれた若手農家の方も注意をしてくれるのですが、暴言は止まらずじまいで……」

打ち上げでの扱いにキレてしまい…

男尊女卑

 Iターン暮らしをサポートしてくれる人たちは多いものの、田舎ならではの意識で邪険に扱われることも多いという佐藤さん。最近では、飲み会でホステスまがいのこともされたという。

「嫌な思いをするので飲み会にはあまり参加していなかったのですが、お祭りがあった後の地域の打ち上げをするということで致し方なく参加しました。そこでは、お酌をさせられたり、2次会に連れて行かれたスナックデュエットを強要されたりする苦痛を感じました。自分も酔っていたのもあってキレてしまい、夜中なのに号泣しながら自治体の担当者に電話してすぐにお店まで来てもらいました。

 それ以来、ほとんど飲み会に誘われることもなくなったのですが、話しかけてくる人も少なくなったんです……。野菜などを卸している直売所でも、担当者がよそよそしい態度になった。どうも、私にかかわるとすぐに自治体クレームを入れるという噂が立ったようです

独り立ちするために我慢を続ける日々

ぼっち女性

 憧れの田舎暮らしを始めたが、地方ならではの男尊女卑な世界に嫌気が差しているといいます。

ネットや雑誌などでは田舎暮らしの良い面ばかり取り上げられていますが、実際は外からの人間に厳しい人も少なくありません。自分は、田舎の人はみんな優しいと先入観を持ってしまっていたので、すごくショックを受けることも多かったです。もし、Iターンなどを考える場合は、そういったトラブルがあることもしっかりと理解して計画を立てたほうが良いと思います」

 せっかく仕事を覚えたこともあり、嫌な思いをしながら現在でも農家として独り立ちするために頑張っている佐藤さん。特に女性は、IターンやUターンをする場合は、自分が知らない男尊女卑の世界が地方にはあることを知っておくべきかもしれません。

-特集・男尊女卑にびっくりした話-

TEXT/高橋マナブ イラストカツオ(@TAMATAMA_GOLDEN)>

【高橋マナブ】

1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている