現代の日本映画をリードするといってもいい李相日、荻上直子、石井裕也監督の共通点はPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワードの受賞者であること。3人とも、受賞者を対象とした長編映画製作援助システム「PFFスカラシップ」を利用して、商業映画の監督デビューを果たしている。そのいわば原点ともいえるスカラシップ作品と最新作を2本立てで上映する、何とも貴重かつおトクな企画が、12月3日(土) から9日(金) まで、東京を代表する人気の名画座・目黒シネマで行われる。映画の上映後には、トークイベントも予定されており、ゲストとして監督も登壇する。

これは、ぴあ創業メンバーのひとり、林和男「ぴあ」元編集長の著書『ハヤシくんー団塊のぴあニスト』の刊行を記念した特別企画の第2弾。林は1977年に、後にPFF(ぴあフィルムフェスティバル)と名称を変える「‘77自主製作映画展」を企画、その後PFFスカラシップの上限3千万円の製作資金調達などを通じて新しい才能の育成をサポートしてきた。

スカラシップは自主製作で映画作りを始めた監督たちに、プロによる技術指導だけでなく、撮影からポストプロダクション、劇場公開までをトータルプロデュースするシステム。映画は、プロの俳優、プロのスタッフが参加して作られる。

荻上直子監督のスカラシップ作品は『バーバー吉野』(2003年)。もたいまさこが床屋のおばさん役、そこにやってくる少年達のドラマだ。監督の最新作は、松山ケンイチムロツヨシ満島ひかり吉岡秀隆が出演した『川っぺりムコリッタ』(2021年)。

『バーバー吉野』 (C)PFFパートナーズ

李相日監督のスカラシップ作品は『BORDER LINE』(2002年)。沢木哲、村上淳、光石研出演のロードムービー。最新作は、広瀬すず松坂桃李のW主演『流浪の月』(2022年)。今年の映画賞レースを賑わせる作品だ。

『BORDER LINE』 (C)PFFパートナーズ

石井裕也監督のスカラシップ作品は『川の底からこんにちは』(2009年)。満島ひかり、志賀廣太郎、岩松了が出演した傑作コメディ。最新作は、尾野真千子主演の『茜色に焼かれる』。昨年を代表する作品のひとつだ。

『川の底からこんにちは』 (C)PFFパートナーズ

初心忘るべからずというが、3監督にとっても思い出深い作品と評判の最新作。上映後のトークショーでどんなお話が聞けるか楽しみ。映画ファンにとってもまたとない、貴重な機会になるはずだ。

企画協力 犬童一心監督のコメント

誰もその大切さに気づいていなかった時に、「ぴあ」はPFFによって日本の新しい映画作家の発掘を始めていました。
私も、そして多くの監督がそこから、映画作りの道を歩き始めました。日本映画がまだ存在しているのは「ぴあ」のおかげだと思います。

<イベント情報>
ハヤシくん 団塊のぴあ二スト』刊行記念上映企画 第2弾 ―PFFスカラシップから羽ばたいた才能たち―

会場:目黒シネマ(JR目黒駅西口徒歩3分)
http://www.okura-movie.co.jp/meguro_cinema/now_showing.html

荻上直子監督作品上映

上映期間:12月3日(土)〜5日(月)
上映作品:『川っぺりムコリッタ』『バーバー吉野』
※最終回終映後にトークイベント

12月3日(土)
ゲスト:荻上直子監督 / 天野真弓(プロデューサー)

12月4日(日)
ゲスト:金原由佳(映画ジャーナリスト)/ 林和男

12月5日(月)
ゲスト:荻上直子監督 / 荒木啓子(PFFディレクター)

『川っぺりムコリッタ』 (C) 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

李相日監督作品上映

上映期間:12月6日(火)〜7日(水)
上映作品:『BORDER LINE』『流浪の月』
※『流浪の月』上映後に、対談映像(李相日監督 / 林和男)を上映

『流浪の月』 (C)2022「流浪の月」製作委員会

石井裕也監督作品上映

上映期間:12月8日(木)〜9日(金)
上映作品:『川の底からこんにちは』『茜色に焼かれる』
※最終回終映後にトークイベント

12月8日(木)・9日(金)
ゲスト:石井裕也監督 / 対談相手未定

『茜色に焼かれる』 (C)2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

<書籍情報>
ハヤシくん 団塊のぴあ二スト』

著者:林和男
出版社:講談社エディトリアル
価格:2,200円(税込)