ジョン・ドゥ”が、また決裂した…。11月27日放送の日曜劇場アトムの童」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)第7話で、ピンチに陥ったSAGASの興津(オダギリジョー)に助けを求められ、積年の恨みがある隼人(松下洸平)は断固として拒否、だが、那由他(山崎賢人)はアトムの特許“アトムロイド”を取り返すために興津に協力することに。考えの違いの溝は埋まらず、2人はまた別々の道を歩むことになってしまい、“なゆはやコンビ”のファンたちは「ケンカしないで」「せつなすぎる…」と涙した。

【写真】シンプルな白フーディー姿もカッコいい那由他役の山崎賢人

■新生アトム、かつての活気を取り戻す

この作品は、ゲーム業界を舞台に、天才ゲーム開発者・安積那由他(山崎賢人)が自分から全てを奪った巨大資本の企業に仲間たちと共に立ち向かう熱い下剋上バトルストーリー。と共に、那由他の成長物語でもある。令和4年度(第77回)文化庁芸術祭参加作品。また、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」にて世界配信もされている。(以下、ネタバレを含みます)

社名を「アトムの童」に変えて再出発した新生・アトム玩具は、数年が経ち、新たな社員も増えてかつての活気を取り戻していた。再出発の日、社員全員集合した場に姿が見えず、視聴者から去就が心配されていた鵜飼(林泰文)は、独立して投資コンサルタント会社を起業していたことが判明。「鵜飼さん居た!」「元気そうで何より」「独立してたんだ。がんばれ!」など、2週間ぶりの登場を喜ぶ声が多く聞かれ、またまた“みんな大好き鵜飼さん”状態となっていた。

■那由他と隼人は次のステージに向かうことに

一方、那由他と隼人(松下洪平)はゲームクリエイターの交流会で、シアトルから来たティム(モクタール)と知り合う。“ジョン・ドゥ”の大ファンだという彼は、那由他と隼人が作ったシリアスゲームに自分の技術を生かしたいと考えていて、2人もそのアイデアに大いに興味を示すのだった。

軌道に乗り安定してきたアトムは、本格的に本来のおもちゃの生産業も復活させることに。そして、アトムでの自分たちの役割は終わったと感じた那由他と隼人は、ティムの「シアトルで一緒に会社をやらないか?」との提案を受け入れて新たなステージに向かうことを決め、海(岸井ゆきの)にアトムを辞めたいと告げるのだった

急で、そして考えてもいなかった彼らの退職の申し出に、戸惑い引きとめる海だったが、「挑戦しなかったら後悔すると思う」との隼人の言葉を聞いて、それ以上何も言えず、最終的には彼らの想いを受け止め、こころよく送り出して、2人の今後を全力で応援することにする。

■興津の協力要請に那由他が出した答えは

彼らがシアトルに旅立つまであと3日となったとき、SAGAS社長の興津がアトムにやってきた。SAGASが投資会社に買収されそうで、助けてほしいと頼みに来たのだ。買収の目的は“技術の市場開放”で、興津が奪ったアトムの特許・アトムロイドが誰でも使えるようになる、と聞き、繁雄(風間杜夫)以下アトムの社員は良いことだと喜ぶが、それは本来の目的以外で悪用される恐れもあるということだ。だから、SAGASのゲーム事業を売却するつもりの投資家の思惑を阻止するために、オリンピックeスポーツで初めて採用されるゲームを開発して、SAGASの力を誇示したいとのことだった。

2週間後の株主総会で、とりあえず数10秒の見せ場だけ作って、株主たちに期待感を抱かせられれば良いのだと言う興津。彼は、うまくいった場合の協力の礼としてアトムロイドを返す、と言うが、アトム側は全員が「興津になんか協力しない」と息巻く。しかし那由他だけは「“アトムの魂”であるアトムロイドを取り戻したい」と、興津の頼みをきいてやろうとする。

これまで興津にさんざん辛酸を舐めさせられてきた隼人は、「返す、なんてのは口約束だよ。真に受けんなよ!」と怒り、繁雄にも「気持ちは嬉しいが、SAGASにいい顔はできない。これはプライドの問題」とハッキリ断られてしまった。

翌日、海はSAGASに「協力はしない」とアトムの立場を告げに行く。そしてロビーで協力するために来た那由他と鉢合わせする。なぜ協力するのかと問う海に「アトムのファンだから」と那由他は答えた。

■考えの溝が埋まらない那由他と隼人…

シアトルへ行く日が迫り、隼人は那由他を呼び出す。そして、盗られた物を奪い返すためにSAGASで働くのは昔の自分と同じで、そのやり方は違うと言ったのは那由他だ、と。「犠牲になるな」と言う隼人に、那由他は「犠牲じゃない。オレ、ワクワクしてんだよ」と告げる。アトムロイドを使いこなすにはSAGASの技術力が必要で、改めてSAGASのすごさを実感した那由他は「どんなゲームができるかワクワクしてる」と、キラキラした表情を見せるのだった。

このままアトムをほっておけないと言う那由他と、ティムを裏切るのかと言う隼人…2人の溝は埋まらない。そして、「シアトルに行くのが2週間遅れるだけ」と言った那由他に「オマエ、ほんっっとーにわかってないんだな、自分のこと!」と、ついに隼人がブチギレ。

那由他のことを誰よりもわかっている隼人は「オマエは1度始めたらのめりこんで、納得いくまでとことんやりたいと思うヤツだ。数10秒のデモを作るだけじゃ満足いかなくなって、完成するまで何年もSAGASでゲームを作り続けるよ!」と涙目で怒りをぶつけた。

隼人の熱い訴えを冷静な表情で聞く那由他。隼人は、那由他に会いに来た時点で、彼の決断を変えられないことはわかっていたはずだ。そして、乗りかかったら最後、完成するまでやめられなくなることは、那由他本人も薄々感じていたはず。それなのに「2週間で手を引く」と、その場しのぎというか非現実なことを言うから、隼人はブチギレたのだと思う。今回の別れはもう2度と同じ道に戻れないかもしれない…2人にとって重大な決断になるかもしれない…と隼人は覚悟しているが、那由他はそこまで深刻に考えていないのか?…そんなジレンマが見えるような隼人の怒りだった。

イヤな沈黙が続き、隼人が口火を切った。「一応、別れの挨拶だけ言っておこうと思って……。じゃあな!」。そう言って那由他に背を向けて彼は去った。

振り返ることなく去っていくその後ろ姿をしばらく見送った後、那由他のポーカーフェイスが少し歪んだ。そして隼人の背中に向かって「じゃあな」とつぶやき、泣きそうな顔で隼人とは逆の方向に歩き出した。どちらの言い分もわかるだけに、せつなさが増す別れ方だ。「このまま別れちゃうなんて、イヤだ」「もうケンカしないで」など、“なゆはや”コンビのファンたちの哀しみコメントがTwitterにもあふれていた。

那由他と隼人、1人でももちろん才能にあふれているが、2人が揃ったときはその何倍もの力を発揮する。お互いにとって唯一無二のパートナーだ。三たび“ジョン・ドゥ”として活動する日が来ることを祈りながら、ラストまで2人の動向を見守りたい。

山崎賢人の崎は正しくは「たつさき」

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

那由他と隼人はまた決別してしまう…/ (C)TBS