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8年以内で「寿命」迎えるケースも

EV(電気自動車)についてたびたび話題に上がるのが「バッテリー寿命」だ。英国の専門業者の調査によると、わずか8年でバッテリー寿命が尽きる車両もあれば、もっと早く寿命が来る車両もあるそうだ。

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バッテリー性能解析を専門とする英国のシルバー・パワー・システムズ(SPS)社は、バッテリーのデータと健康状態を追跡・監視しているが、特に商用車として使用される車両群で性能に大きなばらつきがあることが確認されたという。

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EVのバッテリー劣化具合は、中古車の販売価格にも影響する。

SPSの創業者で最高技術責任者のピート・ビショップ氏は、「1つの車両群でも、バッテリーの健康状態には最大10%のばらつきがあります。多くの商用車でバッテリー容量の80%が運用上の寿命とみなされることを考えると、10%の劣化はその半分に相当します」と述べている。

しかし、何をもって「寿命」とするかは、車両の使われ方によって異なる。同社のプログラム・マネージャーであるリアム・ミフスード氏は、次のように説明する。

「用途の決められた車両を運用する人は、おそらく80%を寿命とは見なさず、もっと長く使用するでしょう。また、遠出をしないのであれば、自家用車の所有者も80%で満足するかもしれません。しかし、70%になると、バッテリーの劣化が顕著になることが分かっています」

中古車価格に影響 販売車の対応は

SPSの調査結果は、テレマティクス・プロバイダーであるジオタブ社の調査結果とも一致する。同社もEVのバッテリー状態を測定しており、オンラインの比較ツール「EV Battery Degradation」でその結果を公表している。

このデータは、24のメーカーとそのモデルからなる6300台のEVに基づいたもの。ジオタブによると、製造後6年半の平均的なバッテリー劣化率は13.5%である。記録されたものの中には、BMW i3の3つのモデルイヤーがあり、最も古い2017年のものは、3年弱で16%という劣化率を示している。

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バッテリーの劣化の速さは使用環境に影響を受ける。記事内のデータは英国内の実績である。

一方、2014年式の日産リーフでは、ほぼ6年で23%の劣化が見られる。2015年式のテスラ・モデルSは、4年半で10%劣化していた。

AUTOCAR英国編集部は、ジオタブのデータを、英国内で個人が販売する中古車と比較してみた。すると、2012年式で走行距離16万4000kmの日産リーフでは、メーター内の残量計のバーが12本中8本しかなく、バッテリーが約30%劣化していた。その結果、所有者によるとこの車両の実走行距離は80kmにとどまるという。

5万3000km走行した2015年式のBMW i3は、19%の劣化が見られた。所有者は、フル充電でエコプロモードの場合、夏場の走行可能距離は135km程度だと主張している。2014年式で走行距離11万2000kmのテスラ・モデルSは、フル充電時の航続距離が新車時の450kmから435kmに減少していた。

これらの個人販売とは対照的に、英国内の中古車ディーラーバッテリー容量や航続距離についてあまり積極的でないことがAUTOCARの調べでわかった。しかし、あるEV専門ディーラーは、最近、広告にバッテリーの健康状態を表示するようになった。ブリストル近郊に本拠を置くドライブ・グリーン社は、バッテリーモニターを使ってバッテリー証明書を作成し、車両と一緒に表示している。

2014年式で走行距離8万7000kmのルノー・ゾエの場合、96%という数値が示されている。営業担当者によると、このサービスを提供しているのは英国でこの店舗だけだそうだ。

しかし、この測定方法の信頼性については、懐疑的な見方をする業者もいる。あるEVディーラーはAUTOCARに対し、第三者のシステムで分析する前に、バッテリーがどのような状態であったかを知る必要があると述べている。

「温まったバッテリーは良い数字を出すので、販売者はまず車両を走らせてからチェックするんです。ディーラーが一般消費者に販売するだけでなく、ディーラー同士の売買でも同じようなことをしているのを見たことがあります。こうすることで、より良い価格で販売することができるのです。一番いいのは、車両の航続距離表示で行くことです。当社は何百台ものEVを販売していますが、これを基準にすると、毎年1~2%のバッテリー劣化が見られます」

EVの寿命はエンジン車と同じ?

バッテリーの劣化について明確に把握していると期待される団体の1つがレコバス(Recovas)である。自動車リサイクル会社のEMR、BMWなどの自動車メーカー、ウォーリック大学、英国バッテリー産業化センターが参加する団体で、使用済みバッテリーのサプライチェーン構築を目指している。その一環として、EMRは使用済みのEV用バッテリーを回収しているが、同社の代表取締役であるロジャーモートン氏は、供給に関する限り、まだ初期段階であると述べている。

「EVのバッテリーは、誰もが予想していたよりもはるかに長持ちしています。バッテリー経年劣化しますが、クルマを3台以上所有する人にとって、航続距離はそれほど問題にはなりません。短距離移動のための2台目、3台目でしょうし、いずれにせよ新車よりずっと安いので、織り込み済みなのでしょう」

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EVのバッテリー寿命は大きな問題ではないとの専門家もいる。

「EVはエンジン車と同じくらい長持ちすると思いますが、構造がシンプルなのでもっと長いかもしれません。バッテリーの消耗が激しいEVが大量に出回るようになるのは、エンジン車の販売が終了してしばらく経った2045年頃でしょう」


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