ワイルド・スピード」や「ジュマンジ」シリーズなどでおなじみの“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソンが鍛え抜かれた肉体を武器に、“バットマン”、“スーパーマン”のDCユニバースの世界に殴り込む!世界74か国で初登場No.1大ヒットの話題作『ブラックアダム』(12月2日公開)は、最恐のアンチヒーローにして民衆の伝説的な英雄でもある“破壊神”ブラックアダムの戦いを描いたスペクタクル・アクション大作。5000年の眠りから現代に目覚めた彼は立ちはだかる者を次々と駆逐し、超人的なパワーを持つヒーロー軍団、JSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)と戦いを繰り広げながら、自身がなすべきことを模索していく。主演と製作を兼任したジョンソンはDCのマルチバース化に意欲的で、今後のシリーズ展開としてはバットマンスーパーマンアクアマン、シャザムらの物語ともリンクする可能性大。すなわち、壮大なDCユニバースの新章としても注目すべき1本なのだ!

【写真を見る】ドウェイン・ジョンソンの鍛え抜かれた肉体が映える"破壊神"ブラックアダム

言うまでもなく、アメコミ原作の映画は、キャラクターの魅力が命。本作では、ブラックアダムはもちろん、彼の暴走を食い止めようとするJSAの面々も個性的で、その活躍に目を奪われること間違いない。本稿では『ブラックアダム』に登場する多彩な超人たちの魅力を、DCとしのぎを削るマーベルコミックスのスーパーヒーローたちに照らし合わせながら検証していきたい。

■5000年の眠りから目覚めた脅威の破壊神"ブラックアダム"

まずは主人公のブラックアダム。元々は古代国家の奴隷だった彼は、ある出来事を機に神々の力を手にしてヒーローとなるも、そのパワーを、息子を殺した権力者への復讐に使ったことで幽閉される。愛する者を失った悲痛なバックボーンは「X-MEN」シリーズのマグニートーや「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のドラックス、「アベンジャーズ」の中心メンバー、ソーにも通じるものがある。ソーといえば雷神として知られているが、破壊神であるブラックアダムもまた、その力を解き放ったならば、容易に文明を破壊できる危険な存在。しかも、ソーと同様に雷を操ることも可能なのだ。

さらに、5000年の眠りから目覚めたためなのか、現代社会の常識がいっさい通じないという面でもソーと似ている。例えば、バイオレンスな映像が流れているテレビを見て、自身が攻撃されそうになっていると勘違いして破壊するあたりはもはやお約束か?ほかにも、扉を開けたり回り道をしたりするのが面倒くさいからか、ドアや壁を突き破ってしまうこともしばしば…。肉体的な強さとおちゃめな性格、そのギャップで観る者を魅了していく。なお、宇宙規模的な破壊のパワーを放つという、チート級の力を持つ設定は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)でもサノスとわたり合っていたキャプテン・マーベルを連想させる。破壊か平和か、ブラックアダムはその選択一つで人類の脅威にもなりかねない…。

■JSAのリーダーにして空の支配者"ホークマン"

そしてここからは、ブラックアダムを止めようとするヒーロー軍団、JSAの面々を見てみよう。リーダーのホークマン(オルディス・ホッジ)は、その名のとおり、ホーク(=鷹)のような翼を持ったアーマーを身に着け、空を縦横無尽に飛び回る。翼を攻撃や守備にも応用するなど、ビジュアル的には『キャプテン・アメリカ ウィンターソルジャー』(14)で初登場したファルコンで、平和のために尽力する正義への忠誠心、個性的なメンバーをまとめるリーダーシップはまさにキャプテン・アメリカと言える。だが一方で、ブラックアダムを危険視するあまり周囲の言葉に耳を貸さない、責任感は強いもののプライドが高くて融通が利かないなど、ぶっちゃけると面倒くさい性格(?)でもある。いずれにしても、極めて人間的な複雑さを持ったキャラクターだ。

■精神的支柱としてJSAを支える魔術師"ドクターフェイト"

ホークマンの長年の友人で、本作の最終決戦で重要な役割を担うのが魔術師ドクターフェイト。「007」シリーズの5代目ジェームズ・ボンド俳優として知られるベテラン、ピアース・ブロスナンが扮するとなれば、そのキャラの重厚さも理解できるというものだ。JSAの最年長者である彼は、「アベンジャーズ」シリーズでおなじみのヴィジョンのように、常に沈着冷静で、どこか達観したところがある。未来を視ることもでき、魔術を使ってブラックアダムを翻弄する様はドクター・ストレンジのようであり、予知能力や分身術を使いこなす点では「X-MEN」のプロフェッサーXを連想する方も多いのでは?様々な修羅場をくぐり抜けて来たことを感じさせる熟練さが頼もしい。

特にホークマンとのやり取りはシリアスながらも、親子や師弟のような関係性が垣間見えてほほえましい。 ブラックアダムをなんとしてでも捕まえるという強気な姿勢を貫くホークマンに対し、ドクターフェイトはそっと諭しながらも、最後はホークマンの判断に委ねており、あくまでもアドバイザー的なポジションでリーダーを支えている。戦いでは接近戦を得意とするホークマンを魔術でサポートしており、ツートップとして連携しながらブラックアダムに立ち向かうアクションは必見だ!

■頭脳明晰でクールな嵐使い"サイクロン"

15歳でナノテクノロジー実験の被験者となった19歳のサイクロン(クインテッサ・スウィンデル)は、今回の任務で招集された唯一の女性メンバー。嵐を自在に操ることができ、敵や物を吹き飛ばしたり(コントロールも抜群!)、自身を宙に浮遊させたりしながら戦うスタイルを得意としている。その姿からは「X-MEN」のストーム、「アベンジャーズ」や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(22)のスカーレットウィッチを彷彿させる。それでいて、性格はMCU版「スパイダーマン」シリーズのヒロイン、MJのようなクールなキャラクターで、JSAではまだ新人ながら、明晰な頭脳を駆使してチームに貢献する様子は「ブラックパンサー」シリーズのシュリのようでもある。

■愛嬌たっぷりのボケ担当?巨大化人間"アトム・スマッシャー"

もう一人、JSAには新人がいる。一見すると、どこにでもいそうな20歳の青年アル・ロススタイン(ノア・センティネオ)。彼は肉体の分子構造を変えることで巨大化し、馬鹿力を発揮するヒーロー、アトム・スマッシャーへと変身する。マーベルではアントマン巨大化する能力を身に付けていたが、スマッシャーの動きは(巨大化した)アントマンよりもスピーディで、そこにアクションの見せ場が宿る。一方で、MCU版「スパイダーマン」のスパイダーマンことピーター・パーカーのようないまどきの若者の楽観主義も見て取れ、ジェット機から飛び降りる際に躊躇し、無駄口が多いところなどは、しっかり者のサイクロンとは反対にヒーローとしてはまだまだ未熟さが目立つ。巨大化するがゆえに、常人のサイズ感をつかめず、戦いの場がどこなのかすらわからなくなってしまうという、まじめなのにおふざけキャラに見えてしまうのはご愛嬌。ちなみに、日本語吹替版でスマッシャーの声を担当するのは、トム・ホランド演じるピーター役を務めた榎木淳弥。これはナイスなキャスティングだ!

アンチヒーロー、ブラックアダムとJSAのバトルはスリリングであるだけでなく、ユニークな疑問を観客に投げかける。なにが善で、なにが悪か?誰が正義なのか?そもそも正義とはなにを意味するのか?『ジャングルクルーズ』(20)に続いてジョンソンタッグを組んだジャウマ・コレット=セラ監督はヒロイックな作品を意識しつつも、ドラマにスパイスを忍ばせ、そこから浮かび上がったテーマ性でガツンとくる歯応えを与えてくれる。あなたにとって理想のヒーローは誰か?『ブラックアダム』の痛快な物語と多彩なキャラクターから、それを感じ取ってほしい。

文/有馬楽

『ブラックアダム』に登場するヒーローたちを、マーベルヒーローと比較して解説!/[c]2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM &[c]DC Comics