グラミー賞を6回受賞し、アルバムやシングルのトータル・セールスは2億枚以上。音楽史にその名を刻む数々の偉業を成し遂げた伝説の歌姫ホイットニー・ヒューストン。世界中に衝撃を与えた突然の死から10年。彼女の半生を描いた『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』が12月23日(金)より公開される。ホイットニーがその生涯で出演した劇映画は4作品。本稿では、彼女の天性の歌声を堪能できるその4作品を紹介していこう。

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■ホイットニーといえばやはりこれ!珠玉のラブストーリーと名曲を同時に味わう『ボディガード

1985年にリリースされたデビュー・アルバム「そよ風の贈りもの」の大ヒットをきっかけに世界的人気を獲得したホイットニーがスクリーンデビューを飾ったのは1992年。「スター・ウォーズ」シリーズなどで知られるローレンス・カスダンが脚本&製作を務め、名優ケビン・コスナーと共演した『ボディガード』(92)で、ホイットニーは殺害予告を受けた人気歌手のレイチェルを演じ、女優としても注目を集めることに。

日本でも年間配給収入第2位となる大ヒットを記録した本作といえば、映画史上もっともサウンドトラック盤が売れた作品としても有名だ。なかでもそこからシングルカットされ、全米シングル・チャートで14週連続1位を記録した名曲「オールウェイズ・ラブ・ユー/ I Will Always Love You」は、発売から30年経ったいまなお世代を超えて愛されている。2020年10月にはYouTubeでのMV再生数が10億回を突破するという20世紀のソロアーティストとして初めての快挙を成し遂げ、2022年11月にはその記録を13億回まで伸ばしている。

また本作からは、2つの楽曲が第65回アカデミー賞歌曲賞にノミネートされている。しかし意外なことに「オールウェイズ・ラブ・ユー」はノミネートされておらず、選出されたのは挿入歌の「I Have Nothing」と「Run to You」。ほかにも何曲もホイットニーの歌う楽曲が使用されており、“人気歌手役”という一世一代のハマり役を演じたホイットニーの演技と歌声の両方をとことん味わうことができるはずだ。

■普段と違う歌声が聴ける!女性たちの生き様を描いた『ため息つかせて』

2本目の出演作となったのは、後に『ラストキング・オブ・スコットランド』(06)でアカデミー賞主演男優賞を受賞するフォレスト・ウィテカーがメガホンをとり、テリー・マクミランのベストセラー小説を映画化した『ため息つかせて』(95)。4人の黒人女性の生きざまを描いた物語で、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(公開中)のアンジェラ・バセットらが共演。

ホイットニーが演じたのは理想の男性を求めるテレビプロデューサーのサバンナ役。劇中では「ため息つかせて/Exhale(Shoop Shoop)」や「Why Does It Hurt So Bad?」「Count On Me」など複数のホイットニーの楽曲が登場し、いずれも人気ソングライターの“ベイビーフェイス”が手掛けたものだ。なかでもメイン楽曲の「ため息つかせて/Exhale(Shoop Shoop)」は、ホイットニーのパブリックイメージでもある、声量を存分に発揮する楽曲とは異なり、肩の力を抜きながらささやくような美声が堪能できる楽曲となっている。

■名優と共演した『天使の贈り物』では、“原点”のゴスペルを披露

ビッグ』(88)や『プリティ・リーグ』(92)などの傑作を手掛けたペニー・マーシャル監督がメガホンをとり、デンゼル・ワシントンが共演した『天使の贈り物』(96)は、これからやってくるクリスマスシーズンにピッタリなロマンティックで心温まるラブストーリー。老朽化した教会の牧師を救うため、天国から舞い降りてきた天使の男が、すばらしい歌声の持ち主である牧師の妻に恋をしてしまうという物語だ。

ホイットニーが歌うメイン楽曲の「アイ・ビリーヴ・イン・ユー・アンド・ミー/ I Believe in You And Me」をはじめ、サウンドトラック盤はほとんどホイットニーの歌う楽曲で構成されている。また、ポップスで数々の名曲を送りだしてきたホイットニーが、自身の原点であるゴスペルを披露していることでも話題を集めた。

■16年ぶりの映画出演で、気鋭シンガーとコラボ!遺作となった日本未公開作

その後しばらく映画出演がなかったホイットニー。アン・ハサウェイの映画デビュー作となった『プリティ・プリンセス』(01)とその続編で製作を務めるなど、活動の場を広げていた彼女がスクリーンにカムバックしたのは『ホイットニー・ヒューストン/スパークル』(12)。実に前回の映画出演から16年ぶりとなり、日本では劇場未公開のままソフトリリースされた本作は、“女優ホイットニー・ヒューストン”の最後の作品となった。

アイリーン・キャラが主演を務めた同名映画をリメイクした本作は、スターを目指す3人姉妹とその母の絆を描いた感動のミュージカル。人気シンガーのジョーダンスパークスと「ファンタスティック・ビースト」シリーズのカルメン・イジョゴ、「ソニック・ザ・ムービー」シリーズのティカ・サンプターが3人姉妹を演じ、ホイットニーは彼女たちの母で元歌手であるエマ役を演じている。

劇中では貫禄たっぷりの演技と共に、ゴスペルのスタンダードナンバー「ヒズ・アイ・イズ・オン・ザ・スパロウ/ His Eye is on the Sparrow」を歌うホイットニーの姿を見ることができる。また、スパークスと共に歌い上げる「Celebrate」も必聴!

■名曲誕生の瞬間と、ホイットニーの栄光の半生を映画で味わう!

そして『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』では、ホイットニーと、彼女の才能を見出した音楽プロデューサーのクライヴ・デイヴィスが世に送り出した、ジャンルも人種も超えた“グレイテストソング”誕生の瞬間や、ホイットニーの栄光の半生が数々のヒットソングと共に臨場感たっぷりに描かれていく。

ホイットニー役を演じるのは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(17)のナオミ・アッキークライヴ役を『プラダを着た悪魔』(06)などで知られるスタンリー・トゥッチが演じ、ボビー・ブラウン役には『ムーンライト』(16)のアシュトン・サンダース。『ボヘミアン・ラプソディ』(18)の脚本家アンソニー・マクカーテンが脚本を手掛け、『ハリエット』(19)のケイシー・レモンズ監督がメガホンをとった。

劇中には映画のタイトルのも採用されているダンスナンバーの「素敵なSOMEBODY/ I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」をはじめ、「オールウェイズ・ラブ・ユー/ I Will Always Love You」や「Greatest Love Of All」など、ホイットニーを代表する様々な楽曲の数々が登場し、改めてその魅力を再確認できることだろう。

是非とも高品質の音響で味わえる映画館に足を運び、不朽の名曲の数々を全身で体感してほしい!

文/久保田 和馬

没後10年、ホイットニー・ヒューストンの出演映画4作品をプレイバック(『ボディガード』)/[c]Everett Collection/AFLO