冬を迎えますます寒さが厳しくなるイギリスでは、物価急上昇が拍車をかけ、路上にはこれまで以上にホームレスの姿が目立っている。
去年のクリスマス前、イギリス東海岸にある都心の路上で、路上で生活をしている男性が、犬のそばで死亡した。
ホームレスとして知られていたその男性は、いつも愛犬と一緒で、とてもかわいがっていた。その日、犬が凍えないようベッドを作ってやっていた姿が目撃されていたが、その数時間後、亡くなったことが確認されたという。
去年の12月18日の朝、イギリス東部ハルの中心地にあるコーヒーチェーン店「COSTA(コスタ)」のすぐ外で、1人の男性が亡くなっているのをコスタの従業員が発見した。
男性の名は、ジョナサン・エラリントンさん(41歳)。そばには、ジョナサンさんがかわいがっていたペットのジャック・ラッセル「テディ」がいた。
ジョナサンさんは、厳しい寒さの中でCOSTAの前の歩道に横たわるため、犬のベッドを作っている姿が前夜に目撃されていた。
しかし、その数時間後の午後8時半頃に意識を失い、帰らぬ人となった。
先日、ジョナサンさんの死因審問が行われ、街頭のCCTV(防犯カメラ)が確認された。
すると、数人の通行人がジョナサンさんの前に食べ物を置き、大丈夫かどうかを確認している姿が捉えられていた。
だが翌朝、何時間も動かないジョナサンさんを不審に思ったCOSTAの従業員の女性は、ジョナサンさんが死んでいることに気付いた。
ジョナサンさんは、「いつも犬を連れたホームレス」として周囲に知られていた。実際には家があり、パートナーも家族もいたようだが、犬と路上で暮らすことを選択したようだ。
死因は薬物依存症
死後の検査では、ジョナサンさんの体内に潜在的に致死レベルのヘロインが含まれていることが判明した。
ジョナサンさんの家族数名とジョンさんのパートナーが出席した死因審問で、地域の検死官であるロレイン・ハリスさんは、ジョナサンさんの死因は「薬物関連」であると結論付けた。
ジョナサンさんの姉は、今は亡き弟のことをこのように語った。
私と弟は、7人きょうだいの中で育ちました。弟は、数学と歴史が好きで頭は良かったのですが、中学校が好きになれず、そこでの出来事が精神的に大きな影響を与えてしまったようで、後にそれが依存症の原因になったと考えています。
でも、弟には娘がいるので、麻薬の習慣を断ち切ろうと必死になっていました。娘に会いたいからと、2年ほど全く薬に手を出していなかった時期もありました。その間、カフェやDIY店で仕事を見つけたりしていたし、私の息子たちの面倒も見てくれたりすることもあったんです。
息子たちにとっては、弟はいつも面白いおじさんという存在でした。弟は、心はとてもやさしい人でした。
だけど、薬物だけは断ち切ろうとするのが難しく、何度も失敗していました。
姉によると、ジョナサンさんには数年越しのパートナーがいて、ちゃんとした家もあったという。
でも、弟はテディと路上で眠ることが多かったのです。だから、周りの人は弟をホームレスだと思っていました。弟自身も、特に否定していなかったようです。
愛犬をかわいがるホームレスとして知られていた
亡くなる数日前、寒さが厳しい路上で過ごすのは大変だろうと、地域の人たちは彼らが、ホームレス支援をしている避難所になんとか入り込めないかと探し回ったが、犬を連れて宿泊できる施設が見つからなかったそうだ。
周りが彼にやさしかったのも、テディと一緒に路上にいるジョナサンさんは、決して暴力的ではなく、おだやかだったからだ。
いつも愛犬をかわいがっていたホームレスとして、人々はジョナサンさんの死を悼んだ。彼が亡くなった場所には、彼を知る多くの人から花が供えられたという。
Johnathan Ellerington’s beloved Jack Russell Teddy was by his side when his body was discovered after he was allegedly denied accommodation because of his pet.https://t.co/NYp8Q9pPL2
— Metro (@MetroUK) June 9, 2022
心を病み、薬物に走ってしまったジョナサンさんだが、家族にはどうしても迷惑をかけたくなかったのだろう。
唯一愛犬だけに心を許し、心の支えとした男性は、愛するテディに看取られながら、厳しい寒さの中、旅立っていった。
なお、その後テディはジョンさんの家族に引き取られたということだ。
References:The tragedy outside Costa – rough sleeper Jon made final bed for beloved dog then died in the night/ written by Scarlet / edited by / parumo
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