軽にも「360」普及を 四輪全機種へ
ホンダは12月1日、全方位安全運転支援システム「Honda SENSING360(ホンダセンシング・サンロクマル)」と、ホンダセンシングのフラッグシップとして世界で初めて形式認定を取得した「Honda SENSING Elite(エリート)」の次世代技術を報道関係者に公開した。
【画像】写真で理解する次世代ホンダセンシング360【2024年~】 全42枚
ホンダが目指す“次世代”の安心・安全技術をいち早く体験した形だ。
ホンダはこれまで、交通に関係するすべての人が事故に遭わない社会の実現を目指すスローガンとして「Safety for Everyone」を掲げ、その実現に向けてハード/ソフトの両面で安全技術の研究開発に取り組んできた。
その実現に向けたステップとして、ホンダが展開してきたのが安全運転支援システム「ホンダセンシング」で、同年12月からは「ホンダセンシング・エリート」で培った知見を生かした「ホンダセンシング360」を中国市場を皮切りにスタートさせることがすでに発表されている。
今回、公開された技術は、このホンダセンシング360の次世代技術として発表されたものだ。
ドライバーの異常や周辺環境を検知して事故を未然に防ぐことで、ドライバーの運転負荷をさらに軽減することを目的とし、2024年以降、ホンダセンシング360の追加機能としてグローバルで展開を予定する。
“すべてのホンダ車に搭載される”見込みで計画されており、それは上級グレードの車種にとどまらず、軽自動車なども分け隔てなく対象としているのが、ホンダセンシングから続くホンダの基本的な安心安全に向けた考え方と言っていいだろう。
「きわめて自然」 次世代360体験
また、2020年代半ばには、ホンダセンシング・エリートの次世代技術も予定される。
人のように経験しながら成長するホンダ独自のAI技術を駆使して、複雑なシーンの認識や一般道のような複雑な環境への対応を可能とする。
具体的にはリスクを最小限に抑えながら自宅から目的地まで一般道も含めた形で安全でシームレスな移動を支援する。その中には、幹線道路での渋滞時のハンズオフ機能など一般道での運転支援、高速道のジャンクションなどでの合流・分岐シーンでのハンズオフの実現。さらには自宅での自動駐車支援なども含まれる。
ここからはホンダセンシング360に追加される次世代技術について、その体験をレポートしていきたい。
ハンズオフ機能付き高度車線内運転支援機/ハンズオフ機能付き高度車線変更支援機能
システムがアクセル/ブレーキ/ステアリングを操作し、ドライバーがハンドルから手を放しても、車速や車線内の中央付近の走行を維持できるように支援し、ドライバーの運転負荷軽減に役立てるものだ。
最大のポイントは、手を放したままでカーブにさしかかってもその曲率を事前に読み取り、最適な車速にまで減速してスムーズなコーナリングを支援することにある。
そのため、ドライバーは前方さえ視認していれば、高速道路や自動車専用道路において、ハンドル操作なしで走行することができるのだ。
作動中はきわめて自然に行われ、車線の中央をピタッと張り付くように走行するため、走行はきわめて安定。
それだけに不安を感じることは一切なかった。ただ、減速については「減速し過ぎるかも」と感じることも。開発担当者によれば「実証を重ねることで最適な減速を検証するほか、場合によっては調整機能を追加すべきかなども検討していきたい」と話していた。
追い越したいのは、自分だけじゃない時
もう1つはいわゆる“自動レーンチェンジ機能”だ。
ハンズオフのままで走行中、「高度車線変更支援スイッチ」をONにすると、周囲をシステムが確認した上でウインカー操作や加速・減速・ハンドル操作を支援する。
流れとしては、同じ車線上で遅い先行車を検知すると、「右車線を確認ください。車線変更をします」とドライバーに知らせて車線を移動。
追い越しが完了し、設定速度で走行可能とシステムが判断すると「左車線を確認してください。車線を変更します」と告知して元の車線へ復帰する。
システムが周囲360°の安全をセンシングしているので、速いクルマ・並走しているクルマ(白のシビック)がいる場合は、車線変更を待機するケースも体験できた。
また、ナビゲーションで目的地を設定している場合は、ジャンクションや出口に近づくとその時の車線変更も支援するという。
ドライバー異常時支援 普及への一歩
ドライバーの身に突然異常が発生した際の緊急支援を行う機能だ。
システムがドライバーの視線などを検知できなくなると、システムはドライバーに対して自動的に警告を行いながら操作要求を行い、その反応がないとさらに強い音と表示へと切り替えて警告。
同時に身体の硬直や突っ張りなどによる無意識の急加速を防止するため、アクセル操作の完全無効も実施される。その上で最後には同一車線上でハザードランプとホーンを併用して周辺へ注意喚起しながら減速~停車。停車後は緊急通報サービスへ自動的に接続される。
システムの対応はあくまで同一車線上で行うもので、車線移動や路側帯への誘導は含まれない。また、「搭載車をできるだけ広げる」目的から、この機能において高精度マップは使わず、直線路/カーブなどへのこだわりなく停止させることとなっている。
また、緊急通報サービスへの接続では、仮にドライバーが呼びかけに応じなかった場合は、車両のGPS情報から位置を特定して緊急車の手配を行うこととなっているそうだ。
システムのドライバーの視線検知は、ダッシュボード中央に搭載された近赤外線ライトを内蔵したドライバーモニタリングカメラによって行われる。赤外線を使うため、昼夜を問わずドライバーの顔の向きや目の開閉状況などを検知できるのが特徴だ。
ただ、ステアリングの操作は中央付近を走行するよう支援するが、何らかの要因でドライバーがハンドルの異常操作をしてしまった場合は、その操作が優先されてしまうとのことだった。
ドライバーの状態&前方リスクを検知?
この支援は、漫然とした運転の中で発生しがちな事故リスクを未然回避することを目的に開発された技術で、大きく(1)注意喚起、衝突注意警報(2)車線内回避支援技術(3)緊急回避操舵支援技術の3つの機能がある。
(1)はシステムがドライバーの状態を検知して注意力低下時や漫然運転時に歩行者・自転車・路肩停車中の車両などに衝突の危険がある場合に減速して未然に注意喚起し、同時に車線をはみ出さない範囲でステアリング操作支援を行う。
(2)は同様に衝突の危険がある場合に、なおかつ車線内に十分な回避スペースがあるとシステムが判断すると、車線内で減速を続けながら衝突回避を支援する。
(3)は衝突の恐れがある状況下で、ドライバーがステアリング操作をすると、“減速をし続けながら”ステアリング操作を支援する。
この一連の支援で驚いたのは、支援が違和感なく自然に行われていることだ。
試乗では制御の状況を把握するため、ドライバーの足元がモニタリングされていたが、ドライバーがアクセルを踏んでいる状態にもかかわらず車両は衝突回避のために、車間制御やセンタリング制御を行っていたのだ。なので、衝突被害軽減ブレーキのようにブレーキをかけたというよりも、アクセルワークでの減速を上手に組み合わせて制御するといったイメージが適切だろう。
また、よくあるシーンとして、先行車が遅いために車線変更をしようとしている時、ドライバーはバックミラーに注意がいっており、そこで先行車が減速したとしてそれに気付くのに遅くなることがある。
そんな時でもシステムは減速に入ってドライバーがブレーキをかけるまでの余裕を与えてくれるのだ。つまり日常のさり気ない支援によって、事故に至る状況を未然に低減してくれるのがこの支援のポイントと言えるだろう。
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