AI技術が飛躍的な進化を遂げ、小学校でも「プログラミング教育」が始まりつつある昨今。私たち大人はどのようにしてこの時代に対応していけばいいのでしょうか。今回は、「たし算の順序を入れ替えても答えが変わらない」という一見当たり前のように思える法則について、詳しく解説します。本連載は、福山誠一郎氏の著書『中学数学でビジネスのあらゆる問題を解決する!』(さくら舎)から一部抜粋し、お届けします。

アメ玉は何個?

はじめに、皆さんに問題です。子供がアメ玉を3個持っていて、母親から新たに2個もらいました。この子供のアメ玉は合計いくつでしょうか? この時、皆さんは、以下の計算をするでしょう。

3(もともとある数)+2(加える数)……①

合計5個です。ここで、3+2という計算を(もともとある数)3個に(加える数)2個をたすものだと考えてください。新たにもらった2個を(加える数)としています。たし算は、加法や加算と呼ばれます。たし算とは、(もともとある数)被加数に、(加える数)加数をたす計算です。“被”という漢字は、こうむるとか受けるという意味です。(もともとある数)である被加数は、加数をたされるので被加数と呼ばれます。

次に、子供がもともとアメ玉を2個持っていて、母親から新たに3個もらう場合を考えます。この場合の合計の数は、

2(もともとある数)+3(加える数)=5……②

合計5個です。この計算は、2が被加数で3が加数です。前の①式の計算3+2と被加数と加数が入れ替わっています。そして、被加数と加数が入れ替わっても、たし算の答えは同じ5ですね。

①式と②式の計算から、被加数と加数を入れ替えてもたし算の答えは変わらないことが分かります。被加数が50,000で加数が1,000,000という大きい数になっても、順序を入れ替えても、たし算の答えは同じです。

50,000+1,000,000=1,050,000

1,000,000+50,000=1,050,000

被加数と加数がどんな数であっても、被加数と加数の順序を入れ替えて計算した答えが変わらないことを表すために、文字を使います。被加数をa、加数をbという記号を用いて数式で表現すると、

a+b

と表現できます。そして、被加数と加数を入れ替えた式は、

b+a

と表すことができます。被加数と加数を入れ替えても答えは同じなので、

a+b=b+aとなります。“=”(イコール)の意味は、同じという意味です。

a+b=b+aという式は、たし算の被加数と加数を入れ替えても答えは変わらないことを表す式になります。簡単に言うと、“たし算では、たす順序を交換しても答えは変わらない”ということが成立します。これを、加法の交換法則といいます。

3や2といった個別の数字ではなく、文字を用いて一般化することで、被加数と加数がどんな数であっても、たし算では交換法則が成り立つということを表現しています。

小学1年生へのたし算の教え方

小学校では、たし算を教える時に、“あわせる”という表現で教えることがあります。例えば、父親からアメ玉を3個、母親からアメ玉を2個もらう時の合計を計算する場合に、3と2をあわせて3+2=5と計算することを学びます。

この場合、被加数を父親からもらうアメ玉にするのか、母親からのものにするかで迷うかもしれません。しかし、交換法則が成り立つたし算では、どちらを被加数にしても答えは同じです。交換法則が成り立つので、被加数と加数を意識することなく計算できるのです。

小学1年生に、たし算とは被加数に加数をたすもので、交換法則が成り立つという説明をするのは難しいので、“あわせる”という表現は妥当だと思いますが、皆さんは、被加数に加数を加えるというたし算の意味や交換法則をしっかりと理解しましょう。

「たし算の順序を入れ替えても答えが変わらない」という当たり前と思えることにも、「交換法則が成り立つから」という理由があるわけですね。

※画像はイメージです/PIXTA