多様性のいまの時代、勝ち続けている企業には「一体感」という共通点があるそうです。では、組織に「一体感」を生むためにはどのようにすればよいのでしょうか? みていきます。

勝ち続けている企業の共通点

数多くの企業のマネジメントコンサルティングに携わるなかで、勝ち続けている企業にはある共通点が存在していることに気付きました。どの企業にも「一体感」があるのです。一体感とは、メンバーの1人ひとりが会社の目的に共感し、その目的にロスなく向かえている状態です。この一体感は、帰属意識を高めることによって生み出すことができます。

一体感は、偶然生まれるわけではありません。もちろん時間の経過とともに徐々に一体感が醸成されていく場合があることは否定しませんが、それでは早さと再現性において問題があります。変化に富む、いまの時代において勝ち続けるには、何事も早さが問われます。組織構築をするなかで徐々に一体感をつくり上げていくという考えでは、時代の変化についていけません。

また、スピード感を持って一体感を生み出せた企業だとしても、そのノウハウを言語化できないのであればそれは属人的な要素もしくは運の要素が強いといわざるを得ません。

つまり、いち早く一体感を醸成している企業は再現性の高いノウハウを持っているといえます。そのベースとなるものこそが、今回のテーマである帰属意識なのです。

一体感の前提のひとつに、メンバーの1人ひとりが会社の目的に共感していることがあります。会社としてどれだけ社会性の高い目的を持っているか、その追求に対して覚悟を持っており、そこに共感してくれる人を集めていく動きが求められます。このテーマは採用に至るまでの領域ですので、今回は割愛します。このような人材を必死に集めたとしても、その後の組織環境に問題があるために目的にうまく向かえていない企業が非常に多いように感じます。これは、ひとえに「帰属意識の欠如」が原因です。

「帰属意識の欠如」とは?

ここに社員100名の組織があったとしましょう。そして、組織成長を、全員で徒競走を行うことで実現するイメージとします。

帰属意識が醸成されている組織は、スターター(各人の上司)が「位置について」といえば100人全員がスタートラインを意識して走る準備を整え、「よーいドン」の合図のあと、一斉に全力でゴールを目指します。

一方で、帰属意識が欠如している組織はどうなるでしょうか。「位置について」といわれても、スタートラインなど気にせず、ゴールに近いところから走ろうとする人がいて、ほかの人の不満の解消に時間を割いている、会社が示したゴールに納得できないと逆の方向に走ろうとする、スターター(上司)が気に食わないとかモチベーションが上がらないという理由で競争を放棄するなど、さまざまな混乱が生じてしまいます。

このような人々が100名で徒競走を実施していては、組織が正しく成長するはずがありません。さらにいえば、こんな状態で人の数を2倍や3倍に増やしても人数分のリターンを望めないことは想像に難くないはずです。

「帰属意識」を醸成するノウハウ

ここまでの話をまとめると、「変化に富む、いまの時代で勝ち続けるためには、再現性を持った帰属意識醸成のノウハウを身に付けることが必須である」といえます。では、帰属意識を再現性高く醸成するノウハウとはどのようなものでしょうか。

その答えを導くうえで鍵を握っているのは、「同一ルール下=同一コミュニティ」という原理原則です。人はどのようなときに相手が同じコミュニティにいると感じるかについての答えがわかれば、社員の帰属意識を高めることができるようになります。

「同一ルール下=同一コミュニティ」とは?

「同一ルール下=同一コミュニティ」とは、私たちは同一ルール化にいる相手を同一コミュニティの人間と認識するという原理原則です。国には法律が存在し、スポーツにはルールが存在するのは、このためです。作られたルールを守り合えるからこそ国家やスポーツが成立することは、学ばずとも経験からイメージできるはずです。よって、会社組織(コミュニティ)をつくる際にも、まずはルール作りとその徹底(同一ルール下に置くこと)が基礎中の基礎となります。

会社の“ルール作りのための“ルール

会社組織の具体的なルールとして企業理念や就業規則が挙げられます。ただ、これらのルールでは社員を同一ルール下に置くことが困難なケースが多いです。

まずは企業理念についてです。企業理念はその性質上、曖昧であるべきです。企業理念は、北極星のごとく追っても追い切れない存在であり、それを軸に中長期の会社の戦略を立てるものであるからです。曖昧がゆえに同一ルール下にいるかどうかの判定をそれぞれの主観に委ねる形になってしまいます。就業規則は、労働基準法により定めることがマストなものであり、モデル就業規則などが存在するため、会社のルールとしては形骸化しやすい傾向にあります。

そこで必要となるのが、「同一ルール下=同一コミュニティ」専用のルール作成です。つまり、帰属意識を醸成するためには、メンバー全員を同一ルール下に置くことが必要であり、そのためには専用ルールを作成し、そのルールを徹底することが必要最低限の環境となります

ルール徹底の必須条件

ルール徹底には必須の条件が2つあります。

1.そのルールは誰がみても解釈がズレないこと

2.そのルールは本人がやると決めたらやれる内容となっていること

項目1はたとえば、「退社時には机の上にモニタキーボードマウス以外のものを置かない」というルールが該当します。これを、「机をきちんと整理整頓しましょう」としてはいけません。「整理整頓」の定義が人それぞれ異なるため、結果的に各人の主観に委ねることとなり、ルールが形骸化していってしまいます

項目2については、メンバー全員を同一ルール下に置くためのルールは、誰もが守れるものにしなければならないということです。「予算目標の100%達成」といったルールでは問題があるということですね。

これは、外部要因やその人の能力不足が絡んできてしまうので、徹底するという趣旨との矛盾が生じてしまいます。先の「退社時には机の上にモニタキーボードマウス以外のものを置かない」というルールであれば、誰もが守ることができます。

まとめ

これらを踏まえると、帰属意識を意図的に醸成するためにはなにをすべきかがみえてきたのではないでしょうか。ルール徹底のための必須条件を抑えた専用ルールを作成し、それを徹底することで同一コミュニティにいる認識をメンバーに与えていくことがその答えとなります。

帰属意識の醸成はじわじわと時間をかけるべきものではなく、トップのカリスマ性に頼るものでもありません。すべての経営者が意図的に環境設定できるものであり、1人でも多くの方が実践に移すことで、勝ち続けるための体質改善の基礎づくりとしてもらえれば幸いです。

入澤 勇紀

株式会社識学

営業1部部長 上席コンサルタント

※画像はイメージです/PIXTA