「誰だって食べたいでしょ!」有名人との会食に“勝手に友人を連れてくる”ことも…林真理子が激怒した「社交界のタブーな人たち」 から続く

「彼女は自虐ネタの入れ方が抜群に上手い」――コピーライター、作家、座談の名手として、これまで多彩な才能と共に仕事をしてきた林真理子さん。

 そんな林さんが「会話の天才」と太鼓判を押す「新潮社の名物編集者」とはいったい? 大ベストセラー『野心のすすめ』から9年ぶりとなる話題の新書『成熟スイッチ』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/#1を読む)

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「毒」を入れるテクニック

 クローズドな会食の場で、気の合った仲間と話す内輪話は格別な味わいです。

 私はかねてより「酒席で悪口を言わない人は信用ならない」と言ってきました。ただし断っておきたいのは、私の言う「悪口」とは「ちょっと毒のある噂話」です。

 ストレートすぎる悪口は下品ですし、場をしらけさせてしまうだけ。年をとってネガティブなことを言いすぎると人間性を疑われます。そこは注意しつつ、私は人脈は豊富なのでネタとなる情報はたくさん入ってきますから、面白い噂話には自信があります。

 悪口を楽しむ上で大事なのが、その場にいる人たちみんなが嫌っている人の悪口しか言わないこと。メンバーの人間性や感覚を考慮すれば、彼らがどういう人の悪口を聞きたがっているか判別出来るはずです。

 そこを読み間違えて皆がどうでもいいと思っている人の悪口を言うと、「もしかして、そんな人のことまで気にしてるのー?」となってしまう。ちょっとどぎついことを言いすぎて「ハヤシさん、実はライバル視してるんじゃないのー?」なんて言われるのも絶対に避けたいので、「毒」の加減も調節しなければならない。

 この人たちなら賛成してくれるだろうと見計らった人の悪口を的確に言うわけで、非常に高度なテクニックが必要とされるのです。ただ、そうして苦心して紡ぎ出す悪口は、その場をとても盛り上げてくれます。

 会話で盛り込む毒の入れ方にも工夫が必要です。ある女優さんがこう言いました。

「私、Aさんと林真理子さんて、ずっと同じ人かと思ってたー」

 当時、Aさんはとても売れている作家でした。そこで私はまず、

「私、あんなに下手じゃありません」

 そしてすかさず、

「私、あんなに売れてません」と付け加えるのです。「あんなに下手じゃない」で毒が入り、少し緊張が走りますが、「あんなに売れてない」と言い足すことで毒が薄まり、プラスマイナスゼロになるわけです。

 自慢話をしたい時にもコツがあります。それは「物語」を作ること。

 たとえば、まだ娘が幼かった頃に、ある有名人家族と、家族同士で食事をしたことがありました。その時の話も、ただ「一緒にご飯を食べた」という話にすると単なる自慢話になってしまうので、「うちの娘が帰りたがって大変だった」という話にするのです。実際に娘が「うちに帰ってテレビが見たい」と駄々をこねたのですが、そこを強調するわけです。

会話の天才・中瀬ゆかり

 いつも会話の天才だと思って感心するのが新潮社の有名編集者の中瀬ゆかりさん。中瀬さんとは仲よくさせてもらっていますが、彼女は自虐ネタの入れ方が抜群に上手い。

 中瀬さんと郷ひろみさんのコンサートに行ったことがあって、終了後に一緒にラーメンを食べていた時、彼女は思い詰めたようにこう言いました。

「ひろみさんて本当にカッコいいですよねーわたし、ひろみさんの前で裸にならなきゃいけなくなったら自害します」

 自害するなら脱がなければいいじゃん、と思いながら、すごく面白くてかわいくて爆笑しました。

(林 真理子)

林真理子さんが太鼓判を押す新潮社の名物編集者・中瀬ゆかりさん ©文藝春秋