映画『THE FIRST SLAM DUNK』公開初日となる12月3日、公式サイトに原作・監督・脚本を務めた井上雄彦のインタビュー後編が掲載された。初挑戦したアニメーション映画監督として本作をどう組み立て、どう演出していったのかを掘り下げる内容で、映像や声優、そして『SLAM DUNK』という作品に対する思いが浮き彫りになっている。

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■「バスケをリアルに描く」ための決断 井上が目指す映像の方向性

 本作の作画はCGによって描かれているが、手書きではなくCGを採用した背景には、井上が目指す映像の方向性がベースにある。井上は、「“そこに生きている感”はないと嫌だなというのがあって。バスケをリアルに描くという点で、10人それぞれが違う動きをするバスケで、それぞれの動きを手で描こうというのは、自分は知識がないんですが、さすがに無理なんじゃないかなと。それでCGを使うというのは必須だろうなと思っていました」と振り返る。

 続けて、「でも、CGがCG然として『SLAM DUNKです』とやられても、『いや、無理だよ』となる。それは自分もそうだからすごくわかるんです。そうじゃなくてちゃんと人間が生きている。そこに登場人物たちが生きている。映像的にもそうしたくていろいろ言って試行錯誤したという感じです」と明かしている。

 井上自身、レタッチも相当数入れており、スタッフいわく「ここまで監督に描いてもらったのは初めて」という。これに井上は、「初めてなんだ。『こんなにやりませんよ』って言ってくれればいいのに」と笑いながら、「キャラクターに血を通わせるため、ほとんどそのためにやってきた」と説明。

 「結局はキャラクターなんですよね。キャラクターが生きていないとダメっていうのが自分の中にあって。それこそが文字通りの生命線で、この映画が命を持つかどうかの境目だと思って。なので、レタッチはやれるのであれば本当にやらせてくれという感じでした」。

■「キャラクターを育ててこられた」TVアニメキャスト陣への思い

 本作のメインキャストは、宮城リョータ役の仲村宗悟三井寿役の笠間淳流川楓役の神尾晋一郎桜木花道役の木村昴赤木剛憲役の三宅健太。井上は、キャスト陣に本作をどう演出するのかを伝えたという。「自分がそもそもこの映画をどう捉えているかというと、誇張した表現をバスケのプレイとかでもあまり使いたくないというか、ナチュラルな感じにしたくて。そういうことをほぼ全員に、こういう基本姿勢ですとお伝えしました」。

 また、テレビアニメのキャスト陣についても言及。「連載していた頃にテレビアニメがあり、声優さんたちがいらっしゃったけど、自分としてはそこにはさわれないというか。あの何年間かのテレビアニメで声優さんたちは、プロフェッショナルとしてキャラクターと向き合い、それぞれのやり方でキャラクターを育ててこられたと思うんですね」と明かす。

 そのうえで、「その方たちにもしも今回お願いしたら、その方たちのお芝居をいったん捨ててもらわないといけなくなる。かつて育てられたキャラクターをいったん捨ててもらわないといけないことになっただろうと思うんですね。それはできないなというのがあって」と、テレビアニメのキャスト陣に対する思いも吐露。

 自身が大事にするキャラクターも含め、連載終了時からずっと『SLAM DUNK』という世界は井上の中で生き続けているという。「だから常にちょっとずつ発見があるというか。自分の中で“こういう奴なんじゃないか?”と思いついたことをメモしたりして。そういうののお披露目の場みたいな感じでもありますよね、今回の映画って」とコメント。この感覚は今後も続いていくだろうと語った。

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、現在公開中。

『THE FIRST SLAM DUNK』監督・脚本の井上雄彦のインタビュー公開