11月13〜27日にかけて行われた大相撲11月場所。今年最後となる本場所は、「12勝3敗」をマークした平幕・阿炎の初優勝という結末となった。

 阿炎、大関・貴景勝、平幕・高安が角界28年ぶりの優勝決定巴戦を演出するなど、最後の最後までもつれた優勝争いに多くのファンが盛り上がった今場所。ただ、その傍らで取り口が荒い、乱暴な相撲と問題視された力士もいた。

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 3日目の平幕・碧山対平幕・隆の勝戦では、碧山が繰り出した執拗な攻めが物議を醸した。碧山は立ち合いもろ手突きで隆の勝の上体を起こすと、そこから10発以上顔面への突っ張りを連発。たまらず引いた隆の勝をそのまま押し出し勝利したが、顔面を突っ張られ続けた隆の勝はその影響もあったのか、直後に足をもつらせ土俵下に転落した。

 転落後は数秒ほどその場にうずくまったり、花道を下がる際に左足を少し引きずったりと不穏な素振りを見せた隆の勝。幸いにも大きな故障や途中休場などには至らなかったが、そのようなアクシデントが発生する可能性も決して低くはなかったといえる。

 5日目の十両・千代の国対十両・栃武蔵戦では、千代の国の相撲に場内からどよめきが起こっている。千代の国は立ち合い栃武蔵の胸をめがけて右からのかち上げを繰り出し、「バチンッ!」という大きな音と共に土俵際まで吹っ飛ばす。強烈な先制攻撃に場内が騒然とする中、千代の国はもう一度かち上げを食らわせ上体を起こすと、休む間もなく栃武蔵の首元、胸にもろ手突きを見舞い突き出しで勝利した。

 さらに、千代の国は取組終了後も、突き出された勢いで花道まで後退した栃武蔵を2秒ほど凝視するなどピリついた雰囲気を見せた。元々闘志をむき出しに激しく攻める相撲が持ち味の力士として知られてはいるが、ネット上では気持ちが行き過ぎていないかと疑問視する声も少なくはなかった。

 8日目の関脇・豊昇龍対小結・翔猿戦では、豊昇龍が実況も驚くほどの強引な相撲で物議を醸した。立ち合い顔面を張りながらぶつかり左上手を得た豊昇龍は、そこから翔猿の右足に自身の左足を絡ませ外掛けを狙うも不発。蹴返しで応戦してきた翔猿にもろ差しの体勢に持ち込まれるなど逆襲を受けた。

 すると、豊昇龍は細かい動きで揺さぶってくる翔猿の攻めにイラついていたのか、翔猿の左肩越しにつかんでいた右の一枚まわしを握り直すと。左に回転し倒れ込みながら翔猿を無理やり地面に投げ倒し勝利。NHK中継の実況が「何という下半身、バネを利かせました! 勝ったのは豊昇龍!」と驚いたような口ぶりで勝利を伝える中、豊昇龍は険しい表情で左腕、両手の砂をたたくように払うなど、なおもいら立った様子だったが、相手はもちろん自身にも大きな負担になりかねない強引な取り口だった。

 「乱暴な相撲と物議を醸した碧山、千代の国、豊昇龍ですが、碧山は取組前時点で『0勝2敗』と勝ちがなかったこと、豊昇龍は『6勝1敗』で優勝争いのトップに立っていたことから、この両力士については負けられないという気持ちが少々行き過ぎた結果取り口が荒くなってしまったのでは。また、残る1人の千代の国については『2勝2敗』から白星を先行させたかったことに加え、同じ九重部屋の力士で8日目に引退を発表する平幕・千代大龍の分までといった思いが気迫の背景にあった可能性も考えられます」(相撲ライター)

 碧山の突っ張り、千代の国のかち上げ、豊昇龍の投げはどれも反則ではなく、ルールで認められている取り口ではある。ただ、繰り出す箇所やその後の振る舞いによっては思わぬ批判を浴びてしまうリスクもあるようだ。

文 / 柴田雅人

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