(花園 祐:中国・上海在住ジャーナリスト

JBpressですべての写真や図表を見る

 中国のマクロ経済の先行きについて、日本語メディアではここ何年も間、バブル崩壊論をはじめ悲観的な論調が大半を占めてきました。

 一方、筆者は中国経済の先行きを一貫して楽観し、中国経済は今後も成長し続けると主張し続けてきました。筆者としては、より確実性が高いと思う将来予測を述べてきたに過ぎませんが、少数派ゆえか周囲からは“中国擁護派”として見られてきたようです。

 しかし、そんな筆者でも来年以降の中国経済の先行きについては、率直に言ってかなり不安視しています。その原因は言うまでもなく中国政府が頑なに堅持し続けるゼロコロナ政策にありますが、その他にもかつてとは異なる懸念要素が存在します。

 そこで今回は、様々な角度から中国経済の先行きを考察してみたいと思います。

厳格措置でも封じ込められないコロナ感染

 本稿を書いている11月末現在、中国では首都の北京市や南部の広州市を中心に新型コロナウイルス感染症感染者が急増し続けており、全国各地で部分的ロックダウン都市封鎖)が散発的に行われています。

 筆者も体験した今年(2022年)4月から5月にかけての上海市での全面ロックダウンをはじめ、中国のコロナ流行対策は、日本を含む諸外国と比べると厳格極まりません。

 隔離対象になるのは、感染者自身だけではありません。感染者が立ち寄った施設に同時期に立ち寄った人も“濃厚接触者”として隔離対象となります。さらには濃厚接触者と同じマンションの居住者に対しても、数日間の自宅隔離が要求されます。そのため本人がどれだけ慎重に行動しようが、突然隔離に巻き込まれるリスクが常に存在します。

 このような厳格な措置を徹底しているにもかかわらず、中国は今年に入ってから、各地でコロナ感染の封じ込めに失敗しています。

 感染拡大を抑え込めない原因としては、第1に、現在流行しているオミクロン株の感染力が従来のコロナウイルスはるかに上回っていることが挙げられるでしょう。中国政府は昨年までは国内での封じ込めに成功してきたため、当初オミクロン株の感染力の強さを見誤っていたように見えます。

ゼロコロナは続くよ、いつまでも

 不定期に繰り返されるロックダウンによって、中国国内ではすでに人流、物流が各所で滞っており、製造業のサプライチェーンをはじめ経済への悪影響が各方面で表出してきています。

 こうした状況から、学生たちを中心にゼロコロナ政策批判の「白紙運動」が広まり、ゼロコロナ政策からの転換、または緩和を求める声が日増しに高まっています。

 しかし、中国政府のゼロコロナ政策堅持を訴える姿勢は変わりません。今年に入ってからは隔離期間などで一部緩和は行われているものの、政策の緩和や出口戦略が語られる様子は全くありません。

 こうした中国政府の頑なにも見える態度から、筆者は少なくとも来年の中頃、下手すれば再来年くらいまでゼロコロナ政策が継続されるのではないかと見ています。

生産分野における流出懸念

 ゼロコロナ政策が来年以降も続けられると仮定した場合、中国経済がマクロレベルで大きく冷え込むことは避けられません。

 前述の通り、すでに製造業においてはサプライチェーンの混乱が起きています。今後はさらに生産能力方面で他国への流出が起こる可能性があります。

 2020年コロナ流行当初、中国はゼロコロナ政策により、他国に先駆ける形で生産活動を平常に戻すことに成功しました。一方、同時期に他国ではコロナ感染拡大でどこも身動きが取れない状態にあったため、当時は多くの生産注文が中国に集中的に転注されました。

 しかし現在、日本を含む多くの国は、コロナ対策としての様々な規制措置をすでに撤廃しています。またその生産活動もほぼコロナ禍前の水準まで戻っています。

 コロナ禍前の日常を取り戻す諸国とは反対に、今年に入ってから中国ではロックダウンの規模や回数が増加しています。ロックダウン対象地域では生産工場が操業を制限されるため、2020年の状況とは反対に、今後は中国の生産注文が他国に流出していくことが予想されます。

 また、ロシアウクライナの戦争を受けて、現在、大企業を中心にグローバル生産体制の見直しが広がっています。今後も中国がゼロコロナ政策を堅持する場合、一連のグローバル再編に伴い、中国での生産体制を、より安定が見込める他国へ移す企業も出てくるかもしれません。ただでさえ中国は人件費が近年高騰している上、台湾有事の懸念も高まってきています。外国企業が中国投資に慎重になるのはやむを得ない状況と言えるでしょう。

不動産業界に「これまでとは違う」動き

 繰り返されるロックダウンによる先行きの不透明感から、中国では生産のみならず消費も冷え込みつつあります。

 中でも不動産分野においては、かねてから大手デベロッパーの資金難が度々話題になるなど不穏な動きが見え隠れしています。

 これまで筆者は、中国の不動産バブル崩壊論については一貫して否定的な立場をとってきました。理由は単純に、中国の消費者の住宅購入需要は非常に底堅く、(多くの日本人が期待するほど)一気に暴落することはないと見ていたからです。この見解は現在も変わりありませんが、今年の中国不動産業界に関しては「これまでとは違う」と感じられる動きも見られました。

 具体的には、今年に入って以降、銀行への公的資金注入など、未完成住宅の負債問題に対する中国政府の対策が相次いで出されていることです。

 これまで中国政府の不動産市場に対する政策は、どちらかというと市場過熱に対する抑制策が主でした。また負債に関しては市場の問題として、介入に対しやや突き放すような立場であったように見えました。それが今年に入って以降、市場安定に向けた介入が明らかに増えてきており、筆者ですら「そこまで不動産市場は危ないの?」と不安を覚えるほどです。

 中国で働く立場からすると、以上の予想が外れてくれるに越したことはありません。しかし現状を見る限り、少なくとも来年にかけて景気が良くなる要素はほとんど見当たりません(もっとも、不振に陥るといっても、日本人が期待するバブル崩壊ほどの暴落までには至らないと思われます)。

 いずれにしろ今の中国の問題点は、ゼロコロナ政策をどうするかに尽きると言えます。ゼロコロナ政策からの出口戦略をどう立てて、うまく着陸させられるかが、景気を左右する大きなカギになってくるでしょう。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  市民のスマホを抜き打ち検査の異常事態、「白紙運動」拡大にピリつく中国当局

[関連記事]

ワールドカップが引き金、中国の白紙デモに米政府も右往左往

うどんチェーン撤退、中国メディアが「日本の麺は中国の麺に勝てない」説