
「癌になってしまい余命1年と宣告をされた。命が尽きるまでに資産をすべて配ります」「社会貢献として現金を配布します」「政府の給付金対応が遅すぎるので、代わりに一律給付金を振り込みます」――。最近、以前にもましてTwitte上でこのような「お金を配る」アカウントをよくみかけるようになりました。
パターン化された文章は危険な兆候
「お金を配る」アカウントを覗いてみると、似たような文面も多く、30万円くらいからお金を受け取れるといったものも見受けられます。パターン化された文章、これは詐欺や悪質商法にみられる兆候のひとつなので注意してください。なかには「白血病で余命わずか、親の遺産を配ります」といったものもありました。これは以前に、詐欺メールなどでもよくみかけた文章のパターン。ありがちなのはこの内容を信じた人が、お金を受け取ろうとすると、振り込むための手数料を事前に電子マネーで払ってほしいなどといわれます。しかし、繰り返しお金を払ったものの、一向にお金が手にできないというパターンです。
労せずして120万円が手に入る?

最近の手口はもっと巧妙になってきていて、“お金を取られない詐欺”に引っ掛かってしまう人たちが出てきています。そのきっかけは、「資金の調達ができます」の一言。投稿を書き込んだ人物とメッセージアプリで連絡を取り合うと、お金を振り込む条件として「新規で銀行口座を複数開設するよう」にいわれます。
ある女性は「そのキャッシュカードを指定されたところに送れば、1週間後に40万円を振り込んだキャッシュカードを戻す」と教えられます。つまり3つの口座を開けば、120万円を手にできるわけです。
新規に口座を開いて、レターパックで通帳、カード、暗証番号を記載した紙を入れて送る……というのが大まかな流れなわけですが、注意してほしいのは、本来、お金を振り込むのに「暗証番号」は必要ありません。「暗証番号」と言われた時点で、詐欺行為だと思ってください。
郵送したキャッシュカードの行方は…
相手にカードを送ってしまうと、口座が不正利用される運命にあります。先の女性は、銀行から「あなたの口座が犯罪行為に使われている可能性があるので、確認させほしい。連絡がない場合は、解約させていただきます」と書かれた封書が来て、初めてことの重大さに気が付いたそうです。ネットバンキングで口座履歴を確認してみると、不自然な振り込みが100万円ほどあり、すぐに引き出されていました。もちろん、相手に送ったカードが戻ってくることはありません。
つまり、この口座は詐欺グループに利用されてしまっていたのです。今、「あなたは保険料を払いすぎているの戻したい」といった理由でATMに誘導して、逆にお金を振り込ませてしまう還付金詐欺が横行しています。今回の手口では、送ったカードの口座が本人が気づかないうちに、詐欺口座として利用されてしまうのです。
振り込め詐欺グループの一員に…

<「振り込め詐欺組織では、全体を統括する「指南役(統括役)」がいて、詐欺の電話をかける「かけ子」がおり、さらに現金を被害者宅に取りに行く「受け子」がいます。今は、キャッシュカードをだましとることも多いので、ATMからお金を引き出す「出し子」もいます。それぞれがしっかりとその役割分担を果たすことで、振り込め詐欺組織は、多額のお金集めることができます」>
(『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』清談社Publico、より引用)
まさにお金配りの書き込みに応募した人は、期せずして、「出し子」に不正口座を提供する、振り込め詐欺グループの一員となってしまうのです。「お金の入っていない空の口座のキャッシュカードだから、詐欺には遭うことはないだろう」……そう思った人もいるかもしれませんが、間違いです。
自分が使う目的以外で、第三者に銀行口座を開設して、他人にカードを譲渡することは、犯罪収益移転防止法に問われます。資金調達に応じた人たちは等しく、詐欺の共犯の容疑をかけられて警察の捜査を受けています。加害者の側にまわらないためにも、安易にお金配りのアカウントをフォローやRTはしないことをおすすめします。
<TEXT/悪徳商法評論家 多田文明>
【多田文明】
詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。これまでの勧誘先への潜入数は100か所以上。あらゆる詐欺・悪徳商法に精通している。多数のテレビ・ラジオに出演し、著書に『ついていったらこうなった』(彩図社)『だまされた!だましのプロの心理戦術を見抜く本』(方丈社) Twitter:@tadabunmei
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