来年度から公務員の定年年齢が段階的に引き上げられ、最終的に65歳定年となります。それに伴い、給与や退職金はどう変わるのでしょうか。みていきましょう。

平均給与月43万円、定年退職金は2,127万円…国家公務員の定年、2031年に65歳へ

世の中にはエリートと呼ばれる職業がいくつかありますが、国家公務員は間違いなくそのなかのひとつ。なるには国家公務員採用試験に合格することが必要です。総合職、一般職、専門職、経験者採用試験があり、合格後、勤務したい省庁の選考を受け、その省庁の選考を通れば採用が決まります。

国には内閣府総務省法務省外務省財務省文部科学省厚生労働省農林水産省経済産業省国土交通省環境省防衛省と。1府11省あり、中央の府省に勤めている国家公務員はわずか。多くは全国各地の地方支分部局などの出先機関等で働いています。職種や採用試験の種別によって異なりますが、能力や経験などによって、係長、課長補佐や管理職へと昇進できます。

人事院『令和3年国家公務員給与等実態調査』によると、国家公務員(行政事務)の平均給与は月43万2,622円(平均年齢42.6歳)。また令和3年12月の12月期期末・勤勉手当の平均65万1,600円ということから考えると、平均年収はおよそ650万〜700万円程度であると考えられます。

また内閣官房国家公務員退職手当実態調査』によると、国家公務員の定年退職による退職金は平均2,142万1,000円。うち行政職俸給表(一)適用者の定年退職金は2,127万9,000円。

平均給与、退職金の水準をみていくと、民間準拠といわれる公務員ですが、生涯手にする給与は、「大手企業>国家公務員中小企業」ということになりそうです。

そんな国家公務員、一部の職種を除き60歳となっていますが、2021年6月に成立した「国家公務員法等の一部を改正する法律」(令和5年4月1日施行)により、2023年~2024年度に61歳、2025年~2026年度に62歳、20272028年度に63歳、2029年2030年度に64歳と段階的に引き上げられ、2031年度には65歳まで延長されます。

またそのほか2023年度から、60歳に達した管理監督職の職員は非管理監督職ポストに降任等する「役職定年制」や、60歳に達した日以後、定年前退職者を短時間勤務ポストに再任用する「定年前再任用短時間勤務制」なども導入されます。

65歳定年延長で「国家公務員」の給与や退職金はどうなるのか?

2023年から、大きく変わる国家公務員の60歳以降の働き方。人事院の資料では「60歳に達した職員の給与例」が記され、定年延長後の給料は延長前の7割になり、60歳前の俸給・職務級が引き継がれて諸手当も出るとしています。

【60歳に達した職員の給与】

〈非管理監督職の例〉

月給与:41万0,200円

※行政職(一)6級85号俸(本府省課長補佐級)

60歳に達した日後の最初の4月1日

月給与:28万7,100円

※行政職(一)6級85号俸

〈役職定年の場合〉

月給与:51万0,100円

※行政職(一)9級22号俸(本府省課長級)

60歳の誕生日(役職定年による降任に伴う降格)

月給与:410,200円

※行政職(一)6級85号俸(本府省課長補佐級)

60歳に達した日後の最初の4月1日

月給与:35万7,100円

※行政職(一)6級85号俸

<60歳に達した職員の諸手当>

7割水準となる手当:地域手当、期末・勤勉手当等

7割水準とならない手当:住居手当、扶養手当、通勤手当等

出所:人事院『国家公務員の60歳以降の働き方について (概要)』より

定年延長により、例えば59歳で月給51万円のキャリアは、60歳に達した日後の最初の4月1日にその7割の35万7,100円になります。

気になる退職金はどうなるのでしょうか。60歳以降、定年前に退職した職員が不利にならないよう、当分の間は退職事由を「定年退職」として算定。また60歳定年になるまでの期間と定年延長の期間(定年延長前給与の70%になった後)を分けて計算する「ピーク時特例」が、当分の間は適用されます。

国家公務員の60歳以降の働き方は、定年年齢まで働く、再任用で働く、これまで通り60歳で退職するなど、選択肢が増えました。人事院『令和2年退職公務員生活状況調査』では、定年後の生活で「ゆとりがない」と回答したのは、独身者で37.0%、夫婦二人世帯で38.0%でした。エリートでも3人に1人が「生活にゆとりがない」という状況です。60歳以降の働き方の幅が広がったことは、エリートにとっても歓迎されることでしょう。

(※写真はイメージです/PIXTA)