2022年12月で俳優デビュー10周年を迎え、明治座で記念公演として「殺陣まつり~和風三国志~」を開催する荒牧慶彦。ミュージカル『テニスの王子様』でデビューして以来、数えきれないほどの人気作品に出演し、名実ともに2.5次元俳優のトップランカーであるだけでなく、所属事務所であるPastureの代表取締役社長を務め、次世代の育成やプロデュースにも取り組んでいる。WEBザテレビジョンでは、これまでの振り返りとこれからの展望を語るスペシャルロングインタビューを前後編で実施。後編となる今回は、10周年記念公演とその先の未来について語ってもらった。
【写真】吸い込まれそう…こちらを見つめる眼差しが印象的な荒牧慶彦
──前編では荒牧さんの10年間の、第3章までお話を伺いました。そして、10周年を終えたあと第4章が始まると。
はい。プロデューサー・社長として、新たな作品を作ったり、新人を育てていったりするという意味で、新しい章に入っていくのかなと思っています。舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大阪冬の陣-で、IHIステージアラウンド東京での約100公演を終えたあと、実はやや燃え尽き症候群のようになってしまったんです。体力的にも精神的にもすごくきつかったぶん、やり遂げられた感じもあって、「もう目標がない」と思ってしまった。そこでこの先どうしていこうかとマネージャーと話し合っていくなかで、「役を“待ってる”んじゃなくて、自分で作っていこう!」と気づいたんです。
──「目標がない」から「やりたい役を自分で作っていこう!」という発想になるのがさすがですね。
この業界に入ったのも興味本位だったんですけど、改めて自分は興味や好奇心がないとやっていけないんだなと思いましたね。「役者には興味があるけど、満たされてしまった」と思ったときに「じゃあ、興味があって満たされていないことは何だろう?」と考えた結果が、ファンの人にも一緒に楽しんでもらえる仕事や作品を、自分の手で作ることでした。
■“2.5次元のご意見番”になりたい
──どんな第4章になりそうですか?
どんな第4章になるんだろう?わからないけど、ゆくゆくは“2.5次元のご意見番”みたいなものになれたらいいなとは思います。松田誠さん(元株式会社ネルケプランニング代表取締役会長、現フリーランスの演劇プロデューサー)の役者版みたいな。「荒牧慶彦が関わっているなら信頼できる」と思ってもらえるような存在になれたらいいなと。でも何よりも、一番は僕を応援してくれる方と一緒に楽しみたいと思っていて。こういう話をすると「まっきーって役者を引退して裏方になっちゃうのかな」と心配されるファンの方もいらっしゃるのですが、そのたびに「いや、舞台はやっていくよ」ということは言っています。僕がプロデューサーになる一番の強みは“荒牧慶彦を使える”ことだから。それは役者としてここまでやってきた自分の頑張りでもあると思っています。
──やりきったとおっしゃっていましたが、舞台に立つことはまだまだお好きなんですね。
もちろんです。舞台で演技をすることがすごく好き。お客さんが喜んでくれる顔を見ると「もっと頑張ろう」と思えるんですよね。ヒプマイ(『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage)のときも、客席降りをして、みんなが「ああ……!」って顔をしていて。固まっている方もいたんですよ。そういう皆さんの姿を見るのが楽しい。僕が近くにいても、舞台にいる一郎(山田一郎 / 高野洸)だけを双眼鏡で見ている人とかも面白くて、「こっち見てくれないかな〜?」と思って逆にその人をじっと見たりして(笑)。もちろん推しを見たいだろうから、こっちを見なくても良いんですけど。
──細かい客席の反応までちゃんと見ているんですね。
見ています!
■10周年記念公演は「僕のやりたいことをやるイベントです(笑)」
──そして12月15日(木)〜18日(日)には、10周年を記念したイベント「荒牧慶彦 俳優デビュー10周年記念公演 殺陣まつり~和風三国志~」が明治座で開催されます。
これまでやってきた僕のイベントのタイトルが「まきまつり」なんです。だからその殺陣バージョンとして“殺陣まつり”みたいなものをいつかやってみたいなというのは2、3年前から言っていて。「じゃあ10周年でやろう」ということになりました。
子供の頃から「三国志」をモチーフにした漫画やゲームが好きで。それを公言していて作品のお話をいただいたこともあったのですが、タイミングが合わずにずっとできずにいたんです。「だったら自分でやっちゃえ!」と。せっかくのイベントなので、殺陣をしてトークをするだけじゃもったいないからと、ストーリーを考える段階で、三国志をモチーフにした物語を考え始めました。和風にしたのは……「三国志だと中華の衣装と武器だけど、日本刀も使いたい。だったら和風にしよう」って。僕のやりたいことをやるイベントです(笑)。
──百人斬りもされるそうですね。
はい。百人斬り、めちゃくちゃ楽しみです。ただ一人ずつ斬っていくのだとお客さんも飽きてしまうと思うので、日本刀でゾンビを斬ったり、ヤリを投げたら10人死ぬとか、衝撃波で大人数を倒せるとか、いろいろなメリハリを付けて斬っていけたらと思っています。ちゃんと100人斬っているのがわかるようにカウンターもつける予定です。
──面白そうですね。荒牧さんは、ずっとご自身が好きだとおっしゃってきた趙雲を演じますが、どのような趙雲になりそうですか?
物語には面白要素もありますけど(笑)、趙雲の動きとしてはカッコよく、スタイリッシュにしたいなと思っています。あ、今思いついた! 殺陣の中に、今まで自分がやってきた技を入れるのも面白そう。沖田総司(ミュージカル『薄桜鬼』)の突きとか、クロ(舞台『K』の夜刀神狗朗)の手を伸ばす技とか。
──アイディアが次々と飛び出しているので、当日までにまだいろいろと変更点もありそうですが、現時点でイベントの見どころをあげるとしたらどこになりますか?
全体ですね。いろいろな仕掛けもありますし。映像投影とかもやっていこうかなと思っています。それで言うと、“影絵断ち”は見どころの一つですかね。昔、明治座で早乙女太一くんがプロジェクションマッピングで自分自身の影と戦う “影絵断ち”をやっているのを見たことがあって、すごく感動したんです。今回はせっかくの明治座なので、僕もそれをやりたいと思って明治座さんに許可をいただきました。あとは、初めて槍を持ちます! ずっとファンの方からも「槍を持ってほしい」と言われていたのですが、刀ばっかりだったので。楽しみですね。回しまくろうと思っています(笑)。
──舞台ではキャラクターによって使う武器が決まっているので、「持ちたい」と言って持てるものではないですもんね。
そうなんです。だからこそ今回は使える武器は全部使いたい。
──「使える武器は全部使いたい」の“武器”が、比喩じゃなく本当の武器を指すことってあんまりないですよね(笑)。
たしかに(笑)。双刀も使いたいし、長刀とか斧、ヌンチャク、モーニングスター……挙げたらきりがないですが、使いたい武器がたくさんあるんです。そう思うと、この仕事は本当に天職だなと思います。
──武器も含めて、荒牧さんのやりたいことが詰まったイベントになりそうですね。
そうですね。僕のやりたいことを全部詰め込んでいます。一方で、僕はファンの方の応援がなかったら今こうやって好き勝手にできていなかったというのをすごく思っていて。テレビ業界にまで注目していただけるのも、舞台を見たりイベントに来てくれたりする方がいらっしゃるからであって、僕自身の力だけじゃない。だから10周年を共に歩んできたみんなにも楽しんでもらえるイベントにしたいと思っています。
■2.5次元が日本独特の舞台文化になることを目指す
──荒牧さんが社長を務める会社・Pastureには、オーディションにより、司波光星さん、田中朝陽さんという新人俳優2名の所属が決まり、「殺陣まつり」にも出演予定です。おふたりは現状どのような状況ですか?
ふたりとも入ったばかりなので、これからですね。司波光星はABEMA「主役の椅子はオレの椅子 シーズン2」に出演して今頑張っているところ。田中朝陽はレッスンをしながら、いろいろなオーディションを受けているところです。あとは「殺陣まつり」で一緒に稽古をしています。あ、社員旅行も考えていますよ。涼星(田中涼星)、君ちゃん(君沢ユウキ)、光星、朝陽と僕の5人で同じ釜の飯を食べて、いろいろな話をしようかなと思っています。
──先ほど、第4章の展望をお伺いしましたが、荒牧さんご自身としては、10年後はどう見据えていますか?
この2.5次元という業界がより盛り上がるように尽力したいですね。さらに10年経つと43歳なので、さすがにメインを張れるかはわかりませんが舞台に立っていたいし、プロデューサーとしても、ファンの方により楽しんでもらえるものを作っていきたいです。
──業界の盛り上がりというところでいうと、どういうものを目指していますか?
一つの文化になればいいなと思っています。歌舞伎や宝塚歌劇のように、2.5次元が日本独特の舞台文化になることを目指しています。
■取材・文/小林千絵
撮影/MARCO
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