〈法令違反を認める〉広島県・平川理恵教育長の親密NPOに予定価格が漏洩 官製談合防止法違反の疑い【メール入手】 から続く

 平川理恵教育長(54)がトップを務める広島県教育委員会と、平川教育長と親しいNPO法人パンゲアとの契約を巡り、官製談合防止法違反の疑いがあることを「週刊文春」が報じた問題。県教委は12月6日、同法人と結んだ2件の契約について、官製談合防止法違反や地方自治法違反があったとする外部専門家の調査結果を公表した。

 法令違反の認定を受け、平川教育長は「ご迷惑をおかけしましたことを大変申し訳なく思っております」と謝罪。6日午後の記者会見で説明するとしている。一体何が起きていたのか。「週刊文春」の一連の記事を再公開する(初出:週刊文春 2022年9月8日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)。

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 広島県の平川理恵教育長(54)が主導する発注事業をめぐり、官製談合の疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。

 平川氏は民間から教育長に転じ、在任5年目。

京都市生まれで同志社大学を卒業し、リクルートに就職。その後、留学支援の会社を起業すると、今度は横浜市で民間公募の中学校長に。文科省中央教育審議会の委員も務めていました。2018年に湯﨑英彦広島県知事の“一本釣り”で教育長に就任しました」(教育ライター

 その平川教育長を巡り、県の教育委員会内部では、平川氏と親密な関係にあるNPO法人「パンゲア」(京都市)に対して、県からの発注が相次いでいることを疑問視する声があがっている。平川教育長になるまではゼロだったパンゲアへの発注は、今年度までに少なくとも計6件、2600万円に上る。パンゲアの理事長を務める森由美子氏と平川氏は直接連絡を取り合う友人で、「バラトゲの会」(奇麗なバラにはトゲがある、に由来)と名乗る女性経営者が集うグループを作っている。また、平川氏は自身の娘をパンゲアの事業であるサマースクールに参加させていたことも過去のインタビューで明かしている。

週刊文春」は、8月4日発売号で、今年5月にパンゲアの高崎俊之副理事長に対し、県教委の職員が〈実質190万円程度以内で本プロジェクトを実施する必要があります〉などと予算を示すなどして、予定価格を事前に業者に漏らした官製談合防止法違反の疑いを報じた。

 ただ、県教委は、「実際に契約や公告には至っていない」「準備段階で参考のために事業者の意見を聞いた」とし、平川教育長も会見で「誤解を招いた」として、違法性を否定した。

 しかし、今回「週刊文春」は、別の事業における官製談合の新たな証拠メールを入手した。平川氏の部下である県教委職員X氏とパンゲアの高崎副理事長が今年2月にかわした複数のメールである。そこで言及されている事業は「高等学校課題発見・解決にかかる探究活動の指導」。有志の生徒の課外活動を指導する、というのが主たる内容だ。メールは同事業に関する〈次年度予算について〉と題され、県教委職員X氏がこう送っている。

告前にもかかわらず、「パンゲアありき」で価格交渉

〈予算として、1037万円の見積りをいただいているところですが、他の事業の規模・予算と比べて高額であることから、見積り額を用意することは難しい状況です〉

〈700万円程度に収まるよう調整いただくことは可能でしょうか〉

 一方、パンゲア側は、

〈前回お出しした予算で既に2割以上のディスカウントをしており、探究の質を担保した中で最大限努力した数字となっております〉

〈前回以上のディスカウントというのは非常に難しい状況であることをご理解頂ければ幸いです〉

 さらに、職員とのやり取りは何度か続き、県教委側はこう提案している。

〈頂いた参考見積を基に、財政担当部署と連携したところ、あと50万円ほど下げることができないかと言われています。探究の質をできるだけ落とさないよう、予算を削っていただきましたが、750万円程度になるよう再調整していただくことは可能でしょうか〉

「探究」とは生徒の学習活動のこと。公告前にもかかわらず、「パンゲアありき」で価格交渉していることが読み取れる。このメールはパンゲアの森理事長や県教委の課長にも同時に送付され、財政担当部署にまで言及があるなど、県教委が組織ぐるみで関与していることがうかがえる。

 こうしたやり取りの後、県教委はこの事業を「公募型プロポーザル」として公告。パンゲア1社だけが申し込み、4月1日、763万5760円で受注した。メールで示された「750万円程度」という金額に極めて近い。

 県職員が語る。

「この事業も教育長の“鶴の一声”で昨年度から始まったものです。『パンゲアに来年もやらせて』との指示で今年度も実施することになり、県教委が予算をかき集めた。その過程で、事前に価格交渉までしてしまった形です」

 入札制度に関する著書があり、公取委OBでもある鈴木満弁護士が指摘する。

「公募型プロポーザルの公告前に業者と価格交渉までしているのは、『予定価格その他の入札等に関する秘密を教示』したと認識されますので、官製談合防止法に違反する疑いが濃厚です。同法8条の『入札の妨害』に該当する典型的な行為で、法定刑は5年以下の懲役または250万円以下の罰金です。この違反は、いわゆる“癒着”があるケースで多く見られます」

 また問題の構造を踏まえ、こう分析する。

「県教委の一職員に、自らこうした行為をするメリットや動機があるでしょうか。仮に教育長が業者と癒着していることに発端があり、幹部を通すなどして事実上の指示があったとすれば、教育長にまで法的責任が及ぶと考え得るケースです」

「教育委員会に聞いてください」と平川教育長は電話を切ったが…

 当事者たちはどう答えるのか。

 平川氏に電話で尋ねると、「教育委員会のほうに聞いてください。失礼いたします」と質問を最後まで聞かずに電話を切った。

 県教委に8月29日朝、質問状を送ったが、

「期限(30日夕方)までには回答することができませんのでご了承ください」

 前回の記事の際は同じスケジュールで回答があったが、今回は回答がなかった。

 パンゲアに尋ねると、高崎氏からこうメールが来た。

「質問書には法的なものも含まれ、こちらとしましては弁護士等を介した対応が必要となりますので、期限を切ったご質問にはお答えしかねます」

 新たな証拠に対して、平川教育長、また、抜擢した湯﨑知事がどのような対応をとるのか、注目される。

週刊文春 電子版」では、県議会での平川氏の発言に虚偽答弁の疑いがあることや、それを示す証拠となる会議記録の存在、また、メールを送ったX職員が記者の直撃に漏らした一言などを報じている。

〈法令違反を認める〉外部の専門家が調査へ 平川理恵広島県教育長「官製談合」疑惑をいまだ説明できず へ続く

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年9月8日号)

平川教育長