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今年1月に起きた、エスカレーターの乗り方をめぐるトラブルで、80代の男性が投げ飛ばされるなどして重傷を負ったJR秋葉原駅での事件。逃走していた61歳の自称会社役員の男が11月30日に傷害容疑で逮捕されたことが報じられた。

各メディアによると、容疑者の男が、エスカレーターの真ん中に立っていた被害者の男性に「邪魔、邪魔だよ」と告げると、「エスカレーターは歩いて降りるものではない」と注意され逆ギレ。口論となり暴行を加えたという。

急いでいる人のために片側をあけることが“暗黙のルール”となっているエスカレーター。しかし近年、“エスカレーターは立ち止まって乗る”という本来の乗り方へ回帰する動きも高まっている。

昨年10月に埼玉県はエスカレーターを利用する際は立ち止まるよう義務づける条例を施行。立ち止まらないことに対する罰則はないが、駅や小売店などの管理事業者はこのことを周知することが求められている。さらに、今年11月にも、名古屋市もエスカレーターを立ち止まって利用することを義務化する条例を来年制定予定であることが報じられたのだ。

“歩いて乗るのは危ない”そんな認識が広まりつつあるようだが、その一方で認識の差から冒頭の事件のようなトラブルも起こってしまっている。

実際の利用者はどのような感覚を持っているのだろうか。WEB女性自身とYahoo!ニュースは、’22年10月に男女2000人を対象として、エスカレーターの乗り方に関する共同アンケートを実施した。

■エスカレーターを歩くのは“仕方ない”が約7割

まず、エスカレーターを歩くことに対して、世間はどのような印象を抱いているのか。「エスカレーターに歩いて乗るのは仕方ないことだと思うか?」という質問に対して、「思わない」が31.2%、「思う」が68.9%という結果に。「仕方ない」との認識が根強い一方、3割もの人が厳しくとらえていることも明らかになった。

「仕方ないことだと思わない」と回答した人からは、“危ない”“急いでいるなら階段を使って”との指摘が相次いだ。一方「仕方ないと思う」と回答した人々からは、“悪いと思っていてもやってしまう”という声や、“階段がない”など動線の欠陥を訴える声が寄せられた。

《歩くのは危険と頭ではわかっているが、急いでいるとついやってしまうし体に染みついてしまっているから…》
《本当はいけないことでしょうが、電車に乗り遅れると思うとみんな行なってしまうと思う》
《エスカレーターのほかに階段がないから急ぐ時はエスカレーターでも歩かないといけない》

また、急いでいる際に階段があってもエスカレーターを歩くのは、“階段よりエスカレーターを歩いたほうが早い”ことが一因となっているようだ。

「階段を使うよりもエスカレーターを歩いた方が早いから」
「階段よりもエレベーターの方が段差の数が少ないので、急いでいるとき、時間に余裕がないときは歩いてしまいます…」

実際に、「エスカレーターを立ち止まらずに歩いて利用することはありますか?」という質問に対しては「たまに」が58.9%、「毎回」の8.1%と合わせると67%が「歩く」という結果に。おおむね「仕方ないと思うかどうか」の結果とほぼ一致する形となった。歩いて利用する理由についても“急いでいるから”が多数を占めた。

■3割の人がヒヤッと「自分の服に相手のキーホルダーがひっかかった」

しかし、このような“ついつい”やってしまうエスカレーターの歩行のせいで、危険な目にあったという人も。「エスカレーターを歩く人にヒヤッとしたことはありますか?」という設問に対しては、32.3%が「ある」と回答。ぶつかられたなどのほか、歩いている人が転倒したり、足を踏み外したところに巻き込まれたりすることも危惧されている。

「昇ってきた人が背負っていたバックパックにあたりそうになった」
「ぶつかられてエスカレータ上段から下段へと転落したことがあったから」
「子どもが小さい頃にエスカレーターに手を繋いで乗っていた時に横をすり抜けられた時は本当に怖かったです」
「自分の服に相手のキーホルダーみたいなものが引っかかってしまったことがある」
歩きスマホをしながらエスカレーターを降りていた人が、エスカレーターを踏み外したのを見たことがある」

その一方、前の質問で「歩いて利用することがある」と回答した人たちの75%はこのような経験が「ない」と回答。実際に利用するかどうかの判断には、このような経験の有無が関連している可能性がありそうだ。

■中央に乗る人は“周りが見えていない人”と思われる現実…

ここまではなぜ歩くのかというところに注目してきたが、逆に、「歩けるよう片側をあける」人の心理はどのようなものなのか?

「ふだん、エスカレーターに乗る際に片側をあけるか?」という問いに対しては、94.6%が「あける」と回答している。その理由についても「急いでいる人のためにあける」「マナー」などとする人が多数を占めた。

さらに、片側を開けないことで生じる“デメリット”も大きいようだ。

《開けておかないとぶつかってくる人がいる》
《空けずに乗っていたら、怒られたことかあるから》
《本当は、開けたく無いが他の人達の視線が怖いから》

実際に「エスカレーターで片側をあけず、中央に乗る人のことをどう思いますか?」という質問に対しては《本来は中央に乗るのものだと思うので良いと思う》《片側を開けることはルールではないので中央に乗っていても特に何とも思わない》など「よい」と肯定的に受け止める人は26%のみ。

過半数を占めたのは「よくない」の58.5%で、“マナーを守れない人”“周りが見えていない人”だと感じるという声が多く寄せられた。確かにこれでは中央に立つことを躊躇するのは当然かもしれない。

《マナー違反だから》
《邪魔になる。非常識の人と思われる》
《急いでいる人の邪魔になると思います》
《みんなが止まって乗った方が効率よく人を運搬できる事は知っているのですが、現状の日本のエスカレーター使用事情で、その様な乗り方をする人は周りの状況が見えていない人だなと思ってしまいます》
《ルール化されて、歩く人が無くなれば『良い』が、歩く人がいる間はじゃまになるので『よくない』》

今回のアンケート結果では、まだまだ片側を開けるべきという風潮が根強いことがわかった。一方で、3割の人がエスカレーターの歩行に対して抵抗を持っていることも明らかに。「歩かない」ことによる利用者の”衝突”を避けるためには、施設側や自治体などによる“ルール”の明示が求められるのではないだろうか。