いま、TwitterなどのSNSでは「相手から送られてきたDM(ダイレクトメール)やLINE」をスクリーンショットして公開する(晒す)ような投稿が広まりつつある。たとえば、異性から口説かれた際のセリフ気持ち悪い、しつこすぎるなどの恋愛関係をはじめ、仕事の取引先とのトラブルや、納得がいかなかった相手とのやりとりを「どう思う?」と世に問うものだ。

 内容があからさまなセクハラパワハラならば、大半の人が「自業自得」と思うはず。もはや「軽い気持ちで言った」では済まされなくなる。

 とはいえ、そのなかには都合の良い部分だけを切り取ったものや内容を改変したもの、当人同士で話し合いもせず、一方的に「ネタ化」しているケースさえ見られる。晒されてしまった本人が後から気づき、「真実はこうだ!」と訴えて泥仕合にもなりがちである。

 本来、LINESNSのDMはクローズドなコミュニケーションだ。「あまりに理不尽で法的にどうなのか?」と憤る人たちもいる。今回は、そんな2人のケースを紹介しながら、青山北町法律事務所の松本理平氏に見解をうかがった。

◆女性から迫られて一夜を共に

 LINEトーク画面をTwitterで勝手に晒された経験がある斎藤智昭さん(33歳・仮名)。彼は、知り合いが開催した飲み会に参加。そのなかにいたひとりの女性(28歳)から好意をもたれ、Twitterでフォローされたという。

 斎藤さんが礼儀としてフォローバックすると、今度はDMが送られてくるようになった。そして、熱烈なアプローチを受けたのだ。

「一応、結婚していることは伝えたのですが『仕事の相談がしたい』と押し切られてLINEの交換をしてしまったんです。そして、『どうしても会って話がしたい』ということだったので、食事に行くことになりました。そこで、『酔ってしまって帰れない』『いっしょに泊まりたい』と言われたんです」

 既婚者としてリスクがあることはわかっていたが、お酒が入っていたこともあり、「つい魔が差してしまった」と斎藤さんは言う。

 これっきりの関係にするつもりだったが、女性はその後もしつこくLINEを送り続けてきたという。恐怖を感じた斎藤さんは女性をブロックした。

◆都合よく切り取られたスクショSNSで晒される

 しかし、しばらく経った後、斎藤さんは偶然にも女性のとんでもないツイートを発見してしまう。

「彼女のツイートには『私のこと好きじゃないのにそんなことしたんですか?』『適当な気持ちでそういうことしたんですか?』という病んだ内容がツラツラと書かれていたんです。

 迂闊に寝てしまった僕も当然悪いと思いますが、あらかじめ結婚していることや付き合えないことは伝えていたし、彼女は『それでもいい』と言っていたんです」

 斎藤さんはそのツイートを見なかったことにした。下手にツッコミを入れてしまえば相手を刺激してしまい、余計に話がこじれる可能性もあるからだ。

 だが、女性はその後、さらにエスカレートしていった。なんと、Twitterで「彼のことを晒します」と言って、斎藤さんとのLINEのやり取りをスクショして公開したのだ。

「驚いたのが、実際は彼女から誘ってきたはずなのに、スクショではその部分のメッセージは見えないようにされていて。まるで僕から食事に行こうと言っているように編集されていたんです。

 名前は消されていましたが、アイコンはそのまま載せられていたので、知り合いから見れば僕だとわかります。実際に友人から『お前、女の子に手を出したの?』と連絡がきました。それは事実にせよ、誤解はあるし、納得できない部分もあります」

◆取引先の愚痴や悪口「業務上のチャットが知らぬ間に…」

 また、IT関係の企業で働く篠原佳奈子さん(20代・仮名)は、仕事上でウンザリしていることがあるという。

「業務で外注することも少なくないのですが、なかには『取引先の担当者からこう言われた』とTwitternoteブログなどに陰で書く人がいる。それは良いことばかりではありません。たいてい愚痴の流れで“気に入らない”とか“自分のやりたい仕事ではない”というニュアンスが含まれるので。

 該当の投稿には弊社の社名こそ出してはいませんが、過去の投稿をさかのぼっていけば、わかる人にはわかるはず。以前、“うちのことですか?”と指摘をして削除をお願いしたこともありますが……まあ、かたちを変えて、そのうち何か書くのでしょう。わざわざ、そこまで追いませんけど。

 弊社の案件ではありませんが、チャットでの具体的な指示をスクショで晒している人まで見受けられます。いつかどこかで公開される可能性があることを踏まえて、外部とのやりとりには細心の注意を払うようになりました」

 篠原さんは「SNSを見渡すと気軽にやっている人が多い」と嘆く。

「その人たちにとっては、“同業者の仲間に有益な情報を発信している”つもりなのでしょうが、すこし違和感を覚えますよね」

SNS暴露の法的問題点を弁護士が解説

 今回の2つのケースの法的見解や対応について、青山北町法律事務所の松本理平氏に話を聞いた(以降は、取材・文/藤井厚年)。

 まずは、LINEトーク画面をTwitterで勝手に晒されてしまった斎藤さん。

 そもそも本来はクローズドなコミュニケーションであるはずのLINEやDMを、相手の合意なくSNSで晒す行為について法的問題点はないのか。

「結論から言うと、斎藤さんの事例では、著作権侵害による民事上・刑事上の責任、プライバシー権の侵害による民事上の責任、名誉棄損による民事上・刑事上の責任の問題が生じます。また、各SNSにおける利用規約違反にあたるはずです」

 著作権の問題から整理していこう。

◆本人の写真や文章には著作権がある

 松本氏によれば、「著作権については、大まかに“本文”と“アイコン”を分けて考える必要がある」と言う。

「前提として、著作権上保護される著作物に該当するかは、①思想・感情が含まれているか、②創作性が含まれているか、という点で判断されます。

 アイコンについては、本人の写真やアニメキャラクターなどの画像が含まれている場合、アニメキャラクターアイコン利用の是非はさておき、基本的には著作物に該当すると考えていいため、著作権の侵害になります。

 また、本文についても、『お疲れ様』や『了解』などの定型文以外は、基本的に著作物に該当すると考えていいかと思います」

◆10年以下の懲役や1000万円以下の罰金の恐れ

 斎藤さんは、LINEの内容が都合よく改変されてしまっていた。

「著作物には、著作物の複製権と公衆送信権が含まれており、これらの侵害の恐れがあります。また、著作人格権として、やりとりを公開するかどうかの決定をできる権利である公表権や、改変をされない“同一性保持権”の侵害も考えられます。

 著作権法違反の場合、被害者として取れることは、民事上は①投稿の削除の請求(侵害行為の差止請求)、②損害賠償の請求、③不当利得の返還請求、④謝罪投稿の請求(名誉回復などの措置の請求)をすることができます。

 また、著作権侵害は刑事罰も用意されているので、刑事告訴をすることも考えられます。刑事罰の場合は、10年以下の懲役や1000万円以下の罰金の恐れがあります」

◆プライバシー権や肖像権の侵害、名誉棄損の問題も

 SNSスクショが晒されてしまった際に名前やアイコンが見えている場合は、本人特定につながる可能性もあることから「肖像権やプライバシー権の侵害、名誉棄損の問題が生じる」と松本氏は話す。

アイコンが本人の画像で、それがSNSに晒される行為は、法律上の呼び方や概念には諸説あるものの一般的に憲法で保護されている“肖像権”の侵害になります。また、個人が特定できる状況下でメッセージが公開されることについても法律上の定義には諸説ありますが、一般的に“プライバシー権”として憲法上保護されている権利の侵害行為となります。

 斎藤さんは、貞操観念について貶められているので、女性には、刑法230条により、3年以下もしくは禁錮または50万円以下の罰金の刑罰が科される“名誉棄損罪”が成立する可能性があります。女性に対して、肖像権やプライバシー権の侵害があったとして、斎藤さんは民事上の損害賠償の請求をしたり、名誉棄損について刑事告訴をする対応が考えられます」

LINEや各SNS規約違反に該当

 さらに松本氏は「女性の行為はLINEなどの各SNS規約違反にも該当すると思われる」と指摘する。

「相手のアカウントを通報するという手もあります。この対応は、女性の個人情報がなくても行えますが、いざ民事訴訟や刑事告訴しようというならば、そういうわけにはいきません。

 最低限、女性の氏名や住所が必要になります。その特定のためには、SNSの運営会社を相手に投稿の発信者情報の開示などの手続きをする必要があります。ただし、この手続きについては、かなり煩瑣なので弁護士の利用は不可避と思われます。

 そのため、SNSで知り合った女性と実際に会ったりするのであれば、『LINEの調子が悪いから』などの理由をつけて、電話番号くらいは控えるようにしておかないと、余計な費用が数十万円かかるかもしれません」

◆法的な問題点はあれど、企業側は“細かい事案にかまっている暇はない”

 続いては、仕事の取引先との業務上のやりとりを晒す、愚痴や文句を言うなどの行為について。こちらも近年はSNSでよく見られる。

「先ほどと同様の問題や偽計業務妨害、不正競争防止法上の営業秘密の持ち出しの問題などが生じます。ただ、実際は先方(企業側)の管理体制・信用の問題にしかならないということが多いです。

 篠原さんの事案では、あくまで自身が務める会社の従業員としてやりとりしているので著作権が誰のものか、被害者は誰かという問題があります。一般的には務めている会社の権利の侵害と考えることにはなるかと思いますが、たいてい篠原さんのように“細かい事案にかまっている暇はない”という判断になることが多いと思われます」

 実際、よほど相手の投稿内容が業務に支障を生じさせる程度のものでない限り、企業側は放置している現状があるようだ。

「現実的に篠原さんが行える対応としては、会社に報告して、相手方の担当を変えるように求めることぐらいかと思われます」

 とはいえ、内容によっては、前述の通り、著作権侵害や業務妨害など、さまざまな責任を負う行為になるという。

◆“わかる人にはわかる”程度の内容はどうにもならないが…

スクリーンショットを晒す場合は、その内容次第では守秘義務の問題となりますが、篠原さんの事例では難しいところがあります。“わかる人にはわかる”程度では、民事訴訟や刑事告訴をしても対応してもらえないということになるのがほとんどでしょう。

 余談になりますが、わかる人にはわかるという内容で業務に関する話をSNSに投稿することは、弁護士でもやってしまう人がいます。当然、弁護士に投稿された相手方はその内容をみれば“自分のことだ”とわかってしまうので憤慨します。

 ただ、個人情報を特定できない以上、守秘義務違反というわけではないため、泣き寝入りという事態になりますね」

◆“承認欲求”の暴走に注意

 昨今のSNSで気軽に晒してしまう風潮に対し、松本氏は警鐘を鳴らす。

バズりたい、共感してほしいなどの“承認欲求”から、SNSに違法な投稿をしたり、(違法ではないにせよ)他人の気持ちへの配慮や職務上の倫理を欠いた投稿をしたりする人が増えてきております。

 しかしながら、他人のメールや業務上のやりとりを投稿した場合、本来的には法的な問題から前科持ちになってしまうリスクがあるのです。そのため、SNSに不用意な投稿はしないように注意する必要があります」

青山北町法律事務所・松本理平
慶應義塾大学経済学部経済学科、九州大学法科大学院卒業。複数の都内法律事務所での勤務及び大手金融機関での出向を経て「青山北町法律事務所」設立。芸能関係の案件・男女トラブル・企業法務などを中心に取り扱う。合同会社 青山北町リサーチ 代表社員(現任)、一般社団法人 探偵協会 理事(現任)、その他コメンテーター等にてメディア露出多数。

<取材・文/結城(エピソード前半)、日刊SPA!取材班(法的見解)>

―[日常に潜む「うっかり法律違反」]―


※写真はイメージです(Photo by Adobe Stock)