東京・池袋の高層ビルサンシャイン60」の58階にあるフランス料理店に押しかけ乱闘騒ぎを起こしたとして、警視庁は7日、準暴力団チャイニーズドラゴン」のメンバーの男(51)ら5人を建造物侵入と威力業務妨害の疑いで逮捕した。男はチャイニーズドラゴンで東京・上野を拠点とするグループトップだという。

ヤクザも恐れる」と言われるチャイニーズドラゴンとはどのようなグループなのか。乱闘騒ぎの壮絶な様子と、彼らがいかにして現在の結びつきになったのかを詳報した当時の記事を再公開する(初出・2022年10月20日。年齢・肩書等は当時のまま)。

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 東京・池袋の家族連れに人気のスポット「サンシャインシティ」で勃発した乱闘騒ぎが大きな注目を集めている。事件が起きたのは10月16日18時半頃。「サンシャイン60」の58階に入るフレンチレストランの従業員から、「客同士がケンカして暴れている」と110番通報が入った。社会部記者が解説する。

「その日は18時から“準暴力団”に指定されているチャイニーズドラゴンメンバーら約100人が集まり出所祝いのパーティーを開いていました。最大400人収容できる会場ですが、この夜は団体の貸し切りでした。18時半頃、会場に別のグループとみられる男性らが到着するとすぐに殴り合いが始まり、それをきっかけに約10人が大立ち回りを演じたようです。従業員の通報を受けて警視庁巣鴨署員が駆け付けた時には、軽傷の20代男性一人が残っていただけで会場はもぬけの殻。店内には料理やビール瓶が散乱し、テーブルはひっくり返っており、乱闘のすさまじさを物語っていたといいます」

「怒羅権とチャイニーズドラゴンは厳密にいえば別物」

 祝いの席でも乱闘騒ぎを起こすようなチャイニーズドラゴンとは一体どのような団体なのか。「チャイニーズドラゴンと聞いて、かつての暴走族『怒羅権』を思い浮かべる人も多いようですが、厳密に言えばふたつの組織は別物です」と語るのは、チャイニーズドラゴンをよく知る人物である。

暴走族の怒羅権は、1980年代中国残留孤児2世、3世の子供を中心に葛西で結成された不良組織です。窃盗や傷害事件など過激な犯罪行為を行い、警察も手を焼く存在でした。そして、怒羅権の初代総長が暴走族から足を洗った後に、一部の仲間とともに90年代に日本へ流れ込んできた不法滞在者や密入国者を取り込んでマフィア化していったのが、チャイニーズドラゴンのはじまりです。暴走族の怒羅権のメンバーが、マフィア化したドラゴンに入るケースも少なからずありますが、ほとんどが18、19歳で卒業して、後は普通の社会人になりますから、暴走族怒羅権=チャイニーズドラゴンというわけではないんです」

 90年代の日本には職と金を求めて不法に渡航してきた外国人が溢れていた。何のアテもなく日本にやってきた彼らにとって、日本語を操り裏社会にも精通した元暴走族中国残留孤児2世、3世らの存在は大きく、自然と人が集まるようになったのだという。

ヤクザも恐れるチャイニーズドラゴン

「一部の怒羅権は密入国者たちに日本の裏社会での生き残り方や人脈を授け、密入国者は暴力と中国本土とのコネクションを差し出したわけです。そして、彼らが薬物の密輸などのシノギで勢力を拡大させていく中で、権益を巡って暴力団とぶつかることもあった。そこで暗躍したのが、本来は“いない人間”であるはずの密入国者たちだったんです。人を殺しても中国に逃げ帰ってしまえばいいということで、10万円で殺人を請け負うなんてことがありえる時代だった。

 実際に中国人によってヤクザが射殺される事件が起こったこともあります。さらに当時、ドラゴンには4つの派閥があり、それぞれが独立して活動していましたが、抗争となればすべての派閥のメンバーが招集された。こうした背景があり、『ヤクザも恐れるチャイニーズドラゴン』という凶悪なイメージが一般に定着していきました」(同前)

勝手にドラゴンを名乗る連中が現れ全体像が把握できなくなった…

 こうして名前が知られるようになるにつれ、勝手に「ドラゴン」を名乗る不良外国人グループの存在も増えていったのだという。

ドラゴンは代紋を掲げているわけではなく、上納金システムがあるわけでもない。気づけば様々なところで『ドラゴン』と名の付くグループが乱立する事態になってしまった。そもそも4つの派閥だって基本的にはシノギ単位で協力し合う程度の関係でしかなく、暴力団のような明確な指揮系統があったわけでもない。

 そこに勝手にドラゴンを名乗る連中が次々と現れてしまい、警察はもちろん、怒羅権の初期メンバーですら全体像を把握しきれてなくなってしまった。チャイニーズドラゴンなんて、あたかも統制が取れたデカい団体みたいに思われているところがあるが、そんなのは幻想です。今も現役ドラゴンの代表とされる人物はいるものの、すべてのメンバーを組織として束ねているわけではありません」(同前)

険悪な関係の2人も祝いの席なら穏便に話ができるだろうと…

 2013年3月、警察庁チャイニーズドラゴンを「準暴力団」組織に認定した。これは、「暴力団のような明確な組織性はないが、集団または常習的に暴力的不法行為等を行っている」と定義し、取り締まりの強化を目的としてつくられた名称だ。しかし、あくまで警察内部での位置づけであるため、法的根拠はなく、暴力団対策法の対象にはならない。

 今回の事件を受け、1992年に施行された暴力団対策法によって集会すら禁じられている指定暴力団とは異なり、チャイニーズドラゴンは実質野放しではないかとの批判が上がっている。ただ、前出の人物によると、チャイニーズドラゴンメンバー暴力団にも所属している人間は少なくないのだという。

ドラゴンの中華人脈は、ヤクザをやる上でも役に立ちますからね。暴力団に属しておいて、シノギで必要な時にドラゴン人脈を使うというパターンは結構あるんです。今回の池袋のパーティーの主役だった出所してきた人物にしても、北区を中心とする暴走族・怒羅権の亜流「華魂(ドラゴン)」から派生した組織のメンバーで、同時に指定暴力団の現役のヤクザでもあるそうです。一方で、彼に殴りかかった人物は、上野を中心に活動するドラゴンメンバーであり、六代目山口組の傘下組織の現役ヤクザとされます。

 2人は以前から険悪な関係にあり、それを見かねた現役ドラゴンの代表とされる人物が、祝いの席なら穏便に話ができるだろうと、仲を取り持つつもりで引き合わせたそうですが、残念ながらこういう騒ぎが起きてしまった……。さらに、ドラゴン人脈の中で起きた喧嘩沙汰ではあるものの、ヤクザ同士のトラブルともとれるような状況になってしまったわけです。とはいえ、双方ともこれ以上騒ぎを大きくするつもりはなく、どうやって事態を収拾させるかが話し合われている最中だと聞いています」(同前)

チャイニーズドラゴンが組織として拡大することはまずない」

 思わぬトラブルがきっかけで注目されることとなったチャイニーズドラゴン暴力団弱体化が取り沙汰される中、暴対法の網を潜り抜けることができるチャイニーズドラゴンが勢力を伸ばしていくのではないかと見る向きもあるようだが、実際はどうなのか?

「確かに、暴対法の締め付けがきつくなる中で、ヤクザと兼業せずにドラゴンのみでシノギをした方が身軽だと感じるメンバーは増えているようです。ただ、こうしたチャイニーズドラゴンメンバー、あるいはドラゴンを名乗る外国人たちがシノギ単位で協力し合って稼ぐことはあったとしても、それによってチャイニーズドラゴンが組織として拡大することはまずない。さっきも言ったようにドラゴンには上納金システムがなく、どこで誰が稼ごうと組織が潤うわけではないからです。ヤクザと抗争するメリットもありませんし、彼らが集まって大きな暴力事件に発展する可能性も低いと言えます」(同前)

 とはいえ、組織でないからこそ、自由に裏社会で暗躍する準暴力団メンバーたちがいることも事実だ。彼らを縛る「法」はどこにあるのか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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